Bullet Butlers

−銃弾の彼方−

 

一言レビュー

執事と銃とバトル

 

グラフィック 8点
シナリオ 9点
ボリューム 7点
快適さ 6点
満足度 9点
総プレイ時間 40時間
総合評価 80点

 

 

それは昔の物語。

死を司る神「不死の王」が世界中を混沌に陥れていた時代、

死と災いをまき散らす不死の王を倒すために

それぞれの種族から八人の英雄と一人の名もなき従者が選ばれた。

死闘の末神の城へたどり着いたが、

しかし死を知らない神を倒すことはできず、

英雄たちが屠られんとした時、従者が降神の呪文を紡ぎ、

自らの体に不死の王を宿らせる。

死を知らないのならば、死を知るものの体に宿せば倒すことができる。

見る間に姿を変えていく従者に、彼の主イングリットが剣を突き立て、

かくして死を知らぬ神は、死を知ることになった。

 

その時よりも2000年も後の時代。

八人の英雄たちはそれぞれ神から頂いた聖紋を子孫に引き継がせており、

聖紋を宿した者はミスティック・ワンと呼ばれ、

皆から崇拝の対象とされていた。

次代のミスティック・ワンの候補者は、

フレイマル・ネクスという赤い瞳を宿す。

 

ドラゴニュートの次代のミスティック・ワン候補である

セルマ・フォルテンマイヤーは過去のとある事件がもとで竜に変身できず、

翼のみしか出せない欠落者(ラッカー)であり、

ラッカーはドラゴニュートから嫌悪と侮蔑という、激しい差別をされていた。

今一人の候補者シド・フォルテンマイヤーは世界で数十人しかいない、

貴重な古の竜「ファーヴニル」に変身可能であり、

次代のミスティック・ワンはシドであろうと目されていた。

 

不死の王を信仰し、不死の王の復活に血道を上げる組織

「聖道評議会」が雇った暗殺者がフォルテンマイヤー家を襲い、

現代のドラゴニュートのミスティック・ワンである

ランド・フォルテンマイヤー殺害に成功する。

しかし、聖紋が宿ったのはシドではなく、セルマだった。

セルマがミスティック・ワンとなった後でも

聖紋はフレイマル・ネクスを持つ者に譲渡が可能なため、

フレイマル・ネクスをセルマが聖紋を継承した後にも失わなかったシドは

セルマの継承が不服として、

その座を譲るようにと強固に働きかけてきた。

 

という、セルマとシド、二人の候補者がミスティック・ワンの座を争い、

そこにミスティック・ワンを滅ぼしたい聖道評議会が絡んできて

激しい戦いが繰り広げられていきます。

 

主人公はセルマの執事リック・アロースミス。

彼の双子の兄はシドの執事アルフレッド・アロースミス。

兄弟で敵対する主人に仕えていることにより、

二人も互いに争うことになります。

時代的な科学レベルは恐らく1900年代の世界設定で、

剣と魔法と科学の入り混じったファンタジー。

 

語られるのはファンタジックな世界観と

主を絶対的な存在として敬い、主の為に戦う執事そのものです。

この世界の執事は主の世話を焼くというだけではなく、護衛も兼任しています。

死してなお体が散らばって武器となった不死の神の一部

朽ち果てし神の戦器(エメス・トラブラム)と

幼いころに契約することになった主人公兄弟は、

魂の欠損(記憶の欠落)を代償に

エメス・トラブラムの圧倒的な力を行使して敵を打倒していきます。

 

とにかくバトルシーンが熱いのはあやかしびとと同じですね。

脇役陣大活躍も相変わらずですが、

前回と違うのは主人公が凄まじく強く、

容赦なく主を傷つける者たちを屠っていく点です。

力の代償は己の魂の欠損であり、むやみやたらと使えば

エメス・トラブラムに最終的に魂を食らわれるという

手厳しい代償を求められるわけですが、

それでも主や愛した者を守るという覚悟は瞠目に値します。

 

攻略にはやや規制がかかっており、

ヴァレリアと雪を攻略して初めて

メインヒロインであるセルマが攻略可能になっています。

ヴァレリアでは敵であるギュスターヴが、

雪では暗殺者であるレイスの背景が語られていき、

セルマルートで一気に二人が最後に加わります。

ヴァレリアではレイスが、雪ではギュスターヴが

途中で自然消滅することになるわけですが、

その分それぞれのパートできっちりと

敵役の背景や過去、感情を丁寧に語っていくために

セルマルートで彼らの人となりを省略しても構わなくなっており、

それぞれのルートで彼らのことが語られているからこそ、

プレイヤーはその背景を理解してセルマのストーリーを追っていけるようになっています。

この辺は非常に上手いと思いますね。

一つのルートで全部語ってしまうとくどくなってしまいがちなのですが、

一つずつのルートで丁寧に開示し、

その設定を全部ひっくるめて最後のルートへと繋げ、

練りこんでいく手法は流石だと思います。

サブヒロインを非常に上手に利用していますね。

 

