ファイナルファンタジータクティクス

獅子戦争

 

一言感想

戦乱の世を、裏側から駆け抜けた英雄譚

 

グラフィック 7点
シナリオ 8点
ボリューム 8点
快適さ 5点
システム 8点
満足度 8点
総プレイ時間 86時間
総合評価 77点

 

 

東の大国オルダリーアと北西の国ロマンダに挟まれたイヴァリース。

オルダリーアとの実質的に負け戦だった五十年戦争終結後、

疲弊していたイヴァリースに、新たな火種が誕生していた。

病弱な国王オムドリア三世は二人の子を亡くし、

姪のオヴェリアを養女に迎えたものの、

すぐに王妃との間に王子が生まれた。

そしてその数年後、オムドリア三世は逝去した。

オリナス王子を擁立する王妃ルーヴェリアの実兄であるラーグ公と、

オヴェリア王女を擁立する前王の従弟であるゴルターナ公が

王位継承権とその後継人を巡って争っていた。

二人の公爵家の紋章は奇しくも白獅子と黒獅子。

その紋章を元に、その王位継承争いは、

後に獅子戦争と呼ばれた。

 

その内乱を収め、オヴェリア王女と結婚し、

国王として即位したのは平民出のディリータ・ハイラル。

後世にまで華々しく語り継がれる英雄王ディリータの影で、

教会の暗躍とその奥にさらに潜む者に気付いた青年がいた。

騎士の棟梁家ベオルブ家の妾腹の出、

ラムザ・ベオルブが教会に最悪の異端者としての汚名を着せられつつも、

裏で起こっていた世界を転覆させる事件を解決したという。

 

教会がずっと隠し続けてきた禁書「デュライ白書」には

その事実が克明に記されており、

歴史学者アラズラムと共に、

その真実をプレイヤーが見ていくというのが話の流れです。

 

 

英雄王として語り継がれるディリータを主人公に据えて

展開していくのが本筋なのでしょうが、

歴史の裏側から見た彼は決して清廉潔白な人物ではありません。

暗殺、裏切り、策略というどこまでも後ろ暗いことに手を染めており、

その手はぐっしょりと朱濡れています。

それに相反して眩しいぐらいに真っ白で正義感に溢れていたのが、

異端者としての汚名を着せられたラムザです。

自分が世間や家にどのように批判されようとも、自分の正義を貫く。

困っている者、弱い者を放っておけずに手を差し伸べる。

ラムザが迷った末に決めたのは、辛く悲しく、どこまでも暗澹たる道でした。

 

英雄王という輝かしい名とは対極に本当は真っ黒だったディリータの影で、

異端者として追われ、唾棄される人物なのに

どこまでも真っ白だったラムザという、

二人の明暗の対比がくっきりとしており、

そして見る角度によっては明暗ががらりとひっくり返る、

互いが互いを引き立てて展開していくシナリオは巧み。

キナ臭い戦乱の世を、表側から、裏側から、

克明に描き出して織り上げていく様は非常に興味深かったです。

 

 

 

戦闘はSRPGタイプとしては標準的です。

正面よりは横、横よりは裏の方がHIT率や攻撃力が上がるという、

SRPGには良くあるタイプのシステム。

戦闘やターン制ではなく、スピードが速い順に

敵味方入り乱れて進んでいきます。

その中で特色として目立つのが、ジョブとアビリティです。

 

ジョブは職業、アビリティはその職業で

ジョブポイントを貯めることにより覚える特殊技能の様なものであり、

どのジョブに就き、どのアビリティを付けるかで

難易度ががらりと変わっていくタイプです。

レベル上げよりもジョブをどれだけ習得して付けるかということが重要であり、

どの組み合わせで付けるのか、

プレイヤーが考えるというのが非常に面白い。

 

ストーリーそっちのけでジョブチェンジや

アビリティ習得に熱中してしまいます。

フリーバトルというものがあり、プレイヤーのレベルに合わせて、

フリーバトルで出てくる敵のレベルも上昇するため、

簡単にレベルやジョブレベルが上がっていくのも面白く、

ついあれもこれもと習得してしまいます。

これがこのゲームの胆かと思われます。

 

