FINAL FANTASY X/X2

HD Remaster

 

一言感想

シンのばら撒く死の螺旋の大地

 

グラフィック 10点
シナリオ 9点
ボリューム 10点
快適さ 6点
システム 8点
満足度 8点
総プレイ時間 58時間
総合評価 88点

 

 

今作はPS2で発売されたファイナルファンタジーXと、

Xのエンディング後を描いたX−2の二作のゲームを一つにまとめ上げ、

HD用に画像を綺麗に修正し、ワイド版に対応しています。

ワイドと言っても上下を断ち切るやっつけ仕事ではなく、

きちんと左右を継ぎ足しているのは流石ですね。

システムや追加要素はどちらの作品も

インターナショナル版のものを採用しています。

インターナショナル版はボイスが英語、日本語字幕でしたが、

今作はボイスも日本語になっているのは高く評価したいです。

 

さて、今回は注釈しなければならないことがあります。

今回のレビューはX/X−2の中で、

Xのみに絞ってレビューをしているという点です。

同時にレビューすることも考えたのですが、

もともと別々に作られた二作を同時収容しているために、

XとX−2のシステムが全く違っており、

X−2をプレイ後にレビューしてしまうとXのことを忘れる可能性があるため、

分割レビューという形を取らせていただいておりますので、

その点ご了承ください。

 

ストーリーはFF史上最高との誉れも高いシナリオです。

未来都市ザナルカンドの有名スポーツ選手ティーダが、

巨大なモンスターが街を木端微塵に破壊する事件に遭遇し、

街が崩壊するその時に、不思議な光の渦へ飲み込まれ、

異世界としか思われない、機械を忌み嫌うアジアンテイストな世界観の

スピラに一人、いきなり放り出されるという衝撃的なシーンから始まります。

その中で、召喚士という、人々に敬われる職業の者のガードとして、

国中を旅するという、RPGとしてはオーソドックスな旅行譚なものの、

今まで住んでいた所とはまるで違う幻想的で、美しく、

それでいてシンの振り撒く死の螺旋に満ち溢れた悲しみの大地を、

驚きと喜びを感じながら旅をする様は、

まさに世界中を観光しつつ旅する感動に満ち溢れています。

未知の場所、美しい風景、今まで会ったことのない人達、知らない文化。

その中で、何か悲壮な決意を胸に、

それでも笑いながら前へ進むヒロイン、ユウナと、

彼女を守るガード達、彼女たちを囲む人たちの織り成す

世界の命運をかけた悲しく切ない旅路。

世界はかくも美しく、苛立たしいまでに悲しいと、

そう思わせた繊細で美しいストーリーでした。

ただし、終盤ではいささか失速してやや都合の良い終わり方を迎えており、

また、RPGとして、自由度はかなり低い目です。

 

 

 

戦闘はごくオーソドックスなコマンドタイプのRPGです。

このあたりはあまり目新しくはないものの、

敵に対して優位に立つことのできるキャラクターがはっきりとしており、

ペナルティなくキャラクターをクルクル入れ替えてプレイするのが楽しいですね。

全員がきちんと戦闘に参加しているという感じがします。

戦闘に関しては特に指摘する点はありません。

 

特筆すべきが、成長システムです。

レベルシステムではなく、攻撃力や魔力、HP等のパラメータUPや、

戦闘で使用する技や魔法のアビリティスフィアのマスが、

双六のようにライン上に配置されたスフィア盤を使用します。

戦闘によって上がるスフィアレベル数が、マスを進められる数になっています。

マスを進めるとスフィアレベルが減っていき、

スフィアレベルが0になると移動できなくなります。

そしてアイテムを使用してマスを開放し、

技の習得やパラメータをUPさせていくのですが、

各キャラクターが最初に進むルートには独自の性能があり、

キャラクターづけにメリハリが効いています。

 

実は、本来のルートから逸脱して他キャラクターのルートを進んだり、

自分のルート終了後に他人のルートに進むことが出来たりして、

他RPGにありがちな、キャラクターのパラメータがきっちりと決まっていて

こちらで操作のしようがないということがなくなっています。

プレイヤーが任意のルートに進ませることにより、

魔法に秀でた肉体派キャラクターや、

本来は魔術師なのにパワー系になっているキャラクターなど、

かなり自由に作ることができるのは楽しいですね。

ただし、レベルが上がると勝手にパラメータがUPして

スキルを覚えていくRPGとは違い、

こまめにこちらで操作しなければならないという煩わしさはあります。

 

