アルトネリコ3

世界終焉の引鉄は少女の詩が弾く

 

 

一言レビュー

開き直ってバンバン脱がそう!

 

グラフィック 5点
シナリオ 7点
ボリューム 9点
快適さ 7点
システム 6点
満足度 9点
総プレイ時間 105時間
総合評価 76点

 

 

前作「アルトネリコ」と完全に世界観を共通している、

前作より数年後の違う塔のストーリーです。

人間よりβ純血種レーヴァテイルが上位として存在しており、

繁栄していたころの科学力を今なお色濃く残している、

人間を支配する塔ハーヴェスターシャ。

人間たちが不要である、と思えば容赦なくクレンジングという

血の粛清を行っているレーヴァテイルの国クラスタニアと

それに影ながらも反抗しつつも、

圧倒的な武力差に膝を折らねばならない人間たちと、

表向きはあくまでも中立を掲げる巨大企業アルキア研究所という

三竦みの勢力が居る世界です。

 

蒼谷の郷で鳶職の少年が、クラスタニアのレーヴァテイルたちに

追いかけられている少女、サキを助けるというところから始まる、

まさにボーイミーツガールなストーリー。

サキとフィンネルという、この世界で重要な責務を担うがゆえに

短命を余儀なくされた少女たちの延命に奔走するうちに、

滅び行く星アルシエルを救う、という特殊な世界観を生かしたRPGです。

前作、前々作と完全にストーリーがつながっており、

時系列に発売されておりまして、

各ゲームがバトンを渡すようにキーアイテムやキーキャラクターが

次回作に出てきますので、これ単体からいきなりプレイするのではなく、

1から順にプレイするのがお勧めです。

三部作であり、総まとめとなる今作ですが、

アルシエルを救うという至上の命題に決着がつけられているものの、

三作かけて作ったわりにはやや尻すぼみというか、

スケールの大きさが感じられず、小ぢんまりしてしまっているのが非常に残念です。

もうちょっとこう、最後の今作では派手目な演出や、

大風呂敷を見事にたたみあげる壮大さを感じさせて欲しかったですね。

 

ただ、今回もヒロインであり、歌姫であるレーヴァテイルの謳う

見事なヒュムノスが非常に素晴らしいです。

世界観をあらわすヒュムノスの独特の言語と美しい旋律、

世界観にマッチした詩と、まさにこのゲームの魅力を

最大限に表現していると言っても過言はありません。

 

今回はヒロイン達の多重人格を全面的に押し出しており、

パーティメンバーは見かけ以上に多く、実に賑々しくなっております。

ヒロインたちが他の人格に変わると容姿や衣装、

性格もがらりと変わり、まさに別人です。

4人の人格をそれぞれ演じきった

二人の声優さんの見事な演技力はまさに脱帽です。

 

 

戦闘は劣化テイルズという残念な出来。

アクションRPGに変更になっているのですが、

戦略もなにもなく、前衛が敵の注意をこちらにひきつけて

ただひたすらに○ボタンを押し続けるだけ。

そうして謳うヒロインを守りつつ、

ある程度ヒロインが謳い続けて詩魔法で敵をオーバーキル

というのが一定のパターンと化しており、

とにかく技術関連はおいといてボタン連打でOKになってしまっております。

音ゲーの要素も含んでおり、下に表示されるハーモグラフィで

赤い部分のところでタイミングよく攻撃し続けると

ヒロインの詩魔法が早く進化しますが、

あまり意識しなくともとにかく連打し続ければよいという

シンプルさ加減が非常に残念です。

技もあるにはあるのですが、4つの技+必殺技しかありませんし、

技を使うにはHPを消費しますので、

技の連発もおいそれと出来ません。

そして、前衛は前座であり、実はヒロインたちの詩魔法発動のための

時間稼ぎに過ぎませんので、そんなに頑張って攻撃することもなく、

その辺は何か物足りなさを感じます。

味方への作戦指示もできず、各キャラクターが勝手に動き回るので、

戦略も組み立てられません。

 

さて、今回はヒロインにどの詩を謡うかの指示が出来ません。

ですので、急にHPを回復したくても、アイテムに頼るしかなくなっています。

HPの回復はアイテムオンリーなのかというとそうではなく、

ヒロインの詩魔法が大きくなるごとにちょっとずつ回復していきます。

回復量UPや攻撃力UP等の追加効果は

ヒロインに組み込むヒューマである程度コントロールできますが、

もう少し明確な詩魔法が欲しかったですね。

 

そして、今作の最大のポイントであり、

変態チック大爆発のシステムがパージシステムと前衛の必殺技となっています。

前衛たちも必殺技のときは脱いで下着姿になり、

アニメーション+3Dポリゴンのムービーというコンボとなっております。

そしてその更に斜め上に行くのが、ヒロインたちのパージです。

Purge readyのアイコンが出たらコントローラーを振ってパージするのですが、

パージ=ヒロインの服を脱がすという

フロンティアスピリッツ溢れるシステムとなっております。

これが人を選ぶ最大のポイントであり、

一枚、二枚と脱いでゆき、最後には下着姿になるヒロインのゲームを

家族の前で出来るか否か、というのが最大のウィークポイントでしょうか。

パージムービーが出ないようにも出来ますが、

ヒロインたちが脱いでいるのは明白ですので、

家族の前ではかなりやりにくいゲームでしょう。

では脱がさなければいいではないかと思われるのでしょうが、

脱いでくれないと詩魔法の攻撃力が著しく低いので、

否が応にも脱がす必要性があります。

そして、ポリゴンの出来はあまり良くないものの、

パージムービーだけは妙に根性の入った出来が

恥ずかしさに拍車をかけてくれます。

4段階目までパージをするとフィリップスフィアという

詩魔法のいわゆる必殺技が発動するのですが、

この詩魔法の攻撃力はムービー中に表示される波形にタイミングを合わせて

ボタンを押すのに左右されるというまさに音ゲーのシステムです。

さほど難しくは無いのですが、種類も余りありませんし、

変化も無いのでもうちょっと一工夫が欲しかったですね。

 