本編ルートはいいものの、それぞれのエンディング後に解放される

EX.STORYは大問題です。

雰囲気やキャラクターがぶち壊しであり、

パロディ的なストーリーなのですが、

この人物がこのような発言をするわけがないといったことが山盛りです。

エンディング後のアフターストーリー等ならばともかくとして、

本編を台無しにするこのストーリーは

はっきり言ってなかったほうが良かったと思います。

ちょっと遊び過ぎていますね。

 

 

 

システムは一見いろいろとそろっており快適そうに見えますが、

実際はあちこちと不具合があります。

テキストの一括表示は基本的にできません。

どのゲームでもテキストは一括表示を選んでいただけにこれは厳しい仕様。

そして、テキストを送ってもボイスのキャンセルはできずに

ボイスが次のボイスまで流れ続ける点もいただけない。

メディアインストールがないせいでシャーク音は煩いぐらいで、

画面の切り替え、画面効果、CG変更でいちいち数秒間停止し、

上記理由でスキップは非常に遅く、

テキストフィールドを消すことができずに

CGだけの閲覧がゲームプレイ中には不可能で、

そしてとどめとばかりに履歴の文字は小さすぎます。

 

CG閲覧にしても大きな画像で表示されているのはいいものの、

4:3表示でCG閲覧不可になっているのはとても残念です。

そして時間軸がばらばらでCGの配置がされているために

目当てのCGを探すのが大変です。

このCGはあるヒロインルートと設定できないのはわかりますが、

もうちょっと配慮していただきたかったですね。

 

 

 

グラフィックですが、綺麗系ながらもシンプルよりの絵柄。

やや癖があるでしょうか。

CGは比較的安定しているものが多いのですが、

追加されたCGには概ね違和感があるのが残念です。

 

そしてヒロインの立ち絵、特に雪の顔立ちに

違和感のあるものがちらほらあったのが残念です。

エルネスタの立ち絵がぼやけて見え、

他ヒロインと並べた時にぼやけ具合が

際立って見える所もマイナスポイントです。

全画面表示にした場合、背の低いヴァレリアが

テキストフィールドに顔の三分の一ほど埋まってしまうのもかなり問題です。

テキストフィールドが縦に広すぎるので、

もうちょっと低い目にしたほうが良かったですね。

その為に、結局はずっと4:3でプレイすることになりました。

 

CGは色の塗も丁寧で、バトルシーンでの動きのある絵や

カットインの絵もとても華があり、大胆な構図で良く描けています。

そして女性陣のCGよりも男性陣(主人公含む)のイラストが多いという、

普通のギャルゲーとは違うところに層の厚いCGは相変わらずです。

バランス配分もこれで良かったかと思われます。

 

CGの枚数は差分抜きで150枚。

差分もたっぷりとあり、その内9枚がデフォルメ絵ですが、

ボリュームから見るとかなり多めな枚数ですね。

特に問題ないと思います。

 

 

プレイ時間は約40時間。

プレイ時間が表示されないタイプのため、正確な時間はわかりません。

全エンディングクリア、全CGを回収しています。

 

とにかく熱いバトルと主を守る執事の心意気が素晴らしいゲーム。

敵方の心情もとても丁寧に語っており、

全キャラクターの背景総てを丁寧に語っているために

その魅力を十二分に生かしており、

全員を上手に立ち回らせています。

今回はどちらかというと日常部分よりも

バトルシーンに比重を置いているでしょうか。

ヒロインルートの展開も素晴らしく、

攻略規制がかかっている分、

各ルートの総括となるセルマルートの活かし方も抜群でしたね。

エンディングの種類やヒロイン人数はあやかしびとよりも少ないのですが、

コンパクトながらも上手にまとめていると思います。

ですが、EX.STORYは精神衛生上

プレイされないことをお勧めします。

 

ストーリーはいいものの、システムと立ち絵が

足を引っ張りまくってしまっているのが非常に残念でなりません。

ここがもうちょっと何とかなっていれば

ワンランク上の点が十分狙えたのですが。

女性よりも男性の方が多く、

ほぼ全員がもれなく格好良いという、非常に珍しいストーリーです。

男性向けのゲームなのですが、

実は女性に是非ともお勧めしたいゲームですね。




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