ファタモルガーナの館

 

−COLLECTED EDITION−

 

一言レビュー

癖は強いが謎が明らかになってから一気に引き込まれる

 

グラフィック 8点
シナリオ 9点
ボリューム 8点
快適さ 9点
満足度 10点
総プレイ時間 45時間
総合評価 92点

 

 

 

 

「あなた」は気が付けば、古い屋敷の暖炉前に置かれた、

ロッキングチェアーでうたた寝をしていた。

目覚めれば、どこか不可思議な雰囲気をたたえる

長い黒髪の女中がそっとしゃがみこみ、翡翠色をした瞳で見上げていた。

ずっとずっと、この屋敷をたった一人で手入れし、

旦那さまがお帰りになられるのを待ちわびていたと、彼女は静かに微笑んだ。

 

どこか見覚えのある屋敷を取り巻くのは、

心臓を押し潰すような閉塞感。

そして、「あなた」の記憶は、ふっつりと失われていた。

自分の記憶も、女中のことも。

彼女はそっとささやく。

「あなた様はこのお屋敷の旦那さまでございます」

それでも何もわからないという「あなた」に、

女中はこのお屋敷で起きた様々な事件、

このお屋敷の歴史を見せましょう、そうすればきっと、

ご自身がいったい誰なのか思い出せるはずだと言った。

 

うなずいた「あなた」に、女中は微笑んで手を差し伸べた。

「どうかわたくしの手を離さないでくださいまし。

そうすれば、歴史の波に攫われてしまうこともありませんわ」

女中に連れられて導かれるままに屋敷を進む「あなた」。

窓の外は、ねっとりとした闇が続くばかりで、陽光も、月光すらも見えない。

女中は不意に立ち止まり、扉を開いた。

そこには、屋敷の悲劇の過去が繰り広げられていた。

 

 

という、女中に導かれて4つの扉を開かれ、

過去1000年ばかりの内に起こった、

4つの時代の記憶を紐解いていくうちに、

自分と女中が何者なのかという謎と、この屋敷に掛けられた

魔女の呪いを解いていくことになります。

 

序盤はスロースターターなものの、

事件が動き出すと一気に引き込まれていきます。

プレイヤーが見ていたこと、思っていた事が

一気にひっくり返されるという衝撃、

そこからの怒涛の展開と、物語にぐいぐいと引き込む

圧倒的なパワーに呑みこまれるのは驚倒しました。

ミスリードというか、ひっかけのような、だまし絵の様なそれから、

事実が明かされ、あっという間に畳みこむように詳らかにされる真実は、

非常に上手いと思います。

本編ではボイスなしで、アフターストーリーの現代編のみ

ボイス有りはプレイ前少々不満でしたが、

プレイした後はこれで正解だったのではないかと思います。

ボイスがあるとそのひっかけが幾分わかってしまう人がいるからです。

 

そして本編から外伝、アフターストーリー、ショートストーリーも完備と、

物語の全体像、ファンディスクの類が

綺麗に丸く収まっているのも素晴らしいと思います。

 

 

 

システムは高クオリティです。

システムは同会社の乙女理論とほぼ同じものを採用しています。

アドベンチャーに必須のシステムは一通り揃っています。

オートセーブ、クイックセーブ、履歴からのジャンプも完備。

シーンスキップはなくなっていますが、Chapter毎に見ることも、

Extraからシーンごとに見ることも可能になっています。

 

ボイスのみを単独保存することもできるのですが、

ボイス有りのシーンが少ないので、あまり役には立っていません。

セーブはその時の画面とプレイ日時、シーン名と、

その時のテキストが1行表示されていますが、

選択肢でセーブしているのに、その選択肢が

セーブCGに反映されていないのは残念です。

 

今作でもオートモード中に何も操作しなければ

光度が落ちるというVITAの欠点の制御が追加されており、

ストレスのないシステムになっています。

 

 

 

グラフィックは二パターンの絵があります。

現代編のスタイリッシュな絵と、

癖の強いそれ以外の大半で使われている絵です。

大半で使われる絵は油絵調の濃い絵柄で、かなり人を選びます。

豪奢で華麗な絵は、作風に合ってはいるのですが、

何しろ癖が強くこってりしています。

背景はぼかした実写タイプで、

塗ももったりと厚く、どこかしら古式めいたものを感じます。

全体的に薄暗く、グレーがかっていて人物の目張りが凄いです。

しかし丁寧に塗られていて、どのCGも

はっと目を引くものがあるのは確かです。

今時珍しい絵柄と塗です。

 

CGの枚数は差分抜きで73枚。

おまけの版権イラストが29枚、

それぞれの版権イラストの説明書きのCGが2枚。

ボリュームが結構あるので枚数はかなり少なめです。

差分はそれなりですね。

そして最も残念なのが、立ち絵が基本一パターンであるということ。

ポーズや衣装バリエーションがある主要人物もいますが、

ほぼなく、ポーズバリエーションはごく一部のシーンのみ使われるだけで、

基本一パターンで表情のみ変化があると思って差し支えありません。

 

 

 

プレイ時間は約45時間程度。

時間が表示されないタイプで正確な時間が分かりませんので約の時間です。

アフターストーリー、外伝、ショートストーリーを全てプレイし、

プラチナトロフィーを取得しています。

全エンディングを制覇していなくとも

(真エンド以外をほとんど見ていなかった)

プラチナトロフィーを取得できたのはバグか仕様か?

 

最初はスロースターターなものの、

中盤からの追い上げと、複数のカードを一気に覆し、

ぶちまけていくような、怒涛の展開が見事なシナリオです。

ファンディスクや、本の特典として

付けられていたショートストーリーも完備と、

このゲームだけでファタモルガーナの世界観を

丸ごと味わえるのもいいですね。

これだけで綺麗に完結されている作品です。

とにかく盛りだくさんでボリューム的にも

満足できる素晴らしい作品だと思います。

やや過激なシーンも含みますが、それでも是非お勧めしたい作品です。




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