永遠のアセリア

−この大地の果てで−

 

一言感想

シミュレーションパートに中毒性アリ

 

グラフィック 4点
シナリオ 9点
ボリューム 10点
快適さ 1点
システム 9点
満足度 9点
総プレイ時間 154時間
総合評価 77点

 

 

悠人は幼い頃に父母と死に別れ、

父母の友人だった高峰夫妻に引き取られたが、

しかしまた、夫妻も早くに飛行機事故で亡くなった。

その飛行機事故で奇跡的に助かった高峰夫妻の実子、

香織と二人きり、子供達だけで支え合って暮らしてきたが、

日に日に強さを増す原因不明の痛みに苛まれる中、

突如真っ白な光に包まれて運ばれた先は異世界だった。

 

そこには二種類の種族がおり、一種類は人間。

そしてもう一種類は「スピリット」という、人にあらざる生命であり、

永遠神剣という意思ある剣と心を通じ合わせ、特殊な力を行使する、

戦争のためだけに生かされ、戦わされている特殊な種族だった。

 

異世界から召喚され、永遠神剣を操れる者を「エトランジェ」と呼び、

スピリットと同じく人として扱われず、

戦争を有利に進めるための道具とされる。

死に物狂いで反発する悠人を、無理やり戦場へ駆り立てようとする王族達が

目の前に突き出したのは、捕らえられた義妹香織だった。

 

自分のすべてより大事に思う香織のために異世界での戦争に身を投じ、

スピリットたちを殺すことに嫌悪と苦悩を覚えつつも、

スピリット隊の隊長として大陸の国を次々と制圧していくうちに、

オーバーテクノロジーとも思えるエーテル技術を持つ特殊なこの世界の謎に迫り、

破滅に向かいつつある世界を守る、という異世界召喚シミュレーションです。

 

ジャンルはどちらかというとアドベンチャーシミュレーションRPG。

ヒロインの好感度を高めていき、

最終的にヒロインが決まると中〜終盤で分岐するタイプですが、

基本的なストーリーは一本道であり、

エンディングやイベントの類が違うものの、

ごく一部を除いて攻略するマップとストーリーは同じです。

シミュレーションパート中でも

アドベンチャーパートがかなり丁寧に入り、

しかもそのイベントが結構長いため、

プレイする人にはアドベンチャーゲームの耐性も必要です。

その為、人を選ぶゲームではあります。

 

ストーリーは実に良いですね。

主人公の苦悩と異世界へ召喚された者の境遇、

そしてスピリットという特殊な種族の事がとても良く描かれています。

使われている言語が違うため、

互いの言っている事が分からず、ボディランゲージを交えつつ、

言葉を覚えるというところから異世界編は始まります。

この描写が丁寧で、鳥がさえずるような綺麗な韻を持つ「ヨト語」は

文法や名詞、動詞などが精密に作られており、

異世界へ来た、というのがすんなり実感できます。

 

各ヒロイン達のイベントも丁寧に入り、

アドベンチャーパートも手抜きなく、きっちりと書かれてはいるのですが、

この世界の根底の謎に位置するヒロイン達のことを

もうちょっと丁寧に描くべきだったと思います。

世界にとって重要な設定を持つヒロインが数名いるのですが、

さらっと言葉で流されるだけで、詳しく語られないため、

そのヒロインルートに進んでも「????」と思う部分があります。

この辺がちょっと残念でしたね。

あとは特に問題ないかと。

独特の魅力のある世界観でした。

 

 

グラフィックですが、かなり癖のある絵柄。

顔の輪郭、目に非常に癖のある絵がいくつか存在しており、

特筆すべきは立ち絵で、大変バランスが悪いヒロインが数名存在します。

具体的に言うと、頭を長く描きすぎているのですね。

額から上部分が異常に長い。

骸骨にすると頭上部が長い宇宙人タイプになると思います。

また、塗りが雑なヒロインの立ち絵もあり、

これはもうちょっと何とかならなかったのかな、と思います。

 

