グリザイアの果実

 

LE FRUIT DE LA GRISAIA

 

一言レビュー

凄まじい過去を背負ったヒロイン達

 

グラフィック 8点
シナリオ 9点
ボリューム 8点
快適さ 10点
満足度 9点
総プレイ時間 60時間
総合評価 90点

 

 

 

私立美浜学園。

設立されて1年というまだ日の浅いそこは、

普通の学校に入ることができない

重い過去を背負った者達だけが通う、全寮制の学園だった。

 

転校初日、大荷物を背負ってうろつく、

見るからに凄みを帯びて只者ではない雰囲気を漂わせる

風見雄二は警官に見咎められ、

職質の上に警察署までしょっ引かれ、

とある上の経由で無罪放免として解放された。

ようやくたどり着いた転校先の学園は、

雄二を除けばたった5人の生徒、そして女子しかいなかった。

 

大きく立派な設備、数人の学生しかいないにもかかわらず、

各教科を受け持つ教師たち。

少ない生徒数に相反して、不釣り合いに豪華な学園。

彼女たちと共に暮らし、共に学ぶことにより、

雄二は彼女たちの凄まじい過去と向き合うことになっていきます。

 

 

とにかく、主人公を含めてのヒロインたちの経歴が凄まじい。

彼女たちのルートへ進むごとに、

彼女たちの過去が語られていくのですが、

胸に迫り、ある一種の恐怖すら覚える

狂気的な運命に翻弄された少女たちに、思わず息をのみます。

彼女たち自身が原因とは言い難い、

生まれもったものや起こってしまった事故に由来する

個人では変えがたい、あるいはどうしようもないそれは、

ヒロインを容赦なく追い詰めます。

 

そして彼女たちの過去が明らかになるあたりからが本番です。

彼女たちの過去が端を発する運命に、

主人公がヒロインを手助けしつつ、

敢然と立ち向かうことになります。

 

主人公の経歴を元とした、ちょっと反則的な好転が

後半になってやや目立つものの、

主人公がヒロインのために頑張って、

自分が出来る限り、自分の影響力が及ぶ範囲にまで

最大限手を尽くしてヒロインを救い、奔走する様に、

終盤では食い入るようにプレイしてしまいました。

圧倒的なパワーでなぎ倒していくヒロイン終盤のエピソードは圧巻です。

挫けそうになるヒロイン達を叱咤激励して

共に歩んでゆく様は一種の感動すら覚えます。

 

ただ、シナリオ中結構下品スレスレな下ネタ会話が多く、

ヒロインのルートに入るまでの日常シーンも長いです。

会話やシナリオ自体は良かったものの、

余りにも日常シーンが多くてやや弛むものがあったのも確かです。

そして、18禁シーンもシナリオを変更することなく、盛り込んであります。

もちろん最中のテキストはほぼスパッとカットされているのですが、

事後であることは本人たちの会話で明言されており、

堂々と他キャラクターに宣言していることもあり、

一切誤魔化していません。

こういう18禁シーンが苦手な人は要注意です。

 

そして、ここが重要ポイントなのですが、

伏線が全部回収されていません。

特に主人公関連が顕著で、やんわりと真綿でくるむように

語られているものの、あっちもこっちも謎だらけで、

ヒロインたちの過去は明らかになっているものの、

主人公関連の謎は丸投げです。

そもそも続編有りきで作られた作品なのかもしれません。

このあと2作でその辺の謎は明らかになっていくのでしょうが、

これ1本で全部伏線が回収されていないことを留意してください。

 

 

 

インストールありで、システムは非常に快適です。

ローディングはほぼなく、プレイを阻害することはありません。

画面転換にちょっと引っかかることがありますが、

ほぼ完璧と言って差し支えないでしょう。

システムも微に入り細に入り完備されており、

これがあのCLANNADをPSPに移植したのと

同じ会社のシステムかと正直驚きました。

 

アドベンチャーに必須なものはほぼ搭載されています。

普通のアドベンチャーでついており、

このゲームで唯一ついていないのは、

キャラクターごとの音声のオンオフぐらいでしょうか。

 

オートモード時のスピードは文字時間と

待機時間の両方が設定できるという優れもの。

普通はテキスト表示後のウエイト時間しか設定できないのですが、

これでしたら、文字数が多ければ、

文字数が少ないテキストより長めのウエイト時間になり、

長めの文章で後半が読めないということがありません。

文章は一括表示にすることが私は多いため、

これには大変助かりました。

 

セーブデータもその時表示されていたCGや立ち絵、

セリフが一行のみですが表示され、

どのセーブデータかわかりやすくなっています。

セーブデータをローディング後のセーブデータ以前のテキストも表示され、

履歴からのジャンプも可能、

全エピソードもシーン回想で再度読むことも可能、

テキスト有り、無しが選択できるスクリーンショット完備と、

至れり尽くせりですね。

 

 

 

グラフィックは綺麗目のあまり癖の無いタイプの絵柄。

塗の美しさや繊細さも問題ありません。

空や夕暮れのグラデーションの塗が非常に美しい。

やや主人公の顔立ちにバラつきがあるのですが、

ヒロインたちは安定していますね。

二人の絵師を採用している弊害でしょうか。

 

CGの枚数は差分抜きで128枚。

ボリュームから見るにまずまずの枚数に思えますが、

このうちミニキャラのデフォルメイラストが33枚と、

普通のイラストが100枚を切ってしまうのが気になるところ。

また、後半はアクションシーンが結構含まれるのですが、

殆どが立ち絵、背景のみで進行しており、

枚数に相反してここにCGが欲しいという場面が結構あります。

こうして数えてみると結構多く感じるのですが、

プレイ中はCGの枚数が物足りなく感じました。

 

 

 

 

プレイ時間は約60時間程度。

時間が表示されないタイプで正確な時間が分かりませんので約の時間です。

全ヒロインプレイしなければならないタイプではないものの、

主人公の謎はそれぞれのキャラクターに分散されているので、

出来れば全員を攻略したほうが良いかと思われます。

 

主人公を含めて、ヒロインたちは尋常でなく重い運命を背負っているので、

ねっとりとした闇と運命の悲惨さを感じてしまいます。

どうしても暗部に踏み込まなければならないため、

そういうのが苦手な方は要注意です。

ですが、そういうタイプが嫌いでないならば、

是非ともお勧めしたいクオリティだと思います。

 

やや終盤でちょっと反則的な技が目に付く事と、

伏線が全部回収されておらず、続編有りきで作られているものの、

それを補って余りあるシナリオでした。




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