R.U.R.U.R ル・ル・ル・ル

petit prince

 

一言レビュー

肉食系女子に囲まれた星の王子様

 

グラフィック 7点
シナリオ 8点
ボリューム 6点
快適さ 6点
満足度 8点
総プレイ時間 30時間
総合評価 74点

 

 

 

イチヒコは二十歳になるのを目前に控えた普通の男の子。

今日も幼馴染のヒナギクに乱暴に起こされ、

姉のミズバショウの食事をもう一人の姉、シロツメグサと

ヒナギクとでとり、みんなで学校へ行き、授業を受ける。

いつもの日常、いつもと同じ日。

 

それが、イチヒコが二十歳になった途端、

イチヒコに対する制限が解除され、世界の歯車が回り始めた。

姉たち二人が出かける中、ひとり家で留守番をする

イチヒコの部屋の窓をたたき割り、

あらわれたのはマントを被った人物。

訳が分からずその人物にいきなり誘拐される中で否応なく知らされたものは、

ここは地球ではなく、宇宙船の中だということだった。

 

 

それ以来、この船の謎、

そして実は人間はイチヒコ一人だけだと知ることになる過程で、

イチヒコだけが持つ、あることに対する決定権のうちで、

片方の選択肢を取ってほしくないロボット達との交流や

ヒロインたちとの心のすれ違い、彼らの思惑を軸にお話は展開していきます。

 

太陽も月も地球も滅びかけたとき、

人間たちは移植可能な星を求めて旅立った。

この船は、そんな宇宙船の中の一隻です。

船の名はサン=テグジュベリ号。

とある事故がもとで船の中の人間は一人もいなくなり、

ロボットであるチャペック(人型)とセーバーハーゲン(作業型)が

人間がいなくなったことによりこころ(レム)の制限を解除され、

穏やかに暮らしていたのですが、

ある日かろうじて稼働している、たった一つ残された冬眠カプセルを見つけ、

その中に眠る少年、イチヒコを目覚めさせたことにより、

閉じられた、ロボット達の楽園であった宇宙船の中の時間が動き始めます。

 

私は全く詳しくないのですが、SF用語やマザーグース、

星の王子様といったものに使われた言葉や詩がふんだんに散りばめられ、

絵本調の物語として語られていきます。

 

一週目は選択肢が全くなく、エンディングまで強制的にたどり着き、

訳も分からず終わってしまうため、はてなが頭いっぱいに広がりますが、

各ヒロインのストーリーを見ていくごとに、

徐々に一週目にどのようなことになったのか、

イチヒコがどのような選択肢を選んだのか

ということがわかるようになっています。

一応、世界観は各ヒロインの中で少しずつ紐解かれていくタイプです。

外伝といったタイプのヒロインもいるため、

全員攻略する必要はない、と言いたいところですが、

実は全員のエンディングを見た後に

グランドエンディングルートに進むので、

全体を楽しむのならば全員を攻略する必要があります。

 

人間や人間の社会というものが良くわかっていないロボット達が

イチヒコをできるだけ普通の子として、幸せに暮らせるように

精一杯心を砕くわけですが、

とにかく人間のことが良くわかっていないのですから、

ありとあらゆるところで頓珍漢なことになるわけです。

学校の授業がなぞなぞだったり、

妙な言葉が雅やかだと表現されていたり、

コンビーフのCMソングが子守唄だったりと、

あらゆる所がちぐはぐな感じです。

それでも彼らは一生懸命であり、

なんとかイチヒコを幸せに育てようと頑張っています。

 

そしてコールドスリープから起こされてから全ての記憶を失い、

イチヒコは三年という期間チャペックたちに大事に育てられ、

成人を迎えた日以降に、自分に秘密にされていたことを

次々と突きつけられていきます。

ヒロインのことを思いながら、どのような選択を取るかというのが

この物語の肝ではあるのですが、

とにかくイチヒコがかなり子供であるということが足を引っ張ります。

二十歳と言われていますが、一年が220日で、一日が22時間なので、

コールドスリープ中の年齢が良くわからないので誤差はあるものの、

実際の年齢は11〜12歳前後のはずです。

そして文章や口調から、彼の精神年齢は極端に低いことが

ありとあらゆるところから滲み出ています。

要するに、恋愛をするには年齢的にあまりにも幼いわけなのです。

作中では好きに種類があるということもよくわかっていない場面があることから、

その精神年齢の低さが垣間見えます。

 

