ＦＬＯＷＥＲＳ

秋篇

一言レビュー

前作、前々作ありきでまた続く

陸の孤島、聖アングレカム学院。

勾坂マユリが助けを求めていると知った白羽蘇芳は、

何かを知っている八代譲葉に、

マユリが消えたことに関する手がかりを教える条件として、

生徒会、通称ニカイアの会の会長への就任を提示された。

ニカイアの会長就任は非常に高いハードルが多く、

会長が決まらずに副会長が代理を務めることが多いほどだった。

どうしてもマユリに会いたい一心の蘇芳は、

ニカイアの会長になるべく行動を開始する。

季節は秋から冬へ至ろうとしていた。

そんな蘇芳を見つめる、現ニカイアの会会長、

トリックスターでシニカル、中世的で

全生徒から絶大なる人気を誇る譲葉の視点から見た、

学院での生活と七不思議にまつわるちょっとした事件を描いたお話です。

今回は幼馴染であり、副会長である小御門ネリネと、

双子の沙沙貴姉妹にスポットが当てられています。

今作も前作での主人公だった八重垣えりかからバトンタッチで、

八代譲葉が主人公を務めます。

色々と煙に巻くエキセントリックで中世的な譲葉の意外な内面と、

天使のような容貌を持つ幼馴染のネリネ、

そして最近急激に親密度を増してきた

沙沙貴姉妹との関係を掘り下げています。

真エンドは綺麗に終わっているのですが、

脇のエンディングは○○エンディングと銘打ってはいるものの、

ハッピーエンドとは言い難いものがあり、

なんだか少し後味が悪いものがあります。

また、脇のエンディングはボリュームがなく、

本当におまけという感じですので、過大な期待は禁物です。

イラストを見て、百合要素を好ましく思うのならば

買って損はない雰囲気の作品ではあるとは思うものの、

前作、前々作からの続きであり、

今作だけではお話が成立しません。

完全に初心者お断り仕様であり、

前２作をプレイして出直してくるという覚悟が必要で、

ベスト版が発売になっていないという都合上、

プレイするにあたってかなりハードルの高い作と言わざるを得ないでしょう。

そして今作でも全く終わってはおらず、

肝心の謎は明らかにされないまま、

三度終わりを告げられます。

非常にボリュームの無い作品であり、４部作を予定されてはいますが、

４作で他の作品のレベルに到達するボリュームで、

ちょっとした空き時間にプレイするのならばいいのですが、

今作だけでは非常に物足りません。

確かにやや控えめなお値段なものの、

このボリュームではちょっと高すぎる気がします。

ボリューム以外の全体的なクオリティや雰囲気は素晴らしいものの、

いかんせん肝心なボリュームがあまりにも少ないため、

とてももったいなく思う作品です。

システムは非常に快適で、タッチにも対応しています。

アドベンチャーのシステムとしては最高峰で、

他会社にお手本にしてほしいほどの抜群の出来です。

他アドベンチャーもこれが搭載されていればと

ため息が出るほど素晴らしいシステムです。

システムは前作と同じですので、ここでは割愛します。

グラフィックは、ふわりとした水彩画風の優美な絵柄。

少女漫画風の繊細な絵柄で、安定しています。

塗の美しさや、その儚げで、少女特有の清廉な可憐さも

ストーリーに非常にマッチしており、

背景の美しさも抜群です。

正に百合の園といった雰囲気で、

やわらかな中にもしっとりとした濡れた艶のある塗は

素晴らしいの一言。

ＣＧの枚数は差分抜きで４６枚。

ボリュームから見て、そこそこな枚数でしょう。

差分はちょっと少なめかと思います。

中には差分ではなく、一枚と勘定しても

いいのではないかと思うＣＧもあり、

作品のボリュームからして並程度になります。

プレイ時間は約１５時間程度。

時間が表示されないタイプで

正確な時間が分かりませんので約の時間です。

全エンディング、ＣＧ、音楽をコンプリートしており、

プラチナトロフィーを取得しています。

非常に雰囲気の良い作品であり、

女の園、全寮制の女学院、百合というフレーズにピンときて

絵柄が好みでしたら楽しめると思うのですが、

非常にボリュームが少なく、脇のルートもあるにはあるのですが、

ちょっとしたおまけか、バッドエンドになっています。

真エンドを補足するような意味合いもあるにはあるのですが。

４部作で作られているうちの３作目というのを理解して、

このボリュームに納得できるのならばといった感じでしょうか。

ちょっとお値段設定が高すぎる気がします。

ストーリーは全作プレイしないと正確には評価できません。

作風は素晴らしく良いのですが、

あまりのボリューム不足、前二作プレイ必須が大いにネックです。

途中の作品でも、もう５時間ほどは欲しいですね。