FLOWERS

 

 

一言レビュー

百合の花園は唐突に終わりを告げる

 

グラフィック 9点
シナリオ 8点
ボリューム 5点
快適さ 10点
満足度 7点
総プレイ時間 15時間
総合評価 78点

 

 

 

陸の孤島、聖アングレカム学院。

携帯も、パソコンも、テレビも禁じられた、

全寮制の中学女学院の、教師も全員女性のそこは、

一風変わった制度があった。

疑似的な友人と同室になるアミティエ制度。

 

とある事情で祖父の元に預けられて育ち、

学校にほとんど行ったことがなく、友人が出来たことのない白羽蘇芳は、

強制的に友人「アミティエ」を作らせる制度の学園を選び、

なんとしても本当の友人を作るべく門をくぐっていた。

夜遅くようやく着いた学院で出会った少女、花菱立花に話しかけられ、

祖父以外とほとんど話すことがなかった蘇芳は、

驚いて逃げ去ってしまう。

そんな時、幻想的な満開の桜を背に出会ったのが、匂坂マユリだった。

 

真面目で面倒見が良く、学年一の成績を持つ花菱立花と、

社交的で明るく、中性的な魅力を持つ勾坂マユリ。

今年度から三人制になったアミティエ制度で

蘇芳にあてがわれたアミティエは、

クラスで中心的存在になった二人だった。

 

何もかも初めてばかりの学院生活で、

自分に自信がなく、臆病で引っ込み思案、

それでいてクラス一の美少女なのにその自覚のない白羽蘇芳は、

いつもクラスメイト達に囲まれている二人のアミティエに気後れしつつ、

本当の友人となるべく懸命に奔走します。

 

 

ストーリーは女学院らしく、しっとりと、しめやかに、

ですがちょっとしたミステリーを含んで緩やかに進行していきます。

学園で起こる出来事を蘇芳は推理しつつ、

アミティエやクラスメイト達と少しずつ仲良くなっていきます。

実に雰囲気の良い作品であり、

CGの水彩画風でしっとりと濡れたような

艶のあるイラストそのままのストーリー。

 

イラストを見て好みと思い、

百合要素を好ましく思うのならばアタリなのですが、

この作品、最後で唐突に終わりを告げます。

元より四部作であるということは発表されており、

続きがあるのは知っていたのですが、

あんまりなところで理由も聞かされず一方的に終わらされる結末に、

ちょっと唖然としてしまいました。

終盤までとても雰囲気が良く、

しめやかに進んでいてこれからといったところで終わるので、

そこを理解できる人でなければ難しいです。

てっきり、各作品主人公を脇役から変えて、

それぞれの恋愛劇、友情劇を別角度から語られるのかと思っていました。

 

そしてその唐突感に、プレイ時間の短さが拍車をかけています。

他ゲームの一ルート分ぐらいしかプレイ時間がないのです。

確かに価格も抑えめなのですが、

ちょっと短すぎるかなと思います。

 

 

 

システムは非常に快適で、タッチにも対応しています。

アドベンチャーのシステムとしては最高峰で、

他会社にお手本にしてほしいほどの抜群の出来です。

 

アドベンチャーに必須なもの全てと言っても過言ではないほど

完璧に搭載されています。

オートモード時のスピードは文字数待機時間と

固定待機時間の両方が設定できるという優れもの。

普通はテキスト表示後のウエイト時間しか設定できないのですが、

文字数が多ければ、文字数が少ないテキストより長めのウエイト時間になり、

長めの文章で後半が読めないということがありません。

ボイスも各人物ずつ音量が微調整できるというのが素晴らしい。

 

セーブデータもその時表示されていたCGや立ち絵、

セリフが二行表示され、

どのセーブデータかわかりやすくなっています。

セーブデータをローディング後のセーブデータ以前のテキストも表示され、

履歴からのジャンプも可能、

履歴からのジャンプ、セーブデータからのローディング後からも

テキスト履歴が閲覧可能で、

スキップは次の選択肢まで一気にスキップすることが可能、

また従来通り、テキストをスキップし続けることも可能です。

しかも選択肢スキップでもテキスト履歴が閲覧可能と、

至れり尽くせりのシステム。

 

オートモード時はVitaの基本システムである、

ある一定以上画面やボタンを触らなければ

光度が落ちるというシステムも制御されており、

光度が落ちなくなっているのも良ポイント。

履歴を閲覧、オートではなく手動の時は

ボタンや画面を触っていなければある一定時で

光度が落ちるようになっているのも完璧です。

 

 

 

グラフィックは、はんなりとした水彩画風の麗しい絵柄。

少女漫画風の繊細で優麗な、ふわりとしたやわらかい絵柄で、安定しています。

塗の美しさや繊細さもストーリーに非常にマッチしており、

背景の美しさも抜群です。

正に百合の園といった雰囲気で、

ふんわりとした中にもしっとりとした濡れた艶のある塗は素晴らしい。

 

CGの枚数は差分抜きで45枚。

背景のみ、手だけといったCGが10枚以上あるので、

実際よりかなり少なく感じます。

確かにプレイ時間も短いのですが、もう少し、あと10枚ほど欲しかった。

また差分も少なく、半数以上に差分がなく、

差分があっても2枚というのが大半で、

2枚以上差分があるのは2種のみといった少なさです。

ここが最大の減点ポイントでしょうか。

 

 

 

プレイ時間は約15時間程度。

時間が表示されないタイプで正確な時間が分かりませんので約の時間です。

全エンディング、CG、音楽をコンプリートしており、

プラチナトロフィーを取得しています。

 

非常に雰囲気の良い作品であり、

女の園、全寮制の女学院、というフレーズと

絵柄が好みでしたら楽しめると思うのですが、

途中で唐突に終わっており、ルートが2ルートしかなく、

そのうち1ルートが物凄くおまけであり、

そもそも4部作で作られているというのを理解して、

納得できるのならばといった感じでしょうか。

ストーリーは全作プレイしないと正確には評価できません。

 

作風は素晴らしく良いのですが、

終わっていないというのが最大のネックです。

全作おつきあいする気概でプレイできるのならば、良い作品です。




HOME    BACK

inserted by FC2 system