そしてCG自身もかなりばらつきのある絵です。

綺麗にバランス良く描かれている絵もあるのですが、

中にはかなり癖があり、人によって受け付けないものもあります。

また、CGによっては塗りに差があり、

はっきりと丁寧に塗られているのが殆どなのですが、

塗りの粗いものも存在していて、

顔立ちも絵毎に大きなばらつきがあるのも気になると、

CGによってレベルがかなり違ってきています。

複数の原画家が担当したせいだと思うのですが、

このため全体的なレベルはあまり高くありません。

一人だけ飛び抜けて上手い方がいるようなので、

その方に原画や立ち絵を全部担当して欲しかったですね。

 

枚数はシミュレーションの割には多く、差分抜きで115枚。

差分もそれなりの枚数がありますので、

全体数としては十分な枚数があります。

 

 

このゲームの最大の魅力である戦闘ですが、

オリジナリティのある特殊なシステム、

「ロール」システムを使用しています。

キャラクター=ユニットではなく、一つの部隊をユニットに使用しており、

部隊は基本的に3人で一つのユニットを組みます。

アタッカー・ディフェンダー・サポーターを一人ずつが担当し、

各部署のスキルをセットします。

このことを「ロール」と言い、

持ち場やスキルを変更することを「ロールを切り替える」と言います。

 

スキルはレベルを上げるごとに複数覚えていき、

最大それぞれ3つずつ(攻撃3つ、防御3つ、補助3つ)しか習得できず、

新しく覚えた場合、古いものを忘れて新しいものを上書きするか、

新しいものを破棄するかのどちらかになります。

 

戦闘は相手側のユニットと接触した時に自動で行われます。

戦闘中に使用するのはセットしたスキルで、

基本的には攻撃側の攻撃、迎撃側の防御、

迎撃側の攻撃、攻撃側の防御と進み、

補助(スキルによって入る場所に変化あり)がその間に入ります。

ちなみにこれは基本中の基本であり、

スキルによっては特殊な効果や順番、回数、

攻撃する人物の変化を持つものも多数存在しており、

また同じスキル名であってもキャラクターごとに

絶妙にバランスが調整されていて、

効果、使い勝手の類が全く違ってきているのが非常に面白い。

 

青スピリットはアタッカー、緑スピリットはディフェンダー、

赤スピリットはサポーターと、

スピリットごとに得意なロールが大体決まってきているのですが、

スキルはそれぞれ数回ずつと使用回数が少なく、

同じロールにばかり付いているとすぐに回数切れを起こします

また基本的にアタッカーとサポーターはマインドが減りやすく、

ディフェンダーはマインドが回復しやすくなっています。

スキルの殆どはマインドをある一定以上の高さに保っていなければ

半減か無効になってしまうので、こういう意味でも

不得意なロールに時々切り替えていかなければならないと、

高い戦略性を求められるのが実に面白いですね。

 

もうどうしてもクリアできない、と思っても、

ロールを切り替えたりぶつける部隊を変えるだけでクリアできたりと、

戦略性の高いゲームで、シミュレーションパートにかなりの中毒性があります。

一週目プレイ後にHardが、Hard終了後にSuper Hardが

プレイできるようになりますので、

シミュレーションパートに高難易度を求める方でも

満足できるレベルになっています。

 

純粋なシミュレーション部分も存在しており、

施設を建てて行く、というのが半ば必須になっています。

このゲームはエーテルがなければ何もできないという設定になっており、

街を制圧したり、敵スピリットを倒したりすると

「マナ」という純粋なエネルギーを得られます。

このマナをエーテルに変換して初めて色々なものに使用可能になっており、

キャラクターのレベルを上げるにも、

施設を建てるにもこのエーテルを使用します。

マナをエーテルに変えるのも、ある特定の施設の建設が必須になっています。

要するに、レベルを上げるのと必須施設を建てるのと、

どちらを優先するのか、またどのキャラクターを優先的に育て、

使わないキャラクターを早々に切り捨てていくか悩ましいところなのです。

この辺も実に面白い。

他にもこまごまとした設定があり、

絶妙なバランスの上で成り立っているシステムは素晴らしいですね。

 

 

