アルトネリコ2

世界に響く少女たちの創造詩

 

 

一言レビュー

アイデア自身は素晴らしいが、改良の余地が多分にあり

 

グラフィック 8点
シナリオ 8点
ボリューム 10点
快適さ 5点
満足度 9点
総プレイ時間 119時間
総合評価 79点

 

 

前作「アルトネリコ」と完全に世界観を共通している、

前作より数年後の違う塔のストーリーです。

 

不完全な製造途中の塔「メタ・ファルス」の周りに

リング状に浮かぶ狭い人造の大地「リム」、

メタ・ファルスのみの特殊な詩魔法サーバー「インフェル・ピラ」が空に浮かぶ、

人間が住むことも危ぶまれつつある塔の世界。

年を追うごとに大地は崩落し、本来は人が暮らすことを考えられていない大地に

へばりつくようにして生活する人々は

新たな肥沃の大地を創造する「メタファリカ伝説」を

必死で実現しようと願い続けているという、

実に終末観が溢れている特殊な世界のRPGです。

 

独特の世界観はとにかく魅力的。

ヒロインであり、詩姫であるレーヴァテイルと騎士の関係、

狭い塔の周りに懸命に生きている人間達。

設定が事細かに煮詰められており、

世界観の深さはとにかく見事です。

ですが、ゲーム内でその世界観の全てを語りきっていないのは非常に残念です。

特にフレリア関係で、ほぼ皆無と言ってもいいほどなのは問題だと思います。

彼女たちやこの世界のことをもっと知ろうとすると、

ファンブックの類が必須というのはちょっと…。

世界観や設定をゲーム内で語ろうとする努力を

今後是非ともしていただきたい作品です。

 

今回はヒロイン達の心の絆をメインに描かれていますが、これがちょっと濃いです。

普通に話したりするだけでは心の絆が深まりようも無く、

互いの本音を全部曝け出して女と女のバトルを繰り広げます。

自分達が歩んできた道を相手に体験させることにより、

より深く互いを知り、相手を理解していくのですが、

二人のヒロイン達の過去はとにかく壮絶。

華やかな生活を送り、御子として人々に敬われているクローシェと、

貧困の中にありながらも皆に可愛がられ、沢山の人達に囲まれているルカ。

互いに相手を羨んでいた訳ですが、その裏側に潜む深い闇を経験していく内に、

互いを知り、仲を深めていくというストーリーは引く方が多いようです。

ですがこれにより、人間味を持つヒロイン達は異彩を放っています。

彼女達が思う本音は、私には誰もが思うレベルで普通だと思うのですが…。

 

 

戦闘はかなり独特なスタイルを持っています。

全てを把握するには終盤までかかるのが普通で、

中には最後まで分からなかった人もいるのではないでしょうか。

必殺技の条件や、合体魔法の出し方など、

とても条件が厳しいわりにはチュートリニアルが不完全で、

全てのシステムを理解し、使いこなすには攻略本と攻略サイトが絶対必要と、

非常にシビアな戦闘システムです。

 

特に不親切なのが合体魔法ですね。

まず普通にプレイしていたのでは分かりません。

今回は詩姫が二人で同時にひとつの詩を謳い、

彼女達がシンクロして、なおかつ合体魔法へ進化する詩魔法を

唱えている事が条件なわけですが、

特殊な条件が幾重にも必要な割には詳しい説明も無く、

また攻撃方法が3種類ある割にはどれがどうなるのかよく分からないと、

システムは実に分かりづらいです。

右下のゲージの説明もかなり不足しており、

何がどれを意味しているのか最後まで分からない方が大勢いたと思います。

レプレキアはゲームバランスを崩すほど強力なのですが、

それはある程度の人数が揃った時の話。

人数が揃わなければ通常の詩魔法の方が強いため、

使わなかった人が多かったのではないでしょうか。

 

戦闘は色々なシステムを盛り込んでいるにもかかわらず、

かなり説明不足であり、この辺は非常に残念だと思います。

この戦闘システムの魅力を理解できた人は少ないでしょう。

とてももったいないですね。

噛めば噛むほど味がでるシステムですが、

それを分かる人がどれほどいたことか。

 