 

 

基本的なシステムですが、結構不具合があります。

まず魔法などのエフェクトですが、

一切スキップできず、複数のキャラクターにかかる場合、

一人ずつそのエフェクトを延々と見続けなければならないのが辛い。

時には処理落ちするものもあり、

戦闘の長期化はそれに原因があります。

 

そして戦闘時に参加するメンバーの並び替えですが、

メンバーに加わった順で固定ですので、

通常使っているキャラクターを探すのが

とても面倒くさくて地味にイラつきます。

 

マップ移動ですが、十字キーでカーソルを動かすのも、

ちょうどのポイントで止めなければいけませんので、

それを微調整するのが難しいです。

メニューの移動で移動先を探すこともできるのですが、

途中から移動できる範囲がかなり多くなっているので、

結局十字キーで動かす方が早くなっています。

ぴたりと止められなくて十字キーを

ちょこちょこ動かさなければいけないのがイライラしますね。

 

レベル上げに使うフリーバトルですが、

フリーバトルが出来るかどうかもランダムなので時間がかかります。

マップで緑色のポイントがフリーバトルの出来るポイントなのですが、

そこを通り過ぎると一定の確率でフリーバトルに突入します。

この一定の確率でというのが最大の難であり、

ストーリーを進めるためにただ通過したい場合は

フリーバトルに引っかかってしまいイラつき、

反対にフリーバトルが目的の時はなかなかフリーバトルにならず、

マップ間を幾度もウロウロしなければならず、非常に煩わしいです。

フリーバトル専用のマップを作って、

他は通過のみで良かったのではないでしょうか。

 

 

 

グラフィックは、PSPとしては可もなく不可もなく。

独特の絵柄をしており、歴代のファイナルファンタジーの

シンプルな絵柄を継承しています。

派手さはありませんし、美しいかと言われれば首を傾げますが、

長年同シリーズをプレイしてきた身としましては、

懐かしく、馴染みのあるものであるのも確かです。

 

PS版より追加されたアニメーションは

作風に見事に合わせたもので、かなり良かったと思います。

キャラクターの造作がゲーム内そのままで、

それが綺麗に動いていくのはいいですね。

ただし、アニメーション中もボイスは一切なく、

字幕のみで動いていくのは少々もったいなかった。

また主人公のラムザは名前を変更可能なのですが、

名前を変更してもアニメーション中の字幕では

「ラムザ」と表示されて少々興ざめです。

変更した名前を表示するようにするか、

その反対に名前を変更不可にしたほうが良かったのではないかと。

魔法等のエフェクトは処理落ちしているのに、貧相に感じました。

 

 

 

プレイ時間は、アビリティ習得や

レベル上げでかなり時間を費やしているため、

かなり長めで86時間です。

通常にストーリーのみを追っていくには40時間前後かと思われます。

とにかく、どこまでプレイするかでプレイ時間がガラッと変わっていくタイプ。

PSP版らしく、通信関連のシステムの追加もあるのですが、

何しろ古いソフトですので、プレイしている方がおらず、

そちらは一切出来ませんでした。

 

歴史を、裏側から見ていくという試みは面白かった。

表で脚光を帯びた英雄王ディリータの裏の顔、

その裏側で活躍していた主人公との対比、

戦時中にうごめくもの、人民の真理、克明に変わっていく政略図、

運命に翻弄されるキャラクター達など、

様々な角度から各自の思惑をはらんで、

渦巻いていく様は面白かった。

ただ、両主人公があまり報われていないのが

ちょっとかわいそうと言えばそうなのかもしれません。

 

複雑な人間関係、歴史をモチーフにした

やり込み度の高いSRPGをプレイしたい方にはお勧めです。

ただ、システムが悪いのは我慢ですね。



HOME    BACK

inserted by FC2 system