大図書館の羊飼い

 

Library Party

 

一言レビュー

弾けるような青春

 

グラフィック 8点
シナリオ 9点
ボリューム 9点
快適さ 9点
満足度 8点
総プレイ時間 58時間
総合評価 87点

 

 

 

学生数5万を誇るマンモス校の汐美学園は、

学園内に数十カ所のカフェを有し、

広大な敷地に点在する校舎を移動するための路面電車までも完備し、

最高の教師陣を揃えたハイレベルな高校だった。

そしてこの学校は、羊飼いの伝説がある。

様々な願いを叶えてくれる羊飼い。

羊飼いに助言をもらってその通り行動すれば、

したいこと、やりたいことが叶うという伝説が

まことしやかに囁かれ、信じられていた。

 

食事の時はもちろん、歩く時も本を手放さずに読書に勤しむ筧京太郎は、

とある理由で重度の読書中毒で、

そして未来予知という不思議な力をもっていた。

望んだ未来を指定して見ることは出来ないが、

良くない事、事故などは意図せずとも不意に見えることが多い。

 

そんなある日、『今日、あなたの運命を変える出来事があるでしょう。

 羊飼いより』というメールが送られてきたのに首を傾げていたところ、

路面電車の停留所で、ビラを配っている女の子が

路電に轢かれる予知を見てしまう。

咄嗟に駆け寄った京太郎は、「逃げるんだ。ここにいたら危ない」

と話しかけて腕を引いた。

怪しんで抵抗する女の子は、バランスを崩して京太郎もろとも道へ倒れてしまう。

もつれるように転んだせいで、右手が少女の胸を鷲掴みにしていた。

顔を真っ赤にした少女がその場から駆け出した後、

路電がちょうど少女がいたところで脱線していた。

少女が残していったビラには、『一緒に学園を楽しくしませんか?』

という文字が躍っていた。

 

事故を未来予知したことから京太郎が出会った白崎つぐみを中心に、

学園を楽しくするために働くいわゆるボランティアの部、

図書部での活動を軸に、図書部員との恋愛が描かれています。

 

 

とにかくありとあらゆる場面で読書に励み、

読書時間がたっぷりとれないとアレルギー反応を起こし、

限りなく交友関係が狭く浅いくせに、

八方美人で頼まれれば嫌と言えない京太郎は、

図書部の活動をこなしていくうちに、部の活動に充実感を感じていきます。

 

狭く、閉じられていた世界につぐみという要素が加わったことにより、

一人、二人と人が集まっていき、

依頼をこなしていくうちに、どんどん大きな依頼に発展し、

依頼が沢山舞い込むようになって活動が忙しくなるという、

輝くような青春と、これぞ高校生活という、

部活に楽しげに勤しむ様はびっくりするぐらい眩しいです。

ああ、自分も高校生の時代に、こういう生活がしたかったと羨ましくなってきますね。

 

その中で気になるあの子と親しくなって、という展開なのですが、

どの少女も抱え持つ悩みというものがあります。

それを二人で乗り越えつつ、恋人へと発展していくのですが、

単なる恋愛というだけでなく、

人を好きになる、人のためになる活動を行うというその二点から、

二人の考えや行動が変わっていくというのを

実に丁寧に描いています。

彼らが成長して行くのがとても自然であり、

人はこうも見事に変わっていけるのだ、という感嘆がそこにはあります。

 

深い感動がある、というわけではありませんが、

その変化の描き方、またちょっとファンタジックな

羊飼いというスパイスの活かし方が非常に上手い。

明るく、楽しい学園生活を楽しみたいのなら、うってつけな作品でしょう。

また、ファンディスク2本もひとまとめにして、

3作品を一つにしているためにとてもボリュームがあり、

色々と豪華で盛り沢山に出来ています。

ただ、主人公自体に鬱な設定があるのがちょっと注意ポイントでしょうか。

 

 

 

システムは随所に気を配った万能型です。

履歴からのジャンプあり、オートクイックセーブあり、

メッセージ速度もオートモード速度も細かく調整可能です。

未読、あるいは選択肢までのショートカットも便利でした。

VITAのオート時での光度制御もされており、

アドベンチャーで欲しいシステムは大体搭載されていると思います。

 

難点が、セーブデータが選択肢でセーブしているにもかかわらず、

選択肢の直前の画面とテキストでセーブされることですね。

そのため、選択肢のセーブがどれか非常にわかりづらいです。

また、オートモード中は基本的にキャンセルとページ送り以外は

コマンドを受け付けない仕様なのもちょっと使いにくかった。

システムを変更したり、セーブしたりするときはオートモードを

一々解除しなければならないのが面倒でした。

 

あとは、タッチがあまり生かされていない事でしょうか。

システム画面などで、十字キーだけでなく、

タッチ操作も可能だったら良かったと思います。

気になるのはそのぐらいで、それ以外はほぼ問題ないかと思います。

 

 

 

グラフィックは目の大きな可愛い系です。

ハンコ絵なのが気になりますが、

全体的に可愛らしく描かれています。

CGの時にちょっと表情が不安定なところはありますが、

色の塗りは非常に美麗で、艶のある華やかな美しさがあって綺麗ですね。

配色はとてもいいと思います。

また、立ち絵の配置も上手く、

豊富なテキスト入りのカットインの使い方も魅力的です。

 

CGの枚数は差分抜きで123枚。

こうして見てみると多く感じるものの、実際のプレイ中は

ボリュームに対してCGの枚数が物足りなく感じます。

殆どが立ち絵のみで進行しているようなイメージがありますね。

また、差分もとても少なめで、多数枚あるCGはちょっと珍しく、

大体が2~3枚ぐらいの差分になっています。

 

 

 

プレイ時間は約58時間程度。

時間が表示されないタイプで

正確な時間が分かりませんので約の時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

本編にファンディスク2本を加えた山盛り仕様。

メインヒロインとサブヒロインとのストーリーというルートの多さや、

本編後のアフターはもちろんの事、外伝的ストーリーや

小話のAppendix Storyも多数完備と、

とにかく随所にボリュームを感じます。

全体的なクオリティも高く、

非常に高レベルでまとまっている作品です。

ボリュームのある作品を探しているのでしたら、

是非ともお勧めしたいです。

高校生らしい、実に良い作品でした。


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