あやかしびと

−幻妖異聞録−

一言レビュー
バトルシーンが熱い燃えゲー

グラフィック   9点
シナリオ    10点
ボリューム    7点
快適さ     10点
満足度     10点
総プレイ時間 40時間
総合評価    96点

 ストーリー


第二次世界大戦後に現れるようになった奇病
「後天的全身性特殊遺伝多種変性症」
略語で「アシェス」、あるいは「人妖病」
人ではありえない力を持ち、
かつて日本の昔話に語り継がれる
妖怪の様な力を持つ者たちは蔑称として「人妖」と呼ばれ、
人から激しく差別されていた。
危険度の最も高い能力を持つ者
いわゆる第参種はとある孤島へ強制的に隔離され、
能力を発現することを抑制する薬を定期的に打たれる。
そして、ある特殊な例外を除いてそこから一生出ることは許されない。

物心ついてすぐ第参種に認定された武部涼一は、
友達と友達の恋人をかばって、
病院の医院長にその息子の悪行を垂れこみ、
医院長の息子は厳しく叱責されてしまった。
その腹いせに、彼らに深夜外へと連れ出されて袋叩きにされてしまう。
これで反撃してしまえば事が大きくなってしまうとじっと我慢していたのだが、
森から現れた仲良くしていた狐が
涼一をかばうかのように彼らの腕に噛みつき、
それに怒り狂った彼らに狐が木に叩きつけられたことに
かっとなって圧倒的な力で彼らを叩きのめしてしまった。

かくして、その事件のせいで体内5カ所に
爆弾を埋め込まれることになった。
腕に一つ埋め込まれたところで強力な麻酔から目覚め、
手術室から逃げ出したものの、森でとうとう警備員に追いつかれたが、
この病院生活で唯一のよすがと思っていた
小さな狐に寸でのところで助けられる。
単なる狐だと思っていたが本当は妖狐で、
人に化けることもでき、強力な「言霊」という力を操る
すずという少女に助けられ、
手に手を取って二人で孤島「琥森島」を逃げだし、
人妖が唯一普通に生きることが許された「神沢市」へ流れ着いた。

ずっと夢見ていた人並みの生活。
一度でいいから行ってみたいと思っていた学校。
それを噛みしめるようにすずと共に生活を送っていたが、
もちろん脱走した第参種人妖が放っておかれるわけがなく、
やがて追手の影が見え隠れしていた。

 シナリオ感想

という、幼いところから人扱いされておらず、
両親の顔ももはや忘れ、人と出会っては手厳しい別離を繰り返していた少年
武部涼一、名を変えて如月双七と、
家族同然に過ごしていた九尾の狐の娘すず、
そして通うことになった学校の
生徒会役員の人達と共に送る神沢市でのお話です。

序盤は主人公の悲惨な幼少期が語られ、
中盤ではヒロインやすずとのまったりとした生活が展開し、
終盤では自分たちを捕えに来た特殊な機関の者たちとの戦い、
という形でストーリーを追っていきます。

特殊な世界設定で、その設定を語るために
序盤はやや冗長になっているところがありますが、
中盤での中だるみしやすい日常生活もテンポよく語っていき、
なおかつ飽きさせずぐっと引き寄せるように所々にバトルシーンを差し挟み、
ヒロインルートごとに活躍する人物、
敵味方に分かれる人物を上手く、くるくると入れ替えて、
どのヒロインでも手に汗握るバトルシーンを熱く展開していくのは流石です。

そして意外と一番良かったのがPS2版で付け足されたヒロイン逢難ルートでした。
確かにヒロインの一人のルートから派生するという
あくまでもおまけ的に付け足されているのですが、
付け足しとは思えないほどの高水準で、
見事に元合った設定を再構成し、
びっくりするぐらい良いレベルで組み上げられているのは正直驚嘆しました。

とにかく底抜けに優しく、お人好しですぐ泣くのに、
ヒロインや仲間たちの為ならば血を吐くような思いで
歯を食いしばって頑張る主人公は、
非常に好感のもてる人物です。
そして意外なのが、主人公を食ってしまうほど素敵な脇役陣です。
敵役までも格好良く描かれています。
ヒロインや主人公も活躍していないわけではないのですが、
熱いバトルと見せ場を掻っ攫っていく脇の男性陣の異様な厚さが凄いですね。
しかも主人公とヒロイン置いてけぼり、というわけではなく、
さりとて脇役が陰になるのでもなく、
絶妙な活躍具合が非常に光るストーリーは脱帽ものです。
こういうタイプの燃えゲーが好きな方ならば見事にはまれるでしょう。

 快適さ

システムは非常に高水準でまとめられており、快適です。
スキップは高速、巻き戻し機能や履歴からのジャンプ、
クイックセーブ・クイックロード、自動クイックセーブ機能有り。
エンディング回想もあり、
ボイスハイライト、文字装飾、文字の表示速度やオートモードも
とても細かく微調整ありと全方向に隙のないタイプです。

唯一の難点が女性陣のボイスが大きめ、
男性陣の声がやや小さめに聞こえてしまうことですね。
どうしても女性の方が声のトーンが高く、
男性陣の方が低いので聞き取りづらくなってしまうのは仕方ないのですが、
キャラクターごとにボイスボリュームを微調整できたら素晴らしかった。
ですがそこまで望むとちょっと高望みかもしれません。
ヘッドフォンをしていれば実はこの難点も克服できますので、
ヘッドフォン推奨ですね。

 グラフィック

グラフィックですが、綺麗系ながらもシンプルよりの絵柄。
やや癖があるでしょうか。
CGは比較的安定しているものが多いのですが、
ヒロインの立ち絵の顔立ちに違和感のあるものがちらほらあったのが残念です。
CGは色の塗も丁寧で、バトルシーンでの動きのある絵や
カットインの絵もとても華があり、大胆な構図で良く描けています。
そして非常に意外なのが、実は女性陣のCGよりも
男性陣(主人公含む)のイラストが多いのではないかという、
普通のギャルゲーとは違うところに層の厚いCGですね。
しかし、このストーリーならばこの配分が良かったと思います。
塗も美しく、ほとんどのCGが高水準でまとまっています。
ただ、CGの閲覧が非常に見にくい。
時系列で並んでいるわけではなく、
さりとて人物別で並んでいるわけでもなく、
とにかくばらばらに並んでいるために
目当てのCGを探すのが大変です。
ヒロイン毎に並べるわけにもいかなかったのもわかりますが、
ここはもうちょっと何とかしてほしかったですね。

CGの枚数は差分抜きで160枚。
差分もたっぷりとあり、その内21枚がデフォルメ絵なものの、
ボリュームから見ると十分な枚数です。
特に問題ないと思います。

 プレイ時間&総評

プレイ時間は約40時間。
プレイ時間が表示されないタイプのため、正確な時間はわかりません。
全エンディングクリア、全CGを回収しています。

とにかく熱いバトルが素晴らしいゲーム。
しかも全キャラクターを上手に使っており、
どうしているのかわからない人物がいないのもいいですね。
日常生活とバトルシーンの配分の妙も良かったと思います。
ヒロインルートごとに敵味方がくるくると入れ替わって白熱のバトルを繰り広げます。
そして脇の男性陣の活躍が
主人公やヒロインを食ってしまうぐらいの素晴らしさです。
もちろん一番いいところはちゃんと主人公やヒロインが活躍しています。
悲しい終わり方をしているエンディングもありますが、
全ルート・全エンド高レベルで統一されているのは
見事としか言いようがありません。
燃えゲーが好きならば自信を持ってお勧めできるゲームです。




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