基本システムはかなり悪い出来です。

まずロード関連ですが、セーブしてもとの画面に戻るのに

30〜40秒近くかかるのは大問題ですね。

セーブシステムを選ぶと、セーブデータとシステムデータのロードが入り、

セーブするとセーブ中のロードと

システムデータを一緒にセーブしますのでそちらのロード、

そしてセーブ完了後もセーブデータとシステムデータのロードが入ると、

ロードが実に複数回に渡り入るのでこれだけの超ロードになってしまっています。

システムデータのロードはセーブ時の1回だけにし、

またセーブ完了後にキャンセルする時の

ロードも無くして欲しかったと思います。

これならば、セーブ後にダイレクトに元の画面に戻って欲しかったぐらいですね。

これほどロードが入るにもかかわらず、

データはセーブした日時と、どの章かの表示のみで、

何をどうやったらこれほどのロード時間が必要なのか理解できません。

せめてどのMissionかと、どのヒロインルートへ進んでいるのか、

総プレイ時間ぐらいはセーブデータに最低限表示すべきでした。

 

また戦闘シミュレーションパートの基本システムも実に悪いです。

こっちは最悪の部類に入るかと思われます。

もともとWin版で使用されていたシステムを

無理矢理転用したと思われるシステムで、

マウスのように微妙な操作が出来ないPS2のコントローラーでは

不自由極まりないものになっています。

十字キーでは一気にカクカク動きますし、

PS2の左スティックではマウスのように上手に、なめらかに動かないため、

目的のものを通り過ぎてしまい、

ユニットを捕まえるのも、移動させるのも大変です。

R1などでユニットを捕まえることも可能ですが、

順送りにしか捕まえられず、また行動していないユニットのみ捕まえる、

というシステムがないため、結局は使いづらい左スティックで捕まえに行き、

移動は左スティックかカクカク動く十字キーのみと、

ユニットの移動に非常に労力のいる、

ストレスのかかるシステムでした。

 

そして戦闘時のレスポンスの悪さ。

一々行動を起こす前にキャラクターが台詞を言い、

敵キャラクターに攻撃を仕掛け、敵キャラクターが台詞を言い、

と実にテンポが悪いです。

戦闘時のモーションのキャンセルも出来ますが、

前述したようにシミュレーションパートが難しいゲームで、

きちんと戦闘を見ていなければ

スキルが実際どの程度の攻撃力・防御力等を持っており、

どのように有効なのか分からなくなりますので、

最初の一週目は飛ばさない方がよくなっています。

飛ばした場合も難点があり、キャンセル時にも15秒ほどのロードが入り、

キャラクターが倒された時、上部にあるユニットのステータスが暗転して

下へと下がるので誰が倒されたのか分かりますが、

相手のキャラクター、自分のキャラクターが

どれほどのダメージを受けたかの表示は皆無で、

全員を倒した場合のみユニットが画面から消えるぐらいなので、

一々敵・味方ユニットのステータスを見に行かなければならないのが非常に面倒と、

基本的なシステムは度外視・蔑ろにした結果の

成れの果て見本市になっております。

移植でここまで悪いのは初めて見ましたね。

基本的なシステムはゲームの要素としてかなり重要な位置を占めていますので、

もうちょっとこちらに労力を割く努力をするべきでした。

移植会社の姿勢を問いたいレベルなのはどうなのかと思います。

 

 

ストーリーとオリジナリティ溢れる戦闘システムが、

するめの様に噛めば噛むほど味が出るゲーム。

プレイ時間は、全ヒロイン制覇、全CGを回収して154時間。

通常のプレイでは一週50〜70時間ぐらいかかると思います。

ボリュームもたっぷりですね。

 

特に戦闘システムは秀逸で、中毒性があり、

シミュレーション好きな方は相当はまると思いますが、

ギャルゲーに見合わぬ高難易度ですので、なめてかかると痛い目にあいます。

そしてアドベンチャーパートがかなりありますので、こちらの耐性も必要です。

また、基本システムはWin版を強引にPS2版に転用した、

劣悪極まりないものですので、

このシステムの悪さにも耐えられる人でないといけないと、実に人を選ぶゲーム。

 

とにかく癖の強いゲームです。

気に入る人は相当はまると思うのですが、

受け付けない人は全く受け付けないでしょう。

私は楽しめましたが、万人向けでないのは確かで、

誰にでもお勧めは出来ないのが非常に残念です。

良いゲームだとは思うのですが、

せめて基本システムが通常〜やや悪いレベルでしたら、

Aランクは確実に狙えるレベルにありますので、

とてももったいないゲームだと思います。



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