 

次にグラスメルクです。

今回は一作目のシステムに改良を加えたタイプになっています。

レシピカードを入手し、自分の持っているアイテムを

そのレシピカード通りに組み合わせ、

新たなアイテムを生み出していくという、

一作目から続投のシステムなのですが、今回はヒロインだけではなく、

他のキャラクターたちも加わって

わいわいと会話を盛り上げてくれるのが良いですね。

アイテムを作っていて楽しく会話を眺めていられました。

レシピも宝箱等から手に入れられるようになっていますし、

各キャラクターの長期パーティアウトはほぼなくなっていますので、

とあるキャラクターが居ないのでアイテムを作れない、

ということもほとんどありません。

宿屋だけでなく、セーブサークルでもグラスメルクが出来るように

戻されていますので、この辺は快適になっていますね。

 

 

次にダイブとトークマターです。

この辺は前作、前々作をかなり忠実に踏襲しており、

ヒロイン達とある特定の会話をすることにより信頼を深めていき、

ヒロイン達の内世界にダイブして絆を結び、二人で一緒に詩魔法をつむぎ、

彼女達の抱えるトラウマや悩みを解決していくというスタイルは続投。

今回はヒロインたちの多重人格という部分と

ヒロインたちの重要な設定を上手に絡めており、

ストーリーにうまくシンクロしていて非常に良く出来てはいるものの、

パージシステムと同じくかなり癖があります。

よく言えば「独創的」ずばり言えば「変態チック」になっておりまして、

露出度が高く、ギャルゲーっぽいところが多分にありますので、

独特の世界観が面白くはあるのですが、

この辺もプレイする人を選びます。

 

 

 

次に色々なシステムです。

基本的なシステムですが、今回もローディングが改良されていますね。

インストールが強制なので処理落ちもほぼなく、快適です。

一度に表示されるダンジョンマップも広くなっており、

マップ移動のロードが減ったこともその原因のひとつでしょう。

また、マルチエンディングを採用しているのですが、

フェイズごとに再プレイできるようにしてあるのは便利でした。

 

セーブがシステムデータも一緒にセーブしているため長いのが難点です。

あとはパージのときにコントローラーを振る必要があるのですが、

この「振る」という動作の反応が鈍く、強くコントローラーを振らなければ

認識しないのが腕に結構きました。

ボタン同時押しぐらいの動作にして欲しかったですね。

気になったのはそのぐらいでしょうか。

 

 

グラフィックですが、ゲーム中で使われている

立ち絵に独特の魅力があります。

前回同様、ふんわりとしたくすんだ色合いのイメージがあり、

最近の萌を意識した絵とはまったく違うイラストですが、

絵師さんの持つその魅力が十二分に伝わってきます。

実際の絵師さんのイラストと立ち絵を見比べても、全く遜色のないレベル。

 

ただし、最大の難点であるのが3Dポリゴンで、

お世辞にも良い出来とはいえません。

前述のとおりパージムービーでのカメラワークや仕草は

妙に根性の入ったえっちい出来になっていますが、

普段での3Dポリゴンははっきり行ってPS2初期レベルです。

それも表情豊かかと思えばそうではなく、ほぼ無表情なのが不気味です。

今までは2Dキャラだったので、詩を歌うシーンでは

ここぞという場面はアニメーションで表現されていたのですが、

そのここぞという場面でも半分はその出来の悪いポリゴンに

動作をさせて口パクで歌わせているために

感動要素は激減してしまっている気がしました。

詩とポリゴンのモーションがちぐはぐで

詩の魅力が激減してしまっています。

 

 

プレイ時間は、三人のヒロインルートを全部プレイし、

全ヒロイン、全エンディング、全トークマター、全アイテム会話を制覇しています。

パージムービーのみ一部抜けがあります。

 

今回は戦闘システムが退化、

パージムービーというとんでもないシステムが追加と

色々とすごい事になっています。

ストーリーも、都合よく転がりすぎていると思うところがかなりあり、

こじんまりした総まとめ編となっていて

手放しでほめられないところも残念です。

戦闘も楽しかったかというと首をかしげるところがあり、

パージムービーにしても、やり過ぎてしまっているところがあって、

とにかく玄人向けで、非常にプレイする人と環境を選ぶ作品ですね。

私は楽しめたわけですが、誰にでも進められる作品ではありません。

また、非常に残念なのがポリゴンの出来。

PS3では最低レベルではないでしょうか。

 

プレイし終わって、久しぶりに寂しくなった作品です。

非常に濃いところが詰まった独特の魅力がありますね。

なんだかんだと駄目な所もビシビシ指摘していますが、

楽しくプレイしていたのも確かです。

今までのシリーズ中最高にぶっ飛んだゲームでした。




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