戦闘中は前衛が2人、詩姫が後衛に二人というシステムなのですが、

今回、敵は基本的に詩姫のみを攻撃の対象に狙ってきます。

彼女達に攻撃が届かないように前衛が彼女達の代わりに防御をするのですが、

バーに現れる赤いライン(複数あり)のところでボタンを押すと、

丁度良いタイミングだと前衛も後衛もHPが減ることも無く、

少しタイミングがずれると前衛がちょっとだけダメージを受け、

かなり外れると前衛も後衛もダメージを受けます。

これが俗に言うタタコンに近いらしいのですが、

これにより戦闘中は実に忙しいです。

目押しが必要であり、アクション要素を含んでいるために、

戦闘にメリハリがあり、私には楽しかったのですが、

従来のコマンド決定式が好きな人にはちょっと向かないシステムですね。

 

 

次にグラスメルクです。

今回はこれがかなり改悪されています。

レシピカードを入手し、自分の持っているアイテムを

そのレシピカード通りに組み合わせ、

新たなアイテムを生み出していくという、

前作から続投のシステムなのですが、これがかなり不自由です。

 

レシピカードを手に入れるためには

ショップイベントというものを起こさなければならないのですが、

このショップイベントがとにかく膨大です。

全ショップで100を軽く超えるイベントは圧巻。

(中には会話だけのものも沢山ある)

ストーリーが進むたびにショップイベントが増えるのですが、

これを消化するためにショップを出たり入ったりしなければなりません。

しかもショップイベントを起こすには特定のヒロインが必要であり、

今作はヒロイン達にかなり長期間のパーティアウトが頻繁にあるために、

ショップイベントが進められず、

またこのショップがワールドマップのかなり広域に散在しているので、

ワールドマップ中行ったり来たりを

相当繰り返さなければならないという、とにかく面倒なシステムです。

 

しかも今回は主人公ではなく、ヒロイン達が作るという設定で、

ヒロイン毎に同じレシピでも作れるものが違うために、

ヒロイン達がパーティーから抜けていると物を作れず、

またショップごとに作れるアイテムが違っていて、

他ショップでは作れないと、とにかく三重苦。

あるアイテムを作るには他ショップで作るアイテムが必要なことが頻繁にあるのに、

このシステムの改悪は正直いただけません。

前回のように主人公が作り、なおかつセーブポイントがあるところなら

何処でも作れるというシステムが良かったと思います。

ヒロイン毎にアイテムを作る時のコメントが違うというのは良く、

店主との掛け合いは面白いです。

(この会話が結構長い)

目の付け所は決して悪くは無いのですが、

もうちょっとプレイヤーのことを考えてほしかったですね。

 

 

次にダイブとトークマターです。

この辺は前作をかなり忠実に踏襲しており、

ヒロイン達とある特定の会話をすることにより信頼を深めていき、

ヒロイン達の内世界にダイブして絆を結び、二人で一緒に詩魔法をつむぎ、

彼女達の抱えるトラウマや悩みを解決していくというスタイルは続投。

 

今回はヒロイン達が話す風呂会話というものが追加されており、

彼女達がおしゃべりする内容は多岐に渡っていてかなり楽しかったです。

前作であった仲間の会話の無さがここでかなり改良してあります。

ただしヒロイン達のみですが。

他の前衛パーティーとの会話も作って欲しかったですね。

ただ、ランダム要素が絡む風呂会話が多すぎるような気がしました。

このランダム要素のために、その風呂会話を聞くのに

何度もお風呂に入らせなければならず、

条件は満たしているのにイベントが起きないのはかなりストレスが溜まりました。

ランダム要素は止めるか、もうちょっと高確率で起こして欲しかったですね。

 

また、ヒロイン達がレベルアップするにはお風呂に入らせ、

手に入れられるアイテム「デュアリノス結晶」を

お風呂の中に入れなければなりません。

この結晶はヒロイン達のパラメーター等を強化する役割もあるのですが、

戦闘システムとしては必須であるにもかかわらず、

これもまた説明不足だと思います。

またデュアリノス結晶を入れても必ずしも効果が現れるわけではなく、

ヒロイン達がデュアリノス結晶の上を通過した時のみ

パラメーターが強化されるわけなのですが、

ヒロイン達のお風呂での動きがランダムすぎて、

なかなか思い通りにカスタム出来ないのがとても不自由です。

 

後はダイバーズセラピとムスメパワードなのですが、

これは暴走中のレーヴァテイルと戦闘をして捕まえ、

ダイブして精神の治療を行い、彼女達の力を借りて

各キャラクター達を強化していくというシステム。

彼女達の出現地点がランダムなキャラクターが結構おり、

また100人全員を捕まえるのは至難の業です。

の割には精神の治療方法はかなり単純で、あまり面白みもありません。

ムスメパワードも説明があまり無く、

とにかく分かり辛いシステム。

これを活用することにより戦闘の難易度が変わるわけなのですが、

理解できた人はあまり多くないのではないでしょうか。

 

