アルトネリコ

世界の終わりで詩い続ける少女

 

一言レビュー

RPGとアドベンチャー要素が見事に融合

 

グラフィック 7点
シナリオ 8点
ボリューム 8点
快適さ 6点
満足度 10点
総プレイ時間 85時間
総合評価 83点

 

 

塔「アルトネリコ」とその周りに浮遊している

「ホルスの翼」と呼ばれる大地のみが

人の生きることのできる世界で、

詩(魔法のようなもの)を奏でることの出来る「レーヴァテイル」が共存する、

特殊な世界観のRPGです。

 

このゲームは、詩というモチーフとヒロイン達である

レーヴァテイルの風変わりな設定を上手に使い、

特殊なシステムを幾重にも組み上げた、

一種独特の魅力を持っています。

 

特殊すぎる世界観は緻密で複雑に作られているのに、

こちらをおいてけぼりにせず、

プレイヤーを丁寧に世界の中に誘う手法は見事です。

説明しきれていないところも一杯あるにはあるのですが、

よくここまで上手に説明したものだな、と感心しました。

 

ストーリーはとっぴなものはありませんが、

主人公の成長の物語と、過去に犯された罪と向かい合い、

絆を深めて行くというのがテーマに掲げられており、

途中こちらにも考えるものがありました。

 

ただ、その魅力のあるストーリーが

終盤でやや失速気味なところがあったのがいささか残念ですが、

全体的に上手く纏められており、及第点以上のレベルではあります。

エンディング近くが余り語られないため、

説明不足だと思う所もありましたが。

 

 

戦闘は一見独特なスタイルを持っているように見えますが、

システムを理解すれば実にシンプルに出来ています。

ヒロインであるレーヴァテイルを守りつつ、

彼女達に詩を歌ってもらい、

前衛メンバーが敵を攻撃することにより

ハーモニクスゲージを上昇させ、

ヒロインの詩のパワーを上昇させていくというのが基本スタイルです。

 

ヒロインが詩魔法を放つとハーモクリスタルというものが

追加され、前衛が攻撃をすることによりその

ハーモクリスタルが点灯します。

ハーモクリスタルは3つまで追加可能で、

点灯している数が多いほど、戦闘終了後に得られるアイテムが増えます。

 

今作はグラスメルクという、アイテムを創作するシステムがあるのですが、

この戦闘後に貰えるアイテムがグラスメルクの材料になるため、

ハーモクリスタルを出来るだけ点灯させて

戦闘を終了するほうが良い訳です。

 

しかし、前述で述べましたように

システムを理解すれば単純な作りになっているため、

戦闘の作業化はありました。

色々とシステムを盛り込んだ割には、

目新しいのは最初の数時間ぐらいでしょうか。

ただ、何か新たなシステムが使えるようになる毎に

チュートリニアルが丁寧に入り、

説明書を見なくても楽しくプレイできるようになっているのは良いですね。

 

 

このアルトネリコの魅力の真髄は、これから述べる

独特なシステムにあります。

 

まずグラスメルクです。

レシピカードと言うものを入手し、

(購入、あるいはダンジョンの宝箱等に入っている)

自分の持っているアイテムをそのレシピカード通りに組み合わせ、

新たなアイテムを生み出していくという、

ガストの看板シリーズ「アトリエ」を思わせる

システムなのですが、これが単純ながら実に楽しい。

 

ただアイテムを作って終わりというわけではなく、

作った時の主人公の感想とヒロイン達の会話が実に面白い。

アイテム一つ一つにヒロイン毎の会話があり、

その会話が実に良くできています。

ヒロインの性格を的確に映し出した洒脱な会話は必聴であり、

新たなアイテムを作るのが楽しくて仕方がなかったですね。

 

製作するのにアイテムが足りなくても、

材料のアイテムのレシピカードさえ持っていれば

遡ってアイテムを作れるのも、

ストレスなくグラスメルクを出来る秘訣のひとつでした。

 

 

次にダイブとトークマターです。

トークマターとは、ヒロイン達とのある特定の会話のことを言います。

ストーリーが進んだり、ある特定のアイテムを持っていたり、

街やダンジョンに落ちている光を拾ったりして宿に泊まると、

ヒロイン達との夜会話というものが発生します。

 

これが実にふんだんに用意されており、

ヒロイン毎に80〜90個ずつ存在します。

このトークマターを集めるのが実に楽しい。

ジャンルも色々で、これによりヒロイン達の持つ魅力が

実によく表現されています。

 

RPGのメインでのストーリーパートでは

主人公とヒロイン達の新密度を高めるのは難しいのですが、

この夜会話とダイブでほぼ完璧にその部分が補完されており、

何故ヒロインが、主人公が、相手のことを好きなのか、

よく分かるようになっています。

とにかくこのゲームはヒロイン達との会話が実に素晴らしい。

その分仲間たちとの会話というものが少ないのがやや残念ですが、

その辺を両立させるのはなかなか難しかったのだろうな、とも思います。

 

