ひまわり

Pebble in the sky Portable

 

一言レビュー

衝撃的なストーリー

 

グラフィック 5点
シナリオ 9点
ボリューム 7点
快適さ 10点
満足度 9点
総プレイ時間 40時間
総合評価 80点

 

 

その日も家の屋根から星空を眺めていた。

満天の星空から不意に落ちてきた流れ星。

三度願いをかけ終わっても

いまだ流れ続ける星に違和感を覚えて首を傾げる。

落ちているのは星ではなく、隕石?

しかもその軌跡を見れば、近くへ落ちることがわかり、

慌てて隕石を追いかけた。

 

隕石が落ちたのは2年前、高々度旅客機が落ちて500人以上の命が失われ、

その後記念公園へと作り変えられた場所。

その事故で奇跡的に、唯一助かった日向陽一は気分の悪さをこらえて、

隕石が落ちた所へ、途中で出会った宇宙部部長、雨宮銀河と向かった。

落ちていたのは隕石ではなく、小さな宇宙船だった。

銀河が止めるのも聞かず、手に火傷を負いながらも

無理矢理扉を開いた宇宙船の中には、

綺麗な白い髪を持つ少女が気を失って倒れていた。

 

 

宇宙船が墜落した衝撃で自らの名前「アリエス」以外の記憶を

一切失った宇宙人?の少女を自宅へ連れ帰り、

しばらく一緒に暮らすことになるのですが、

原作のHPにある「ロリっ娘宇宙人同棲ADV」とは

大幅にかけ離れた展開のストーリーとなっております。

可愛い小さな女の子と甘い生活を送れると思っていたらそれは大きな間違いであり、

2年前に起こった旅客機の墜落の真実、

その旅客機の向かう先だった宇宙衛星「ひまわり」で行われていた

世間に秘められていた実験を主軸に、

生と死、記憶をメインに、暗く、重くお話は展開していきます。

 

各ヒロインを攻略するごとに、

少しずつ真実が紐解かれるという、

全員とサブエピソードを攻略して初めて

物語の全体像が見えてくるタイプなのですが、

伏線の大部分は丸投げにされており、これ単体では完結していません。

この作品はいわゆる前編、あるいは序章にあたるものであり、

続きがある終わり方になっています。

この辺は賛否両論分かれるかと思われますね。

 

一週目にあたるアリエスルート前半は

のんびりと進んでいくタイプであり、

この辺を見ると「ロリっ娘宇宙人同棲ADV」となるわけですが、

アリエスルート後半の、

真実がどんどん開示されていくところに差し掛かると、

前半ののんびり感が嘘のように

ぐいぐいとプレイヤーを物語に引き込んでいきます。

まさかの立て続けの展開に正直驚かされました。

そして衝撃の終わり方をしたアリエスルートプレイ後、

2年前の高々度旅客機墜落直前の日付のエピソードが語られ、

その驚きから冷めやらぬうちにさらに驚愕の真実が明らかにされると、

とにかくアリエスルート後半からの爆走感が凄いです。

熱中度が素晴らしく、読んでも読んでも出てくる意外な真実に、

ゲームの止め時が見つからないほどでした。

このプレイヤーを物語の中にいったん引き込むや否や、

がっしりとつかんで離さない手法は素晴らしいと思います。

 

 

アドベンチャー系に必要なシステムは完璧に揃っています。

はっきり言ってこれ以上の物はなかなかないのではないでしょうか。

細かなシステム設定もでき、

システムの種類自体は豊富で快適だと思います。

惜しむらくはデータインストールがなく、

その為、セリフの読み込み等にローディングがあるぐらいです。

ボイスハイライトという、音声再生中のBGMを下げるシステムもあり、

履歴からのロードも搭載。

クイックセーブ・ロード、オートセーブもあり。

セーブはストーリー中の日付、セーブの実際の日時、シーンタイトル、

文章、選択肢、その時の画面も表示と全方位に隙のないタイプ。

 

 

グラフィックですが、シンプルよりの可愛らしいタイプ。

ただ、複数の原画家を使用した弊害により、

CGによりクオリティや顔立ちがはっきりと違うものが多数あり、

全体的な完成度は著しく低くなっています。

顔の輪郭がはっきりと崩れているものもあり

全体的に統一感は皆無。

せめて目元ぐらいは一人の人で描いてほしかったと思います。

またCGによっては素人同然のもあり、

立ち絵とCGのクオリティの差もありすぎています。

はっきり言ってしまえばCGよりよっぽど立ち絵の方が魅力的です。

 

立ち絵は少なく、基本一パターン。

アリエスには複数あるものの、残りのヒロイン

アクア、明日香は基本一パターンで、

彼女たちのヒロインルートへ進んだ時のみ

もう一つの立ち絵が解放されるのですが、

そこまでもったいぶらなくっても良かったと思います。

また、アクアのもう一つの立ち絵にはかなり違和感があります。

 

 

 

CGの枚数は差分抜きで約69枚。

その内人物の描かれていないものが6枚なので実質的には63枚でしょうか。

それプラスパッケージイラスト等のおまけイラストが7枚。

差分はそれなりにあるものの、全体的な枚数は少ないですね。

そして、どのCGも総じてクオリティが低いものばかりで

CGが表示されてもがっかり感が強くなっています。

もう少しこの辺のクオリティアップが欲しかったところですね。

背景の枚数も少なく、白黒やマーブリングのような画面の時も結構あり、

もっと枚数が欲しかったと思います。

 

 

プレイ時間は、全エンディング、全CGをコンプして40時間。

全テキストはコンプリートしていません。

アリエス・2048年が10時間ずつ。

アクアが8時間、明日香が4時間。

エクストラが2話で6時間程度。

エンディング回収に2時間ほどかかり、合計40時間です。

大体30〜40時間程度のプレイになるでしょうか。

プレイ時間はそれなりにあります。

 

最初はまったり進むものの、ある特定のポイントからの

雪玉が転げ落ちるがごとき疾走感、

衝撃の真実が詳らかにされる展開、

そしてさらに開示される劇的な真実と、

とにかく爆走感が凄い作品です。

頭にお花畑があるようなストーリーを考えていた

プレイヤーを殴り倒して正気に戻すタイプですね。

プレイヤーを一度捕まえれば引き込んで離さない手法は凄かったです。

この辺は手放しでほめたいものの、実は完結していません。

伏線はかなり放置なものの、

一応丸く収まったかと思った最後のヒロインのラスト、

まさかのどんでん返しに驚かされました。

そしてエクストラでその謎が語られるのかと思えば、

伏線がさらに増えるのみでやっぱり完結はしておりません。

 

システムは完璧なものをそろえているものの、

絵のクオリティは著しく低いと、

とにかくバランスがちょっとおかしいのですが、

ストーリーとシステムのクオリティはとても高い作品です。

それだけに、完結していないのは非常に惜しいと思います。

 

後編にあたるストーリーをプレイしないと

本当の評価ができないと思いますが、

これ単体だけでもストーリーという一点を見れば

非常に素晴らしいと思います。

ただ、アドベンチャーに求められる

一定ライン以上の絵のクオリティを保っていないというのと

完結していないのが要注意でしょうか。



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