デッドエンド

Orchestral Manoeuvres in the Dead End

 

 

一言レビュー

ラノベ的ストーリーで面白いがボリューム不足

 

グラフィック 9点
シナリオ 9点
ボリューム 5点
快適さ 7点
満足度 9点
総プレイ時間 17時間
総合評価 80点

 

 

携帯を学校に置き忘れてしまい、

こっそりと夜遅くに取りに来ていた符御是人は、

玄関から出ようとしてとんでもないものと遭遇してしまう。

それはどう見ても人ではなく、化け物、ゾンビと称されるものだった。

危険を感じた是人は、とりあえず警察に連絡すべく、

安全な場所を求めて屋上へ避難した時、

月を背に、貯水塔の前に腰掛ける幻想的な美少女に目を奪われた。

物音を立てて少女に気づかれた是人は、

不穏な空気を漂わせて近づいてくる少女ウツロから逃げようとして、

背後から現れたゴシック風の服装をした少年ヘンゼルと挟み撃ちにされてしまう。

 

なんとか逃げ道はないかと足掻いていると、

さらに現れたのは同い年ぐらいの少女と10歳ぐらいの少年。

是人を助けようとする二人組の目の前で、

是人はウツロに胸を刺し貫かれてしまった。

 

それから3日後。

確実に死んだと思っていたのに、

特に怪我もなく自宅で起きた自分の目の前にいたのは

つなぎを着た、30台の男と金髪のヤンキー。

そして後から入ってきたのはあの晩自分を助けようとしてくれた、

足を負傷して車いすに乗った少年小林鋼一郎と、

自分と同じ学校の制服を着た少女、手塚酉穂だった。

彼らは東亰府環境局廃棄物対策部、特殊廃忌物対策課、第二班のメンバー。

吸血鬼に対抗する組織であり、屋上にいた二人は吸血鬼とその従者で、

玄関にいたのはグールだと言う。

瀕死の重傷を負った是人に、酉穂が己の特殊な回復術を使い、

輸血をして助けたのだと教えられた。

少年はあの時の戦闘がもとで足を負傷しており、

彼の車いすの介助兼敵から彼の楯となるべき人物が必要なので、

その人員として良ければバイトで自分たちの組織に入らないか

とのお誘いを持ちかけられた。

 

両親がすでになく、勤労学生の是人は気を失っていた3日の間に

掛け持ちしていたバイト3件を彼らに勝手に辞めさせられており、

とりあえずの生活費のために、

一も二もなく新たなバイトの話に飛びついたのだった。

 

 

という、ラノベ的展開、巻き込まれ系のお話です。

次から次へと目まぐるしく起きる展開で、

ジェットコースターのようなストーリーは非常に面白い。

テンポ良く、急展開を迎えるため目が離せず、

なかなか止め時が見つけられなくて困りました。

登場人物たちも皆魅力的で生き生きしています。

ただし、展開をとても急ぎ過ぎており、

プレイ時間中実際に動く展開は7時間程度で、

大半が敵の城へ赴くダンジョン攻略へと

裂かれてしまっているのが非常に残念です。

ストーリーが動き出すと途端に面白くなるのですが。

 

キャラクターの背景などを交えて

約6日間(実質3日間)に起こった出来事を丁寧に描いているのですが、

テンポが良い代わりに展開がとにかく早い。

待ちの時間や仲間と友好を温めるようなエピソードをスパッと切り捨てており、

とても都合よく雪玉を転がすように話がとんとん拍子に進むので、

あっという間にエンディングを迎えてしまいます。

そして、何冊もある一話完結のラノベのうちの第一巻目といったところで、

とにかくボリューム不足なのが目に付いてしまいます。

折角面白いストーリー、魅力的な登場人物があまり生かされておらず、

とてももったいない作品ですね。

ダンジョン攻略はコンパクトに収め、

もっとエピソードをふんだんに盛り込み、

ボリュームを出したほうが良かったと思います。

 

 

 