 

 

基本的なシステムですが、これも昔のシステムを

採用することもなかったのではないかと思います。

どこでもセーブがないのは社会人として辛かった。

セーブポイントから次のセーブポイントまで30分〜1時間近くあることもあり、

どこでもセーブポイントか、せめて中断のシステムを加えてほしかったですね。

後、戦闘時のカーソルの操作が非常に気になりました。

戦闘時、カメラの向きが一定ではなく、

戦闘によってカメラの向きが違ってくるのですが、

そうすると敵方にカーソルを持っていくキーが戦闘ごとに違ってきて、

右横の敵にカーソルを移動したいのに、

味方の方に移ったりして、それが非常に煩わしかった。

何度もキーを操作しなければならず、イライラさせられましたね。

 

アイテムは自動整頓してくれないので、

一々こちらでまめに整頓しなければいけない点も煩わしかった。

アイテムの改造(アビリティやパラメータUPを付ける)という

システムがあるのですが、一番下のアイテムを選択したい場合、

十字キーを操作し、アイテムを一つずつ辿って一番下まで

カーソルをもっていかなければならないのもとても面倒でした。

キャラクターごとで、L1、R1などでページ送りしてくれたらと、

幾度もプレイ中思いましたね。

余りの煩わしさにアイテムの改造はあまり行わなかったぐらいです。

 

PS3にしては少々珍しく、ムービーやマップ切り替えで

ローディングが結構あるのもちょっと気になるところ。

インストールがそもそもない仕様ですので、

どうしてもローディングが生じてしまうのでしょうが、

それならばインストール有りでシステムを作ってほしかったですね。

 

 

 

グラフィックは、当時PS2版最高と謳われたグラフィックです。

ムービー時の美しさは今のPS3版の他ソフトに引けを取らないどころか、

匹敵する、物によっては上のグラフィックが凄いですね。

今でも十分美しい所は素直に感嘆させられます。

幻想的な背景の美麗さも素晴らしく、

このグラフィックの美しさも相まって、

主人公であるティーダの感動がダイレクトに伝わってきます。

世界観をこの上なく見事に表現しており、

今見ても、光が舞い、自然がきらきらと煌めき、広大な大地が広がる、

目の醒めるような鮮やかな美しさです。

 

通常時や戦闘時のポリゴンはかなり見劣りしますが、

そもそもHDリマスターであり、リメイクではないのですし、

そこは妥協すべき点としてマイナス要素にはしていません。

むしろ、当時の物をかなり綺麗に

PS3版として丁寧に仕上げていると思います。

ワイド版に対応するにしても、前述のとおり上下を断ち切るのではなく、

左右を継ぎ足すこだわりは凄いですね。

グラフィックに関しては妥協なく修正してきている熱意は素晴らしいです。

 

 

 

プレイ時間は、さらりとプレイして54時間。

サブイベントや最強武器等はほとんどプレイしていません。

一通りプレイしての時間ですので、

あまり寄り道しなければ通常のプレイではこのぐらいかと思われます。

ボリュームに関しては、ここのみX−2のプレイ時間も加味しています。

 

世界を旅するという感動を、美しいグラフィックで彩った作品です。

ティーダと共に、世界を旅していく様は楽しかった。

それでいて、楽しいばかりではなく、

ヒロインユウナのひたむきなまでの懸命さと悲壮な決意、

死の螺旋に縛られた悲しみの大地に住む人たちの祈りと願いといった、

正と負の感情の入り混じったストーリーが展開していく様は

終盤近くまで良かったものの、

終盤でちょっと都合の良い展開をしてしまっている点は少々気になります。

 

また、レベルではなく、スフィア盤を利用したキャラクターづけは、

こちらの思いのままのキャラクターを作れるという点と、

煩わしいという点の表裏一体となっていますので、

プレイする人によってバッサリと評価が分かれますね。

システムももうちょっとテコ入れをしてほしかった。

 

総合すると、過剰な期待をするのでなければ、

PS3版のRPGとして、基本は良い出来だと思います。

オーソドックスなRPGをプレイしたいのならばお勧めです。




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