フローラル フローラブ
一言レビュー
主人公の設定が濃い
グラフィック | 8点 |
シナリオ | 9点 |
ボリューム | 7点 |
快適さ | 7点 |
満足度 | 9点 |
総プレイ時間 | 25時間 |
総合評価 | 88点 |
斉須柾鷹には、不思議な能力があった。
人の悪意には黒い羽根が、善意には白い羽根が見える。
その特殊な能力(ギフト)を生かして、
聖ガブリエレ学園の通称「聖書朗読会」に所属し、
シスターの碧衣愁の命を受けて、天使とも噂される椿姫こはねと共に、
学校内で起こる事件の捜査員として活動を行っていた。
幼い頃に引き取られた斉須の家は、地元で絶大なる権力を誇る名家、
美鳩家の護衛兼執事を兼ねる家柄。
義父にその教えを受け、唯一の跡取り娘である美鳩夏乃を陰ながら護衛していた。
夏乃の親友であるクールビューティーな朱鷺坂七緒には
訳もなく冷たくあしらわれているのに首を傾げるそんなある日、
ベルクシュトラーセ公国から第三王女アーデルハイトが留学してきた。
彼女が自分の護衛役に直接指名したのは、柾鷹だった。
かくして、柾鷹の不思議な能力と、彼の暗い過去の秘密を、
五人のヒロイン+αのエピソードを読むたびに、
垣間見るというのが物語の大筋です。
ヒロインよりも、主人公がこれでもかといった不幸のオンパレードです。
主人公の設定がかなり色々と盛ってあり、
そのほとんどが鬱な設定ですので、
明るく華やかなパッケージデザインが詐欺に感じられます。
パッケージのイメージと真逆を行く不幸のオンパレードの主人公の設定が、
ヒロインを攻略するごとに掘れば掘るほど出てくるのには驚かされましたね。
どのヒロインも、彼女たちの魅力を十全に生かしたコンパクトなシナリオです。
起承転結にメリハリが効いており、非常に先が気になります。
山場に差し掛かる流れや、そこから一気に問題を解決していく疾走感、
そしてどのヒロインでも主人公の設定を
巧みに生かしたシナリオは素晴らしい。
共通ルートもヒロインルートもさほど長くはなく、
むしろ短いはずなのに、不思議と読了後には満足感があります。
飽きる前に綺麗に終わらせてくれ、弛むところもなく、
見事なまでにテンポの良いシナリオ展開だと思います。
システムは基本をそつなく抑えたタイプ。
履歴からのシナリオジャンプも可能です。
コンパクトで、凝った設定は搭載されていませんが、
基本的なシステムは概ね問題ありませんね。
ただし、最大の難点がページ送りです。
立ち絵の出来は素晴らしく、
セリフを言いながら仕草を変えたり動いたり、
表情をころころ変えるのですが、
全モーションを終えないとページ送りをしてくれません。
ボタンを押しても次のモーションへ移行するだけであり、
次のセリフへ送るために何度もボタンを押さなければ
ならないのにはイライラさせられました。
オートモード・スキップ中はどのボタンを押しても
オート・スキップが強制キャンセルされてしまうのも残念ですね。
クイックセーブは一つしかセーブできません。
セーブシステムは比較的見やすく、
その時の場面と2行のみテキストが表示されるのは良いですね。
グラフィックは綺麗系のやや萌よりな絵柄。
可愛らしい絵柄なものの、比較的万人向け。
瞳の着彩の仕方が非常に美しく、思わず目を吸い寄せられます。
立ち絵の出来も素晴らしく、くるくるとセリフ中で
表情や仕草が変わるのは非常に魅力的。
塗も華やかで透明度が高く、背景や光の効果の入れ方が巧みです。
CGの枚数は差分抜きで55枚+デフォルメ絵15枚で合計70枚。
どのシナリオも短めですので、非常にテンポ良くCGが開示されるため、
実際よりも多く感じます。
差分も結構多目で、殆どのCGに差分があり、最大差分枚数は17枚。
この辺も多く感じる所以ですね。
構図も華やかであり、比較的凝っています。
プレイ時間は約25時間。
総プレイ時間が表示されないタイプですので、約の時間です。
プラチナトロフィーを取得しています。
とにかく主人公の盛りに盛った鬱な設定がすごいですね。
その鬱な設定とヒロインの問題を上手くからめ、
どのヒロインの魅力もうまく生かしたコンパクトでテンポの良い、
メリハリの効いたシナリオ展開は見事です。
アドベンチャーはシナリオボリュームだけではないのだな、
と非常に感心しました。
比較的短めの、テンポの良いアドベンチャーを
お好みの方にはお勧めです。