Remember11

−THE AGE OF INFINITY−

 

一言レビュー

未完の迷作

 

グラフィック 8点
シナリオ 4点
ボリューム 8点
快適さ 10点
満足度 4点
総プレイ時間 58時間
総合評価 60点

 

 

ストーリーはスリル溢れる、サスペンスアドベンチャーです。

 

冬川こころの乗る小型旅客機HAL18便が雪山に墜落し、

助かったのは4人だけ。

必死になって辿り着いた非難小屋には、

数日分の食料と薪、そして半年後の未来の新聞。

その新聞には、7日後、たった1人を除く3人が

雪崩事故に遭って死亡した事が書かれていた。

 

所変わって青鷺島という孤島に建つ、高い塀で囲まれた施設、「スフィア」

特別精神病院である為に、中にいる住人ですら

施設外に自由に出入りする事が出来ない閉鎖施設。

そこに暮らすのは僅か4人。

折しもHAL18便が墜落した1月11日、

優希堂悟が何者かによって時計台から転落させられる。

 

気がつけば「オレは」「私は」他人の体に入って、

全く違う所にいた…!

 

雪山の冬川こころと、スフィアの優希堂悟が

体を度々入れ替わり、

二人の意識が二つの場所を行き来します。

雪山では飢えと寒さに苛まれ、

スフィアでは常に命の危険にさらされる。

 

何故二人は意識と体が入れ替わってしまうのか?

「オレ達は」「私達は」助かることが出来るのか?

 

 

といったストーリーです。

前作のEver17まではあった恋愛要素をバッサリと切り捨て、

ストーリーを突き詰めた分、

シナリオの完成度とサスペンス度がかなり増していると思います。

中弛みが全く無く、先が気になり、

ゲームの止め時が計れなくなるほど

素晴らしいシナリオになっています。

 

難解な言葉が雨霰と振ってきますし、

殺人がかなり起こるので、人を選ぶストーリーではありますが、

人を飽きさせないという点では大変優秀です。

 

 

でもシナリオが4点なのは、完成されていないからです。

一番大事な部分が、すっぽり抜けていて、

絶対に明かされることはありません。

 

推理小説で例えるならば、

大まかなトリックは明らかになるが、

細かい(しかし結構重要)トリックが不明のままで、

動機が語られないまま、

いきなりエンディングを迎えるといった感じです。

プレイヤーはテレビの前で、完全に置いていかれます。

 

 

プレイする前に評判は聞き及んでいたので、

かなりびくびくしながらプレイしましたが、

サッパリわからないまま終わるほどは酷くなかった物の、

そもそもの発端や、本来の目的が達成されたのかも語られません。

 

ストーリーは良い、トリックも良い、シナリオの運び方も抜群、

でも、殆どが語られないまま、

中にはヒントすら与えられないまま、

何がどうなってこうなったのかわからずに、

エンディングを迎えるのは、商品としては失敗だったと思います。

 

全てを活字として語ってしまえば、

蛇足のようになってしまったのではないか、と

好意的な解釈も出来ますが、

商品としては完成されてこそ正当に評価されるものですので、

実に惜しまれる作品です。

 

完成されていれば、前作Ever17を凌ぐ作品になったであろう

レベルに到達しているので、本当にもったいないですね…。

 

 

 

次にグラフィックですが、

立ち絵も、CG絵も手塗り風の塗りで

原画家の左氏の作風を丁寧に再現しています。

氏が塗りにも参加された為だと思いますが、

原画と比べても全く遜色なく、

作風にも合っていて綺麗だと思います。

 

CGの絵も横長の絵もあり、テキスト表示中にスライドしたり等

使い方にセンスが光ります。

また、立ち絵も喋っている途中に白い息が吐き出されたり、

瞬きや口元が動くので、こだわりが感じられます。

 

 

ただ難点があって、

1.CGの枚数が少ない

2.CGを拡大させることが出来るが、拡大させると滲んで絵が汚くなる

3.オープニングムービーの絵がアニメ風の塗りである

 

1.ですが、本当に少ないです。

差分抜きで本編に使われているのが約65枚前後。

最低ラインとしては、差分抜きで100枚は欲しいところ。

2.はアップにしても滲まないのなら、

拡大できることに意味があると思いますが、

あれほど汚くなるのなら、いらない機能だと思います。

3.は、どうせやるのなら、手塗り風のイメージで徹底して欲しかったですね。

 

 

 

システムですが、さすがKIDオリジナル。

かゆい所に手が届き、動作もとても軽いです。

選択肢毎にセーブしてくれるクイックセーブ機能、

日付ごとに始められるショートカット機能と至れり尽くせり。

 

セーブもセーブした日時、ゲーム中の日時、セーブした時のテキスト、

選択肢のところでセーブしたのなら、選択肢のテキストが表示され、

また、サムネイルも大きく表示されていて、

とてもわかりやすかったです。

概読メッセージもどのシーンが

どれだけ読んでいるのか細かく表示されますし、

なにより総合ゲームプレイ時間が表示されるのが良かったですね。

アドベンチャーゲームって、いったい全部で何時間プレイしているのか

わからないゲームが多いのですよね…。

 

ただ、概読メッセージ100%にするには、

物凄い労力が必要です。

ちょっとした選択肢で概読メッセージが変化するので、

フラグ立てするのが大変です。

もう、病的に細かくて、最後は泣きそうでした。

もちろん、全て読む必要もないのですが、完璧に攻略したい方は、

覚悟して挑むか、攻略サイトを見たほうが良いと思います。

実際には全エンディングを見るのにかかる時間は

30時間〜40時間ぐらいだと思います。

 

 

 

とにかくこの作品は「未完の迷作」に尽きると思います。

緊張感あふれるストーリー展開が群を抜くほど秀逸なのですが、

プレイヤーを置いてきぼりにして、

製作者側で自己完結してしまっている所が強いですね。

ちりばめられた数多くの伏線が、

かなり回収されないままに終わっています。

完結していれば、100点をつけても良い作品だっただけに、

非常に残念です。


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