Dies irae

Amantes amentes

 

一言レビュー

恐怖劇と殺戮に耐えられるか?

 

グラフィック 9点
シナリオ 8点
ボリューム 9点
快適さ 6点
満足度 8点
総プレイ時間 80時間
総合評価 81点

 

 

第二次世界大戦末期、敗戦を目前としたドイツ。

首都ベルリンで政府直轄のオカルティックな組織

「聖槍十三騎士団」は自国が滅びつつあるのを知りながら、

些末なことだと切り捨てて、大量殺戮が必要な儀式を行っていた。

事が成り、首領のラインハルト・ハイドリヒは大隊長3名を伴って、

60年後のシャンバラ(日本)での儀式の再現を残された騎士団員と約束し、

何処となりとも知れない場所へと姿を消した。

 

その61年後、2006年、日本の諏訪原市。

藤井蓮は幼馴染であり、悪友である遊佐司狼と

殴り合いの流血沙汰という大喧嘩をやらかし、

2カ月間の入院生活を送っていた。

司狼も同程度の怪我を負っていたのだが、

入院数日後に姿をくらませており、

蓮の日常になんとも言えない影を落としていた。

晴れて退院というその日、幼馴染の綾瀬香澄に

無理矢理「世界の刀剣博物館」に連れて行かれてしまう。

その場で、何かに導かれるようにたどり着いたのは、

人目に触れないようにひっそりと隅に置かれていた、ギロチンの展示物だった。

そのギロチンに重なるように、金髪に白の粗末なドレスを着た少女が

うっすらと浮かび上がる。

その少女の声を聞いた時から、

藤井連の愛すべき平凡な日常は一気に瓦解していった。

 

諏訪原市でその日以降、首が落とされるという連続通り魔事件が頻発。

その事件後から、ギロチンの前で見た少女と黄昏の浜辺で会い、

ギロチンで首をはねられるという悪夢にうなされていた蓮は、

日本に来ていた聖槍十三騎士団と出会い、

彼らとの戦いに身をやつすことになる…。

 

といった、カルティックな設定、ドイツナチス、聖槍十三騎士団、

聖遺物といった独特のキーワードをモチーフにした、

魔人達による大量殺戮劇がメインです。

とにかくそのゲームならではのキーワードが満載の独特の世界観です。

また、ゲーム中はずっと戦闘に明け暮れることになり、

聖槍十三騎士団が行う儀式とは、ある特定ポイントにおいての

大量殺人か、魔人(主人公含む)達の死闘が絶対条件であり、

剣呑で人を殺すことに快楽を感じるという問題有りな人物ばかりの中で、

必死に日常を取り戻そうと、守ろうとする主人公を主軸に語られる物語は

殺伐とした場面がたっぷりで

ありとあらゆるところに死が満ち溢れています。

 

また、文章も回りくどく、妙にねっとりとしており、

読む人をやや選ぶ文章です。

キャラクター達もおしゃべりなのですが、

本心を非常に迂遠な言葉で延々と語っており、

繰り言が多く、とにかくありとあらゆるところがくどい。

こういう文章が嫌いな方はちょっと厳しいかもしれませんね。

 

ですが世界観は非常に綿密に練り上げられており、

簡素でいながら複雑という独特の世界観が魅力のストーリーです。

基本的に、全員のヒロインを攻略して初めて物語の全体像が分かるタイプ。

ヒロインよりも世界観、ストーリーを重視する方には良いかと思います。

ですがその分半分のヒロインたちは蔑ろにされており、

ハッピーエンドとはとても思えないエンディングを迎えています。

前座というか、その世界観を語るためだけに

存在させられているヒロインたちが少々かわいそうですね。

この辺はあまり期待しないほうがいいかと。

 

そしてアザーストーリーがたっぷりと用意されており、

エンディング後も楽しめます。

マリィ、玲愛のエンディング後のものもあり、

実際この2つのエクストラストーリーでもって、

2人のシナリオが完成されるといった非常に良い出来。

このエクストラがあるからこそシナリオや最後が締まる

とても重要なシナリオを内包しており、必見の出来です。

 

 

 

システムはPSP版のCLANNADに近いタイプ。

必要最低限はあるものの、とにかく設定できる項目が少なすぎます。

PSPの小さな画面の、一画面ですべての設定が表示されてしまうほど。

厳密にいうと二画面ですが、二画面目は人物のボイスありなしの表示ページですので、

実質的には一画面です。

ウィンドウ濃度、文字送り速度、オート待ち時間、

スキップの既読・未読設定、

インストールデータを利用するかどうか、

音量の6項目しかありません。

ギャラリー表示時のレスポンスもかなり悪く、

たびたび停止するのが駄目なポイントです。

 

本編プレイ中のロード時間はインストール有りならば

ほとんど気になりませんでした。

セーブはセーブした日時と右上に小さく

その時のグラフィックが表示されるため、

少々使い辛いのですが、必要最低限のものはあります。

そして最大の難点が、スキップが□ボタンを

押しっぱなしにしなければならないこと。

何度も繰り返し共通ルートを

プレイしなければならないタイプですので、

これが地味につらいです。

 

UMDは本編とアザーストーリーに分けられているために、

プレイ中はディスクを交換することがないのですが、

アザーストーリー用のUMDを入れていて、

ギャラリーを見たい場合はUMDを本編用のディスクに

取り換えなければならないのが少々手間ですね。

アザーストーリー用のUMDにもギャラリーデータを入れてほしかった。

 

 

 

グラフィックは綺麗系シンプル寄りながらもやや独特なタイプ。

あまり好き嫌いはないとは思いますし、世界観にもあっているのですが、

CGによっては顔立ちが違って見える人物が幾人かいるのが少々気になります。

CGをアップにすることが頻繁にあるのですが、

もとのPSPサイズのものを強引に拡大しており、

シャギー感があって非常に汚い。

アップ時は別にもっと大きな絵を用意する等の配慮が欲しかった。

画面のエフェクト、光や稲妻の入れ方は華やかで美しく、

戦闘場面での絵はかなり良い出来です。

立ち絵は比較的安定していますね。

 

 

CGの枚数はおまけと差分抜きで180枚。

それとは別に36枚のカットインがありますので、

全体的な枚数は216枚とかなり多め。

差分もたっぷりと用意されており、多い枚数です。

プレイ時間がとても長いのですが、

それを考慮しても全体的な枚数は多い。

ボリュームがあり、贅沢な枚数だったと思います。

 

 

 

プレイ時間が表示されないため、

正確な時間はわかりませんが、80時間ぐらいでしょうか。

とにかく長大なボリュームとくどい文体で

たっぷりと言葉を尽くされた文章がやや人を選ぶタイプ。

独特の世界観が魅力的ですが、ほぼ殺戮劇に終始しており、

そういうのが嫌いな方は徹底的に向きません。

 

ですが、「Fate」や「いつか、届く、あの空へ」が好きな方ならば

その世界観に見事にはまれると思います。

癖のあるストーリーでしたが、それが妙に味と魅力になる作品でした。

誰にでも進められるものではありませんが、

上記タイプが好きで、戦闘が熱いアドベンチャーが好きな方ならばお勧めです。




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