もちろん、その設定をうまく生かしたストーリーもあるのですが、

とにかくイチヒコが子供であるということが

とことんネックになってきますので、

この幼い主人公を受け入れられるのかというのが

このお話を受け入れられるかどうかということになるので、

非常に癖のあるタイプとなっております。

イチヒコにもフルボイスで音声や立ち絵があるという、

アドベンチャーでは非常に珍しいタイプで、

そういう意味でも万人向けではありません。

 

また、18禁要素がそこかしこに残っており、

あ、ここでそのシーンが入ったな、というのがもろにわかります。

もうちょっと別シーンに差し替えたり、

誤魔化したりする努力が必要だったと思います。

独特の世界観の構築は見事であり、お話の展開自体も上手く、

感動要素もさりげなく織り込み、

このゲームでなければこういう表現ができなかったであろうという

ルートもかなりあります。

2週目以降にも小話といったものを散りばめて、

プレイヤーを飽きさせないテンポの良さも見事なのですが、

ヒロインのストーリー間で矛盾が少なからずあることが気になります。

そういうストーリーにするために、

強引に重要な設定をかなりいじっているところが所々見られますね。

後、グランドエンディングが本当に必要だったのでしょうか。

かなり力技でまとめ上げているエンディングです。

 

 

システムはやや悪めです。

クイックセーブもシーンセレクトもありません。

そしてスキップは□ボタン押しっぱなしでなければならないのが辛いです。

コンフィングもあまりいじられるところはなく、

ウィンドウ濃度、文字送り関係、スキップの設定

音量関係のみとなっております。

イチヒコの音声を調整できるのはいいのですが、

ヒロイン毎の音声はなく、他の人物は

一括になってしまっているのがちょっと残念ですね。

ギャラリー閲覧時ですが、作中でスクロール表示される絵がスクロールできず、

また原作より上下を断ち切っているにもかかわらず、

原寸対比のサイズを表示できないのも難です。

 

既読時のメッセージは色が変わるのですが、

ほんのわずかにピンクになる程度ですので、

もう少しはっきりとした色合いにしてほしかったと思います。

メモリインストールがあるので、音声のローディングは比較的少ない目です。

といっても、PSPですのでそれなりにはありますが。

その他のローディング関係は結構速い目ですね。

 

 

グラフィックですが、少し癖のあるタイプ。

色の塗りはふんわりとしていて丁寧に塗られています。

ヒロインたちの衣装に特徴があり、

なんと全員色違いやバリエーション違いになっています。

ケープを羽織っている時はいいものの、

脱いだ時の胸の上の丸いものがかなり気になりますね。

独特の服装センスです。

あと、常に同じ服ばかりを着ているため、

もう少し衣装バリエーションが欲しかったです。

 

CGの枚数はかなり少ない目で67枚。

差分は結構多く全CGで190枚程度です。

プレイ時間が短めなものの、ちょっと少なすぎますね。

差分抜きで100枚ぐらいは欲しかったところ。

ただし、作中と立ち絵の差もなく、だいたい安定しています。

 

 

プレイ時間は全ルートプレイして、30時間程度。

プレイ時間が出ないタイプですので詳しい時間はわかりません。

ちょっとボリューム不足ですね。

 

幼い主人公イチヒコと、周りを取り巻くロボット達の

宇宙船という場所の中での楽園でのお話です。

まさに絵本や物語を見ているという雰囲気の作品。

失楽園となるも、永遠を選ぶも、総てはイチヒコ次第。

彼らの心の交流とすれ違いを描いた様はなかなか良いストーリーですが、

全面的にイチヒコの幼さを押し出しており、

主人公の幼さがダメだと感じた方は早々に手を引かれたほうが良いと思います。

 

とにかく極端に人を選ぶ作品です。

ただし、独特の世界の構築は非常に上手く、

個別ルートはやや癖があるものの、

どのヒロインもお話としては上手に描いています。

イチヒコのビジュアルと精神年齢がもう4、5歳上ならばと

残念でならない作品です。

イチヒコのビジュアルと精神年齢、ヒロイン毎の設定の矛盾に

目をつぶれる方ならば、といったところでしょうか。

ここまで人を選ぶ作品も珍しいでしょう。



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