グローランサーX

Generations

 

一言レビュー

新たな創造のための試験的な作品

 

グラフィック 8点
シナリオ 5点
ボリューム 9点
快適さ 2点
満足度 5点
総プレイ時間 86時間
総合評価 57点

 

 

今回はストーリーがロール式という、章ごとに分かれて展開されています。

全8章ですが、1〜4と6〜8のロールは

重要キャラクターやパーティーキャラをメインキャラクターにしてあり、

主人公は一切出てこないという趣向になっています。

ロール式という着眼点は悪くありませんが、

ストレートに言うと、ロール式にしたのは大失敗だったと思います。

 

まず、1〜4は順番にこなしていかなければならないのですが、

これがかなり長く、かつロール1以外は本当にどうでも良い話です。

ロール1が4、5時間、他のロールは2〜3時間かかるので、

主人公が出てくるロール5まで10時間以上を要し、

このせいでかなりのやる気が失せます。

 

いつまで経っても主人公が操作できなくて、

いつになったらメインが始まるのかととてももどかしかったですね。

しかも興味のある話やメインストーリーに

密接に関わっているのならともかく、

知らなければそれで済む話ばかりなのでイライラに拍車を掛けてくれます。

2〜4と7、8はメインに絡ませようとすれば十分できる

サイドストーリーがほとんどでしたので、

ロール形式にするために無理やり作った形跡があり、

魅力のあるシステムではありませんでした。

 

ロール式に分けるのならば、前編と後編の半分ずつにバッサリと分け、

前編の主人公と後編の主人公のダブル主人公に分けるべきだったと思います。

 

ストーリーは長いのに、キャラクターのイベントや

設定が明かされる部分を端折って無くしてしまった形跡があり、

ロール式に手間隙かけるぐらいならば、

キャラクターたちの掘り下げに時間を費やして欲しかったところです。

 

特に、ロール1から現れる謎の少女。

彼女にいたっては何がなんだかさっぱりです。

全くわからないわけではないのですが、

全シナリオを終えても彼女がどういう人物だったのか

殆どわからないのはちょっと…。

意味ありげにちらちら出てきてあれはないでしょう。

 

 

戦闘は今までのシステムの雰囲気を残しつつも、

やや変則的なタイプになっています。

戦闘は敵シンボルに近づくことにより発生します。

これがいささか曲者で、敵の索敵範囲がかなり広く、

かつ味方キャラクターが主人公から離れた位置を

広がりながら付いてくるため、

ほぼ100%の確率で、マップに敵がいた場合戦闘になります。

 

それもこちらの経験値になるのならともかく、

LVが一桁の時に相手にした敵が終盤まで

出てくるので、逃げたいのに味方キャラクターが勝手に

戦闘を始めてしまい、結局戦端が開かれてしまいます。

これがかなり無駄な時間で、イライラしましたね。

 

戦闘はシームレスバトルと言う、

画面の切り替えのないタイプを採用しています。

要するにフィールド全体がそのまま戦闘場所になります。

対集団戦闘で敵のほうがこちらより圧倒的に多く、

戦闘にやや戦略がいるのがこのシリーズの醍醐味のひとつでもあるのですが、

今回、メインキャラクターの戦闘時のマップ移動も

こちらのコントローラーで操作することになっています。

 

ところが、敵や味方が魔法を使ったり、敵が撃破されたりするたびに硬直し、

カメラがそちらへ移動するので、

一向にメインキャラクターが目的の場所へ移動できないのでストレスが溜まります。

5〜8回ほど硬直して移動できなくなると、

その内どこに向かって何をするべきだったのか

一瞬分からなくなって、ちょっと困りましたね。

 

また、敵が固まって近づいてくるために、

どの敵を攻撃しているのか分かりにくいですし、葉や枝の伸びている場所に

敵がいる場合、シンボルが透けて見える事はありませんので、

ますます分からない度に拍車をかけています。

 

指示した敵が撃破された場合、味方キャラクターは

新たな指示をするようにコマンド画面が表示されるのでいいのですが、

メインキャラクターのみコマンド画面が表示されないために、

撃破していることに気づけず

メインキャラクターは何もしないまま敵の前で立ち尽くして

無駄な時間を費やしていることがかなりありました。

とにかく戦闘に対してはかなりストレスの溜まるものに仕上がっていると思います。

 