次に色々なシステムです。

基本的なシステムですが、今回はローディングがかなり改良されていますね。

ただし戦闘中に処理落ちしているのが見受けられるのは気になりました。

今回はタイミングよくボタンを押して防御しなければならないのに、

処理落ちしているためにボタンを押すタイミングが掴みにくく、

こういうシステムを採用している場合は

戦闘中の処理落ちは勘弁して欲しかったです。

 

マップのロードは普通ぐらいなのですが、

一度に表示されるダンジョンマップがかなり狭いため、

頻繁にロードが入り、ややストレスを感じます。

ただし合格ラインは守っているあたり、好感が持てますね。

 

後今回は声の吹込みがかなり少ないような気がします。

ごく限られた重要イベントのみ声が付いているのですが、

前回はヒロインとの会話・ダイブ中の会話は全部声ありで、

イベント中にも結構声が入っていたのですが、今回は激減。

この辺は非常に残念でした。

実力派の声優をかなり起用しているのですが、

もうちょっと声を入れて欲しかったですね。

 

 

グラフィックですが、ゲーム中で使われている

CG・立ち絵ともに綺麗ですね。

前回同様、ふんわりとしたやや独特のイメージがあり、

最近の萌を意識した絵とは一線を画したイラストですが、

絵師さんの持つその魅力が十二分に生かされています。

 

実際の絵師さんのイラストと立ち絵を見比べても、全く遜色のないレベル。

ただ、立ち絵の種類と表情がちょっと少なすぎるような気がしますね。

チビキャラのモーションも少ないのがいささか残念です。

 

今回はふんだんにアニメーションを多用しており、

アニメーションも動きがなめらかで綺麗です。

アニメーション中の3Dのグラフィックは実に美麗。

ただしキャラクターのイメージが

かなり変わっている者もいるのはちょっと気にかかりました。

 

 

作中で使われている曲ですが、これがとても良いです。

ゲーム中で使われているボーカル曲(しかも複数でかなりの量)で

ここまでレベルの高いものは殆ど無いでしょう。

ゲーム音楽としてはトップクラスです。

特殊な詩が多く、何を謳っているのか分からないものもあるのですが、

要所要所で挿入されるボーカル曲はとにかく素晴らしい。

曲が入るタイミングといい、ムービーのシンクロ率といい、

とにかく物凄く気を使って繊細に微調整をしているのが伺えます。

 

 

プレイ時間は、二人のヒロインルートどちらもプレイし、

全ヒロイン、全エンディングを制覇しています。

トークマターは一部取りこぼしがあります。

最初のヒロイン分岐がストーリーのかなり前半で入るので

私のプレイ時間は大分長く、119時間です。

ストーリーのみ追いかけていけば30時間前後、

普通にプレイすると40〜50時間、

色々な要素を楽しむと70〜90時間。

三人のヒロインを丁寧に攻略すると100時間以上ぐらいでしょうか。

とにかくどこまでプレイするか?という点で

プレイ時間が全く違ってくるゲームです。

そういう意味ではやりこみ度の高いゲームでしょう。

 

今回はシステムに色々盛り込んでいる割には空回り、

あるイベントを起こすためにはあっちもこっちも回って

色々なイベントを起こして回らなければならず、

これがかなり多岐にわたり、

戦闘システムも沢山の要素を入れた割に、チュートリニアルは少なくて説明不足。

魅力は十分にある割にはその魅力を理解してもらえる人が少ないと、

実にもったいないシステムでした。

とにかく負のスパイラルの連鎖があちこちで起こっており、

それが繋がってしまっているのは問題です。

丹念に攻略本や攻略サイトを見、

システムを理解した者のみが分かる面白さ、

面倒でもそれが耐えられる人のみ限定の魅力というのは、残念ですね。

致命的とも言えると思います。

 

私は丁寧にそれらのものを熟読し、システムをほぼ全て理解し、

イベントの殆どを起こしましたのでとても楽しめました。

そのため点数はかなり甘めですが、面倒ごとは大嫌い、

あまり複雑すぎるゲームはダメ、と言う人には向きません。

ただし、これを乗り越えられる人にはとても楽しめるゲームだと思います。

これほど多彩なアイデアを盛り込めることに素直に感心しました。



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