ワイルドアームズ クロスファイア

WILD ARMS XF

 

一言レビュー

新たな領域を発掘

 

グラフィック 8点
シナリオ 8点
ボリューム 10点
快適さ 5点
システム 9点
満足度 8点
総プレイ時間 80時間
総合評価 86点

 

 

ワイルドアームズの外伝にあたる位置付けのゲームです。

今回はシナリオライターに元の金子さんが復帰しています。

ワイルドアームズらしい青臭いストーリーはしっかり健在。

基本的には王道で、「正儀は勝つ!」的な

少しこっ恥ずかしいストーリー・展開なわけですが、

その青臭さと勢いで捻じ伏せて、プレイヤーを黙らせるタイプです。

とにかくスピーディーで勢いのあるシナリオはプレイしていて楽しかったですね。

 

かなりご都合主義的な展開もあるのですが、

それを納得させるところがどこかしらあります。

ですがこの恥ずかしいほどの青臭さを許容できるかどうかで、

シナリオの好き嫌いがキッパリ分かれますね。

従来の作品が好きな方ならば大丈夫ですが。

 

ただしラスト付近のAct.4Epilogueがかなり間延びした感があります。

ストーリーが今までの繰り返しのようになっており、

似たようなイベントをもう一度見せられたようでいささか退屈です。

もう少し無駄を削ぎ落としてすっきりと纏めたら

もっと良くなったのではないかと思います。

 

 

まず戦闘のシステムについてですが、

今回はシミュレーションバトルになっています。

マスはヘックスという六角形で、

六人で一人のユニットを取り囲むことが可能になっています。

このちょっと変わったマスを利用して、

敵を複数の人物で取り囲むフォーメーションアーツは

取り囲むユニットが増えるたびに攻撃力が増すというものなのですが、

この発想はなかなか面白いですね。

戦略的に見ると結構面白いシステムだと思います。

 

今回はクラスという物が複数あり、クラスチェンジをクルクルして

戦闘に優位に立てるクラスを選択するのは

他シミュレーションにはちょっとないシステムです。

クラスごとにパラメーターのアップダウンが設定されており、

クラスによって使える特殊能力と発動されるスキルや能力が違うというのは

かなりオリジナリティ溢れるシステムです。

クラスごとにがらりと変わる能力や移動範囲、攻撃方法の確立は見事。

シミュレーションとなるとどこか似通ったシステムが多い中、

ここまで斬新なシステムを盛り込んだのは瞠目に値します。

この目の付け所は今までRPGを作ってきた

メーカーならではというものなのでしょう。

固定観念に囚われない自由な発想は素晴らしいですね。

 

ただし問題もあり、クラスごとに装備できるアイテムが

全て違っているため、クラスを変えるたびに

装備とアイテムが全て外れて

一から付け直さなければならないのはかなり面倒です。

クラスチェンジを殆どする必要がないのなら別ですが、

このゲームは全ユニット、マップが変わると

クラスをがらりと変えていくタイプのゲームであり、

そのあたりはプレイヤーの戦術が物を言うという点においては面白いので、

ユニットによって共通の装備を作るとか、

使用アイテムは外れないなどの工夫が欲しかったです。

 

戦闘が終わると経験値の他にSPというものが付き、

一定のSPポイントが溜まると装備しているクラスのスキルを覚えることが出来ます。

この習得したスキルですが、他のクラスに変えても、

スキルスロットに習得した他クラスのスキルをつけることが可能で、

ユニットのカスタマイズが千差万別になり、

どのクラスにしてどのスキルを付けるかで、

戦闘がとても楽になったり辛くなったりします。

 

この戦術要素を含んだ、自由度の高さは素晴らしいですね。

キャラクターのカスタマイズという一点においては、

非常に秀逸なシステムだと思います。

ただしこれも、クラスをチェンジするとスキルが全部外れてしまい、

一々設定しなおさなければならないのが非常に面倒です。

キャラクターのカスタマイズという点においては大変面白いと思うのですが、

戦闘に入るまでの下準備というものがとにかく膨大であり、

とても時間がかかるのはこのゲームの悪癖ですね。

次回は是非ともここを改善して欲しいです。

 

 

合成という、アイテム(装備・使用品)を作るシステムそのものは

良いと思うのですが、これが普通の戦闘では

得られないアイテムが材料になるというのがいささか問題です。

自由行動できるようになると雇った傭兵をアイテムの探索に行かせられるのですが、

合成に必要なアイテムがとにかく沢山必要です。

頻繁にアイテム探しに行かせなければならず、大変不自由で面倒です。

終盤まで合成をせずにいたぐらい面倒だったのですが、

終盤からはお店である一定以上のレベルの装備品が売られなくなり、

この合成が半ば強制されているのはかなり苦痛でした。

 

おまけにクラスごとに装備アイテムが違うため、

クラスごとに複数の装備品を用意するのはとても大変です。

合成を必須とするならば、通常の戦闘やフリーバトルの戦利品に

合成用アイテムが得られるようにするべきだったと思います。

 

ワイルドアームズ5との連動企画というものもあるのですが、

5のソフト自体を売り払っているため、試していません。

ですが特にどちらのソフトにも必要なかったような気がします。

やりこむのが好きな方なら…という感じですね。

 

ちょっと余談になるのですが、

マップ毎につけられている名称が詩的でステキですね。

ワイルドアームズはダンジョンなどの名称のつけ方が実に上手いと思います。

 

 

グラフィックは、ふわりとした淡い目の色合いですが、綺麗です。

いささか可愛らしいシンプルなイラスト(世界名作劇場を思わせる)ですが、

パステル調ながらもハッキリとしたメリハリのある色使いで美しいです。

ですがちょっと癖がありますね。

イベント絵は複数用意されており、

立ち絵とイベント絵の差も殆どなく、統一感があります。

傭兵のみ限定ですが、クラスごとに外見が変わるというのも面白いです。

 

チビユニットの出来も良く、

パッと見た目で主要ユニットを間違えることがありません。

キャラクターやユニットにそれぞれ特色があり、

どれが誰か一目で分かる区別の仕方も抜群に良いですね。

しかし傭兵だけは別で、同じクラス、同じ性別だと

全く同じチビユニットになってしまうので区別が付かなかったのが残念です。

それとチビユニットのポージング、立ち絵の種類や表情が

ちょっと少ないような気がしました。

もう少しバリエーションを増やして欲しかったです。

 

 

プレイ時間は、一通りプレイして80時間。

終盤に合成をするために傭兵を派遣したのが10時間ぐらいでしょうか。

ストーリーのみを追っていっても、60〜70時間ぐらいかかると思います。

携帯機としては驚異的なボリュームに脱帽です。

 

システムの目の付け所は素晴らしく、

それを沢山盛り込んだのは秀逸ですが、

初めて作ったシミュレーションということもあり、

まだまだ荒削りでシステムを見直す必要のある点が多分に見受けられます。

戦闘システムはかなり不自由ですが、

ユーザーの声をしっかりと聞き、改善すれば

かなり優れたシステムになるのではないでしょうか。

 

シナリオは青臭いものの、勢いでなぎ倒していくタイプで、よく出来ていました。

これぞワイルドアームズというシナリオでしたね。

かなり荒いところもあるゲームですが、

とても楽しくプレイできるゲームです。

SRPGは初めてでここまで作れたのならば、大したものだと思います。

ワイルドアームズの外伝にあたる本作ですが、

次回のシミュレーションも期待したい出来でしたね。




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