FLOWERS

 

夏篇

 

一言レビュー

百合百合しく、ボリュームダウン

 

グラフィック 10点
シナリオ 8点
ボリューム 3点
快適さ 10点
満足度 7点
総プレイ時間 11時間
総合評価 76点

 

 

 

陸の孤島、聖アングレカム学院。

男子禁制の女子中学校は、職員はもちろんの事、

業者まで相手側が気を使って女性がやってくるという正に女性の花園だった。

勾坂マユリが理由を告げず去ってしばらく。

季節は夏を迎えようとしていた。

 

物憂げに沈み、陰鬱な風情の白羽蘇芳を心配げに見る八重垣えりかの前に、

どこか勾坂マユリに風貌が似た少女が、不意に桜の木の下に現れた。

えりかが問いかけるのに毒舌で返した少女は、

苛立たしげにその場を立ち去ってしまう。

彼女の名前は考崎千鳥。

芸能生活を送っていたが、とある理由から

この全寮制の学園へ途中編入してきた六人の中の一人だった。

あなたたちと仲良くもよろしくもする気はないとバッサリと切って捨てる、

排他的な彼女のアミティエに選ばれたのは、八重垣えりかだった。

出会いは最悪。

刺々しげに反発する少女達が迎えた、

あるひと夏の物語です。

 

 

前作での主人公だった白羽蘇芳からバトンタッチで、

八重垣えりかが主人公を務めます。

シニカルな皮肉屋でいながら、なんだかんだ言って優しいえりかが、

元気をなくした蘇芳を、勾坂マユリが

なぜこの学園を立ち去らなければならなかったのか調べるように焚き付け、

前へ向かせる間奏のようなお話です。

緩やかな中にもちょっぴりのミステリーを含み、

静々と進む落ち着いたストーリーで、

正にCGの水彩画風でしっとりと濡れたような

艶のあるイラストそのままのストーリー。

女学院、百合という要素に全力で答えてくれる、

透き通って綺麗な、繊細さを感じるシナリオですね。

 

イラストを見て、百合要素を好ましく思うのならば

買って損はないとは思うものの、前作からの続きであり、

今作だけではお話が成立しません。

完全に初心者お断り仕様であり、

前作をプレイして出直してこなければなりません。

千鳥と仲良くなる一場面を切り取り、

蘇芳に前を向かせるというショートストーリーであり、

はっきり言ってしまうと全く終わってはおらず、

肝心の芯を貫く謎は明らかにされないまま、

ふっつりと終わりを告げられます。

 

非常にボリュームの無い作品であり、4部作を予定されてはいますが、

はっきり言ってしまうと4作で他の作品のレベルに到達するボリュームであり、

ちょっとした空き時間にプレイするのならばいいのですが、

今作だけでは非常に物足りないでしょう。

確かにやや控えめなお値段なものの、

このボリュームではちょっと高すぎる気がします。

雰囲気はいいものの、とてももったいない作品です。

 

 

 

システムは非常に快適で、タッチにも対応しています。

アドベンチャーのシステムとしては最高峰で、

他会社にお手本にしてほしいほどの抜群の出来です。

 

アドベンチャーに必須なもの全てと言っても過言ではないほど

完璧に搭載されています。

オートモード時のスピードは文字数待機時間と

固定待機時間の両方が設定できるという優れもの。

普通はテキスト表示後のウエイト時間しか設定できないのですが、

文字数が多ければ、文字数が少ないテキストより長めのウエイト時間になり、

長めの文章で後半が読めないということがありません。

ボイスも各人物ずつ音量が微調整できるというのが素晴らしい。

 

今作ではボイスコレクションというシステムが増えました。

これは各人物の気に入ったセリフを登録し、いつでも聞けるというシステム。

一人30まで登録可能になっています。

どの声優さんも非常に上手い方ばかりなので、

声優好きの人にはいいシステムなのではないでしょうか。

 

セーブデータもその時表示されていたCGや立ち絵、

セリフが二行表示され、

どのセーブデータかわかりやすくなっています。

セーブデータをローディング後のセーブデータ以前のテキストも表示され、

履歴からのジャンプも可能、

履歴からのジャンプ、セーブデータからのローディング後からも

テキスト履歴が閲覧可能で、

スキップは次の選択肢まで一気にスキップすることが可能、

また従来通り、テキストをスキップし続けることも可能です。

 

しかも選択肢スキップでもテキスト履歴が閲覧可能、

未読テキストがある場合は選択肢スキップが解除され、

未読テキストが表示されるようになっています。

もちろん巻き戻し機能も完備と

至れり尽くせりのシステム。

 

オートモード時はVitaの基本システムである、

ある一定以上画面やボタンを触らなければ

光度が落ちるというシステムも制御されており、

光度が落ちなくなっているのも良ポイント。

履歴を閲覧、オートではなく手動の時は

ボタンや画面を触っていなければある一定時で

光度が落ちるようになっているのも完璧です。

 

 

 

グラフィックは、ふわりとした水彩画風の麗しい絵柄。

少女漫画風の繊細で優麗な絵柄で、安定しています。

塗の美しさや繊細さもストーリーに非常にマッチしており、

背景の美しさも抜群です。

正に百合の園といった雰囲気で、

ふんわりとした中にもしっとりとした濡れた艶のある塗は

素晴らしいの一言。

 

CGの枚数は差分抜きで45枚。

ボリュームから見て、十分な枚数でしょう。

差分は今回大分多くなりましたね。

中には差分ではなく、一枚と勘定しても

いいのではないかと思うCGもあり、

作品のボリュームからして並から多目になります。

 

 

 

プレイ時間は約11時間程度。

時間が表示されないタイプで

正確な時間が分かりませんので約の時間です。

全エンディング、CG、音楽をコンプリートしており、

プラチナトロフィーを取得しています。

 

非常に雰囲気の良い作品であり、

女の園、全寮制の女学院、百合というフレーズにピピンときて

絵柄が好みでしたら楽しめると思うのですが、

非常にボリュームが少なく、はっきり言ってしまうと1ルートしかありません。

脇のルートもあるにはあるのですが、本当にちょっとしたおまけか、

バッドエンドになってしまいます。

そもそも4部作で作られているうちの2作目というのを理解して、

この極小のボリュームに納得できるのならばといった感じでしょうか。

ちょっとお値段設定が高すぎる気がします。

2000〜3000円ぐらいが妥当のお値段でしょう。

ストーリーは全作プレイしないと正確には評価できません。

 

作風は素晴らしく良いのですが、

あまりのボリューム不足が最大のネック。

途中の作品でも、せめて20〜30時間ほどは欲しいですね。




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