システムは基本的なところはきっちりと押さえてきています。

メモリインストールがあるのでローディングもほとんどなく快適。

ただ、読んだパラグラフがリストに全部表示されない点と

スキップとオートモードがダイスロールやパラグラフ操作でストップしてしまうのと、

シングルアクションでそれらを設定できず、

セーブデータが全部同じアイコンになってしまうのが少々難でしょうか。

後は、セリフに名前が表示されておらず、

時折誰が喋ったのかわかりづらかったので、そこがちょっと残念ですね。

ただ、主人公を含めて完全なフルボイスなため、

ごく稀にわからないぐらいで特に大きな問題はありません。

 

実はこのゲームはちょっと変わっていて、

ゲームブックというシステムを採用しています。

一時期流行った、本をゲームのようにして遊ぶゲームブックというものを

実際にデジタルゲーム化した物なのですが、

自分が進んできた道や持っているアイテムで道が分岐し、

ダイスで戦闘を行うというタイプになっています。

ですが実はズルができるようになっていて、

戦闘のスキップや、ダイスで運命を決めるのも自分の思い通りに決められたり、

アイテムを持っていなくても持っているかのように

進められたりといったシステムも搭載されており、

通常通りのアドベンチャーとしても進められるようになっています。

また、パラグラフ(900弱)というものが各文章に設定されており、

実は好きな文章に好きなように移動できるようになっているのです。

要するに、3ケタのパラグラフがすべての文章に割り振られており、

スタート直後にパラグラフの数字さえわかっていれば、

いきなりエンディングに進むこともできるようになっています。

特にフラグだては必要ではなく、

全文章を簡単にコンプリートできるようになっています。

ゲームブックというものを読んだことはほとんどないせいもあると思いますが、

こういうシステムはある意味斬新でプレイしていて物珍しく、

ゲームマスターがいるかのような文章も独特で、

結構楽しかったですね。

実際デジタルゲームとゲームブックは

とても相性がいいのではないでしょうか。

 

 

 

グラフィックは、非常に華のある繊細な絵柄。

目にやや特徴があるものの、渋い男性やヤンキー、

可愛らしい系、カッコイイ系も描き分けるという

マルチな才能の絵師さんを採用しています。

絵柄はどの絵もはっと目を引く独特の華があり、

彩色も大変美しく、華麗で、構図も非常に綺麗です。

少女漫画的な線の細い流麗な絵柄であり、どのCGも完成度が高く、

女性が好みそうな繊細な美しさがあります。

ただ、背景がちょっと流用し過ぎているかと思います。

 

CGの枚数は差分抜きで77枚。

差分はそれなりで枚数はボリュームの割にはとても多く、

テンポ良くCGが開示されるため、実際より多く感じます。

立ち絵とCGの差もなく、どちらもとても綺麗で、

ここまで完成度の高い絵を久しぶりに見ました。

ただ、1枚だけ衣装指定が間違っており、

決定衣装以前の、仮衣装のままで描かれているCGが

あったのが気になりました。

 

 

 

プレイ時間は17時間。

1エンド迎えるのに12時間、

文章やアイテム、CGをコンプリートするのに5時間程度です。

途中のダンジョン攻略で水増ししている感があり、

明らかなボリューム不足ですね。

25〜30時間程度のボリュームで、

ダンジョン攻略をもう少しコンパクトにしてほしかった。

 

ストーリーは急展開ながら面白く、

テンポ良く進んでキャラクターは皆魅力的。

絵の完成度は高く、枚数もボリュームの割には多めで、

ゲームブックというシステムを採用しているのはとても物珍しく、

楽しんでプレイできました。

ボリュームがないのと、あくまでもラノベ的展開であり、

数巻続くラノベの第1巻目といった感じで

終わってしまっているのが非常に残念です。

 

昨今のライトノベルのように気軽に読めるストーリーが

好きな方は気に入るのではないでしょうか。

投げ売りされていたためあまり期待せずプレイしたのですが、

ボリューム以外は予想以上の出来で驚きました。



HOME    BACK

inserted by FC2 system