探偵 神宮寺三郎

 

GHOST OF THE DUSK

 

一言レビュー

萌も媚びもないが、魅せるシナリオ

グラフィック 9点
シナリオ 10点
ボリューム 6点
快適さ 7点
満足度 9点
総プレイ時間 16時間
総合評価 84点

 

 

 

シリーズものになっている探偵神宮寺三郎の

生誕30周年記念作品です。

新作GHOST OF THE DUSKと、

アプリで販売されていた5作を移植、謎の事件簿1作が追加され、

それぞれ独立したシナリオとなっています。

 

ジャズの雰囲気が似合うストーリーとキャラクターで、

アドベンチャーにありがちな萌も媚びも恋愛もありません。

それなのに、人間模様を繊細に切り出し、

人間の明暗や心理を見事に描き切った、

非常に魅せる渋いシナリオ展開には舌を巻きました。

今時これほどシナリオに魅力のある、

深みのあるストーリーは珍しいでしょう。

メインキャラクターの魅力もだいぶ作風に加味されているとは思うのですが、

それでも素晴らしいシナリオです。

 

ジャンルは一応推理物ですが、推理を期待してはいけません。

このゲームは推理より、起こったドラマチックな事件を楽しむ、

というのがメインで、こちらに推理する要素はほとんどありません。

一応推理シーンもあるのですが、間違っても何度でもやり直しがきくため、

結局は総当りコマンドになっています。

 

また、従来の推理物とは違い、次にどこに行くのか明確になっており、

非常にテンポがいいです。

言った先々でまるでそれ自身が手繰り寄せられるかのように、

簡単に情報が手に入ってくるのがやや作為的に感じますが、

テンポを殺さず、プレイヤーの関心を手放さずの絶妙なバランスだと思います。

あまり意味のないところをぐるぐると回らされるよりも、

シナリオを魅せるという観点から見ると優れているため、

その辺りは目をつぶりましょう。

 

 

システムは無難ですね。

捜索シーンで、どれを調べてよいかわかりづらいのが少々難点です。

調べるポイントごとに枠で囲む等の工夫が欲しかった。

セーブはどのシナリオを読んでいるか、

場所、プレイ日時とプレイ時間が表示されるのみですが、

そもそもバッドエンドがなく、そのまま真っ直ぐ読み進めるタイプのため、

特に問題ありません。

メッセージスピード、BGM・SE・VOICEボリューム、

ステレオかモノラルか、テキストウィンドウの透過度と、

システムはコンパクトながら無難に纏まっています。

 

本作はバグがあります。

鬼姫伝4章冒頭、上画面にイメージグラフィックが表示された後、

「事件の発端は6年前。」

というテキストが表示されるポイント付近でセーブしたデータを

ロードするとソフトが強制終了します。

4章全部というわけではないみたいですが、

鬼姫伝4章の最初頃はセーブしないようにしてください。

 

3DSらしくタッチパネル対応型になっていますが、

テキスト送りが下画面の一部だけというのが少々難点。

十字キーとボタンでも十分操作できるようになっています。

バックログもあるのですが、一行表示で、

表示される行数がかなり少ない目なのも残念ですね。

文章のスキップやオートモードが無いのですが、

会話する人物や見る場所がコマンドを

一々選択するタイプですし、何度も同じテキストを見るタイプでもないので、

しょうがないかもしれません。

 

 

グラフィックですが、神宮寺らしさが現れているイラストで非常に雰囲気が良いです。

立ち絵、ムービー共に渋いイラストで統一されているのですが、

「揺らめくひととせ」にやや違和感があります。

「謎の事件簿」はかなり違い、コミカルなデフォルメ絵ですが、

そもそもこれは従来からこういう、

本編とは全く毛色が違ったタイプの遊びのシナリオでしたので、

それをわかって楽しむのならば問題ないでしょう。

全体的な彩色も味のある渋い色合いとあいまって、

実に良い雰囲気に仕上がっています。

 

立ち絵はお話毎に一新されています。

全部独立して売られていたみたいですし、

一部違和感のあるシナリオもあるものの、

概ね問題なく上手に雰囲気を合わせてきていると思います。

御園洋子のみシナリオ毎に別人クラスの変貌があるのですが、

これもシリーズの伝統ですので、シリーズプレイ者からすると

今度はどういうタイプになるのかという楽しみもあります。

 

 

プレイ時間は約16時間。

新シナリオGHOST OF THE DUSKが7時間、

それ以外のシナリオが大体2時間ずつ、

謎の事件簿が30分程度です。

全てのストーリーを丁寧に読み、謎の事件簿をクリアしました。

いささかボリュームに物足りなさを感じます。

 

全体的に作風を大事にし、イメージを出来るだけ壊さないように

丁寧に作られた作品だと思います。

実に雰囲気の良い作品であり、

この独特の作風は他ではなかなか真似が出来ないでしょう。

しっとりとした人情味の溢れるシナリオは、

奇抜さや目立った派手さはない物の、非常に完成度が高く、

落ち着いた渋さを感じさせます。

今時貴重なシナリオですね。



HOME    BACK

inserted by FC2 system