 

キャラクターのカスタマイズですが、アビリティツリーを使用しており、

木の幹状に左から右へと広がるタイプのものですが、

これがかなり分かり辛く、複雑で、終盤まで理解するのに苦労しました。

まず画面の上と下が繋がっていて、

どこからどこまでが天と地か分かり辛い。

アクティブになっているツリーが分かりにくい、

スキルをひとつ覚えただけではスキルフルコンプリートにならない、

スキルの現在のLvがわかりにくい等。

 

ほぼ完成されていたリングシステムを捨ててマンネリ化に歯止めをかけ、

新たな事に挑戦したいと言う心意気は酌みますが、

今回は失敗だらけだと思います。

 

 

次に色々なシステムです。

まず恒例の休暇イベントについて。

休暇イベントとは、イベント中、キャラクターたちと会話し、

イベントを起こすことにより好感度を上げていくというもので、

キャラクターたちの掘り下げに大いに貢献しており、

好感度によりエンディングを迎えられるキャラクターが変わってくるという

アドベンチャー要素を含んだシステムです。

これもグローランサーシリーズの魅力のひとつですね。

 

今回の休暇イベントは全12回と

一見して多いように見えるのですが、これが大間違いです。

殆どが休暇とはお世辞にも言えない物で、

「○×の情報を町の人から聞きだすのに解散しよう」

といったものまで休暇イベントに数えられています。

ハッキリ言ってそれは仕事です。

それなのに、主人公がすることといえば街の人達に話を聞くことではなく、

メンバーと日常会話等をして

好感度を上げるというものなのですから、呆れてしまいます。

 

しかも他の休暇イベントも、殆どが

今日は疲れたのでここで休憩しよう、泊まっていこうというもの。

「休暇」ではなく、「休憩」イベントだと思います。

自由時間であり、休日ではないような気がしますね。

 

そのため、会話により起こるイベントはほぼ皆無。

友情を感じたりするのは分かりますが、

告白してOKと言われても正直「???」という感じです。

いつの間に好きになったのかさっぱりですね。

また、ラストダンジョン間近に仲間になり、殆ど会った事のない人に

親友と言われるのも不思議で仕方ありません。

 

 

妖精システムですが、今回は妖精を育てるために

膨大な金銭がかかります。

ミッションバトル(いわゆるボス戦。ロール5では全40回)でも

終盤ですら数万ミルしかもらえないのに、コンテストで優勝するには

ざっと計算しても20万ミルほど必要になります。

 

リングシステムを捨てたため、武器にもお金がかかるようになっているので、

今回は妖精を育てている余裕は全くありません。

パーティメンバーたちの装備すらも満足に揃えられず、

ミッションバトルを終えるごとに1人か2人ぐらいしか

武器防具を買ってやれないのに(一人も買えない事もしばしば)、

サブイベント的な妖精を育てている金銭的余裕は

終盤になってもありません。

 

私は裏技を使って何とかお金を工面しましたが、

本編には殆ど関係のない妖精を

普通ならば育てている余裕は全くと言っていいほどないでしょう。

そういう意味ではこれも失敗的なシステムだったと思います。

 

 

後は、自由度がかなり少ないですね。

本編以外のロールは完璧に固定ですし、

本編でも最初の3人はかなり早い時点で仲間になるのですが、

殆ど常にパーティメンバーが決められています。

パーティメンバーを自由に組めるのは本当に終盤の終盤。

 

そして、1人は仲間になるのが中盤で、

2人ほど仲間になるのが異常に遅いですね。

ラスボス戦のひとつ前のミッションバトル前ぐらいにパーティインするので、

いったい君たち今更何をしに来たのか?という感じです。

しかも隠しキャラ二人を仲間にする・エンディングを見る条件が、

非常に厳しいです。

 

1.ロール7、ロール8は本編データとは別にセーブする

2.ロール7、8を作成後、本編データを必ずセーブする

3.ロール7、8をクリアしデータを必ず反映させておく

4.ロール7、8のセーブデータは消さずに保存しておく

 

この4つです。

ロール7、8を本編(ロール5)データに上書き保存してしまうと、

本編が続けられなくなります。

2.と3.を忘れると、隠しキャラの

友情(未確認ですが恐らく)・告白エンディングが不可になる。

4.を忘れると、仲間にできなくなる。

と、非常にいやらしいシステムになっています。

私も2.を忘れて、一人攻略不可になりました。

 

上記の理由で隠しキャラを仲間にできた・エンディングを見られた人は

少ないのではないのでしょうか?

