セヴンデイズ

 

あなたとすごす七日間

 

 

一言レビュー

最後の七日間

 

グラフィック 7点
シナリオ 9点
ボリューム 7点
快適さ 9点
満足度 9点
総プレイ時間 27時間
総合評価 84点

 

 

 

友達の紀伊国屋に渡された呪いのビデオ。

シンプルな白地のジャケットにそう殴り書きされたブルーレイディスクは

どう見ても眉唾物だった。

そのディスクに映っている映像を見ると、

長い黒髪の霊に取り憑かれてしまうのだという。

 

幼馴染の西蓮寺紫が小さなころから幽霊を見ているのを

羨ましく思っていた神崎修一は、自分も幽霊を見られるだろうかと引き受けてしまった。

一緒に見ようかと言う紫に一抹の不安を抱いた修一は、お願いすることにした。

半信半疑ながら二人で見てみると

それは大変結構なものをお持ちな爆乳の女性の映像だった。

紫は無言で部屋から出ていく。

 

焦る修一の前で映像が乱れたかと思うと、

砂嵐と共に大音量のノイズが流れた。

それはふつりと途切れ、古びた井戸とそれを囲む六つの穴が映し出され、

直後にゲーム機から黒い何かが這い出てきた。

最後に気を失った修一は、紫の電話で叩き起こされる。

『絶対に振り向かないで』

すぐ行くという言葉を残して電話を切られ、耐え切れなくなって後ろを振り向く。

そこには長い黒髪の怨霊が延々と何かを呟いていた。

一目散に部屋を飛び出し、階段を駆け下りる。

駆けつけた紫が清めの水の入ったスプレーと呪文で除霊した後には、

可愛らしい女性が倒れていた。

 

彼女は七人の霊の複合体が実体を持った存在。

霊が止まれる日にちは四十九日前後。

一つの体しかない彼女たちはとりあえず一つずつの憑代に移され、

一人七日間、悔いのないように最後を生きることにし、

それを修一と紫が手伝うことになった、というお話です。

 

ストーリーはテンポよく進んでいきます。

その七日の内で彼女たちの死の原因や

生きていたころの葛藤がつまびらかにされ、

何とか彼女たちが悔いなく、

最後を迎えられるように修一が寄り添い、時には紫の手を借りながら、

一人ずつ満足して七日を終えていきます。

そのうちに、彼女たちが死んだ事件について知ることになるという、

単なる恋愛アドベンチャーなだけではない異色のストーリー。

 

しかしその短いシナリオの中に彼女たちの思いが

ぎゅっと詰まっているシナリオです。

短いながら、その鮮やかな語り口の巧みさに短さが気にならないタイプ。

彼女たちの思いと主人公の修一に、ぐいぐいと引き込まれていき、

どんどんと読み進んでしまいます。

非常に読ませるシナリオ進行は上手いなと舌を巻きました。

全ヒロインハッピーエンドかと言われれば首を傾げるものがありますが、

読了後は不思議と爽やかでその後が読者の中で広がるものがあります。

 

 

 

システムはかなり良いです。

細かに設定でき、文字数待機時間と固定待機時間が

設定できるのはやっぱりいいですね。

ボイスが各個人でボリューム調整できるのもいい。

アドベンチャーで必要なシステムはほぼすべて搭載されています。

次のテキストまで一気に飛べるモード、

バックログからのジャンプ、巻き戻しもあり、非常に快適。

 

文字フィールドを消すのがやりにくいのと、

最大の難点はオートとスキップが併用できないぐらいで、

ほぼ完璧と言って差し支えないかと思います。

 

 

 

グラフィックは可愛らしい絵柄。

胸元の描き方がギャルゲーらしく

おかしいのを除けば比較的万人向けなのですが、

構図に華がないものが結構あるのは残念。

横顔と人物の全体像を魅力的に描くのが苦手なようですね。

主人公の修一がのっぺらぼうなのも気になります。

塗はやや淡白なタイプ。

もう少し凝っても良かったのではないかと思います。

 

CGの枚数は差分抜きで42枚。

シナリオボリュームに対し、各ヒロイン数枚ずつと

かなり少なく感じますが、差分は大量にあります。

最大枚数は39枚と圧巻。

殆どのCGの差分が10枚前後あります。

差分よりももうちょっとCGの枚数を頑張って欲しかった。

 

 

プレイ時間は約27時間。

時間が表示されないタイプですので、約の時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

トロフィーに関係のないバッドエンドは見ていません。

 

全ヒロイン死亡しているという異色のアドベンチャーです。

彼女たちが逝くのを七日ずつ体験していくという重いシナリオですが、

彼女たちが幸せそうに逝けたのが救いであり、

彼女たちが死ぬ原因であった事件が明らかになった所から

ぐいぐいとプレイヤーを引き込む異常な魅力があります。

 

最初はどう見てもハッピーエンドに

ならなさそうなシナリオにしり込みしていましたが、

不思議と読了後は爽やかです。

一日一日を噛みしめて生きていく

彼女たちの思いが溢れたシナリオは素晴らしかった。

終わりはやや都合がいいような気もしなくもありませんが、

私は少しぐらい強引でも救いがある終わり方の方が好きですので、

これで良かったと思います。

短めの感動系アドベンチャーを探されている方にお勧めしたい作品です。




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