ダイブというものですが、

ヒロイン達レーヴァテイルは内的世界である

「コスモスフィア」というものを持っており、

ダイブ屋でヒロイン達のその内的世界にもぐりこみ、

各レベルでヒロイン達が抱えている問題を解決していくことにより、

ヒロインと一緒に新たな詩(魔法)を紡ぎ、

パラダイムシフトといわれる、

次のレベルの世界へ進める現象を起こすことが目的です。

 

無制限にヒロイン達のコスモスフィアに潜れるのではなく、

ここで前述のトークマターという設定がさらに生きてきます。

トークマターを集めてヒロイン達との信頼度をUPさせて、

初めて次のレベルに進めるようになっており、

このダイブとトークマターは密接な繋がりを持っています。

 

要するに、ダイブもトークマターもアドベンチャー要素が強いものであり、

RPGではどうしても語り尽くせない主人公とヒロインとの

恋愛模様を丁寧に描くのに一役買っているというわけです。

このRPGとアドベンチャーを上手に組み合わせたシステムは見事です。

このあたりにプレイヤーを魅了する要素が

ふんだんにちりばめられています。

 

 

次に色々なシステムです。

基本的なシステムですが、やや悪め。

システムメニューを開くと、各システムがスライドするのですが、

これがよく引っかかるように開くのが気持ち悪いです。

そしてキャラクターを切り替えるごとに

キャラクターグラフィックの読み込みが入るため、

やはりここでも動きが悪いですね。

 

マップのロードはやや長めぐらいなのですが、

一度に表示されるダンジョンマップがかなり狭いため、

頻繁にロードが入り、ストレスを感じます。

戦闘を始めると、ヒロイン達の衣装の読み込みが入り、

また、詩を放ったり、敵・味方が特殊な攻撃をしたりするたびに

短時間のフリーズが頻繁に起こるため、

戦闘のテンポも悪くなっています。

ある一定以上のレベルはあり、

我慢できるラインはクリアしているのですが、

読み込みに関しては次回作の課題かと思います。

 

 

 

グラフィックですが、ゲーム中で使われている

CG・立ち絵ともに綺麗ですね。

このゲームのイラストはふんわりとしたイメージがあるのですが、

絵師さんの持つその魅力が十二分に発揮されています。

 

実際の絵師さんの絵と見比べても、全く遜色のないレベル。

そのあたり問題はない…のですが、

戦闘中に使われている魔法のムービーが実に汚いです。

はっきり言うと、初期のPSレベル。

魔法のムービーが入ることにより、戦闘のテンポも悪くなりますし、

あれならば、エフェクトのみにしてくれたほうが良かったですね。

いまどきPSレベルのムービーを見せられると興醒めするものがあります。

 

 

作中で使われている曲ですが、これが実に良いです。

ゲーム中で使われているボーカル曲で

ここまでレベルの高いものを聞かせていただいたのは久しぶりですね。

特に秀逸なのがクレアの歌う「そよかぜのうた」

透き通って豊かな声が、低音域から一気に高音域に駆け上っても、

声量が細らず、声がぶれることもなく、

微動だにしない美しいソプラノの歌声が豊かに伸びてゆく様は非常に美しい。

圧倒的な歌唱力とボーカリストとしてのレベルの違いに

感動すら覚えました。

 

他にもヒロイン毎に何曲か詩があるのですが、

どれもレベルが高く、詩をモチーフにしているだけあり、

曲に非常に力を入れているのが、音楽がさっぱりな私でも分かりました。

特にボーカル曲のレベルが歴然としていますね。

 

 

プレイ時間は、二人のヒロインルートどちらもプレイし、

全ヒロイン、全エンディング、全トークマターを制覇しています。

最初のヒロイン分岐がストーリーの半ばぐらいで入るので

私のプレイ時間はかなり長いです。

ストーリーのみ追いかけていけば30時間前後、

普通にプレイすると40〜50時間、

三人のヒロインを丁寧に攻略すると70時間以上ぐらいでしょうか。

とにかくどこまでプレイするか?というところで

プレイ時間が全く違ってくるゲームです。

そういう意味ではやりこみ度の高いゲームでしょう。

 

作中に使われている台詞や衣装にえっちぃ部分があり、

この会話はそっち方面を狙っているはず!というものがあるため

誰にでも手放しで勧められる訳ではありませんが、

作品のレベルは、完全新作という点から見ると

非常に高い完成度を持っていると思います。

まだまだシステムが進化する余地は十分ありますので、

次回作がどれほどシステムを練りこんでくるか、期待したいですね。

 

アルトネリコは、アドベンチャーもRPGもプレイされる方には

イチオシなゲームです。


HOME    BACK

inserted by FC2 system