もうここまでくると隠しキャラではなくおまけキャラでしょう。

パーティメンバーが少なすぎます。

 

他に細かなところをあげると、

その場で足踏みしているのかと思うほど走るのが遅すぎる。

別マップに移動する場所が分かりにくく、意外なところが繋がっている。

渡される地図は大雑把な大陸地図で、

街やダンジョンの名前が書いていない為無用の長物。

 

システム画面が□、△、スタートの三つのボタンに分散されているため、

いちいち切り替えなければならなくて非常に面倒。

簡易マップが左上に表示されるが、表示されるのは敵味方シンボルのみで

地図、重要施設等、全く表示されない。

移動はほぼ徒歩。

 

敵がいない場合でも、回復・補助魔法を唱えると時間がかかる。

2週目の引継ぎが殆どなく、おまけにロール1から始めなければならない。

総プレイ時間が表示されない。

 

と数えだしたらキリがありません。

システムはシリーズ中最低ランクでしょう。

 

 

グラフィックですが、ムービー、立ち絵共に非常に素晴らしい。

特にアップ時の造詣は見事で、キャラクターデザインをされている

うるし原氏の絵をかなり忠実に再現しています。

もしかするとアップは氏が直接描かれたのかと思うほどレベルが高いですね。

一枚絵はやや違和感あるものの、

それでもシリーズ中トップクラスだと思います。

 

また、前作での間違った方向に異常に高かった

露出度を抑えてくれたのは良かったですね。

前作はほぼ全員の女性が水着・レオタード・下着姿で登場し、

げんなりしたものですが、今回は許容範囲でしょう。

ただ、よ〜く見ると、意外と露出度は高いのですが。

 

人物の3Dポリゴンですが、PS2初期レベルですね。

小さくして誤魔化している感が否めません。

ですが、アップにしてみると衣服等のディティールを

かなり細かいところまで再現しているのは見事です。

うるし原氏の描く衣服は装飾が多く、

3Dで再現するのは難しかったと思うのですが、

細かいところまで気を配っているのは好感が持てます。

 

顔も殆ど作られていないのですが、もともとこの方の絵の魅力は

3Dではまず表現できないと思いますので、

特に文句はなかったのですが、

イラストレーターの絵がどうでも良く、他RPGと

同じようにグラフィックを捉えている方は厳しいと思います。

1からのグローランサーファンの私としては

うるし原氏の絵がどれだけ再現されているかのみ着目しており、

3Dは正直どうでも良かったので、グラフィックの点数は高めです。

通常のRPGプレイヤーの点数は5〜6ぐらいでしょうか。

 

 

プレイ時間は、ロール1〜8を普通にプレイし、

キャラクターは一人を置いて攻略してのおおよその時間です。

総プレイ時間が表示されませんので、正確なところはわかりません。

闘技場等の時間のかかるものはクリアしていません。

それでもかなりのボリュームですね。

 

ボリュームがある割にはキャラクターの練りこみが足らず、

イベントは希薄、今までのシリーズでの魅力が半減、

主人公=グローランサー(光の救世主)のはずなのに、

どこがどうグローランサーなのかさっぱり分からない内容で、

仲間にそう言われてもかなりの違和感がある。

新システムは殆ど空周りと、余り褒められるところがないのですが、

ボリューム「 だけ 」はありますね。

 

このシステムが次回作でどれだけ昇華出来るかに

シリーズの命運が掛かっていると思います。

実際、前のシステムでも良かったのですけどね。

とにかく試験的な作品で、システムの悪いところがかなり目立ちました。

ただ、システムとストーリーさえ良ければ、

十分普通〜良作レベルにはなると思うので、

次回作に期待、ですね。



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