探偵・癸生川凌介事件譚

 

仮面幻影殺人事件

 

一言レビュー

降り積もり、翻るのは仮面と言う名の幻

 

グラフィック 7点
シナリオ 9点
ボリューム 7点
快適さ 8点
満足度 9点
総プレイ時間 14時間
総合評価 80点

 

 

それは、送られてきたひとつのソフトにより始まった。

「ミスティ・オンライン」

一風変わった推理物のオンラインゲームだった。

送り主は制作会社のプロデューサー。

現在βテスト中のもので、

鞠浜市付近にのみテストプレイヤーを応募したものだが、

是非試して欲しいとのメッセージが入っていた。

 

知り合いである癸生川の探偵事務所を訪れた生王(イクルミ)は、

探偵助手である伊綱と早速プレイを始める。

ログインした街でユーザー達に誘われて、

参加することになったイベントで、

イベントのシナリオに沿ってアイナと言う人物が殺された。

殺されたのはイベントだと思っていたのに、

実際のプレイヤーであるアイナの応答がないという。

慌ててログオフすると、一本の電話が掛かってきた。

イベントで事件現場になっていたマンションのモデルになった場所で、

イベントと非常に良く似た死に方をした人物がいたらしい。

 

現実とネットが錯綜する。

幾重にも折り重なる幻影と言う名の仮面。

犯人は、幾重もの仮面をかぶり、

幻影のように見え隠れして、闇に遊ぶ。

殺したのは誰?

ネットに潜むM2という殺人者は?

何故同じ時刻に、同じような事件が現実に起こったのか?

事件の真相は、三年前に起こった放火殺人に隠されていた。

 

 

ほのぼのとしたお人形めいた絵柄とは対照的に、

物語が負う闇は深く、重いストーリーになっています。

13歳の年端のいかない子供が起こした残虐な放火殺人事件、

ネットに潜むどきりとするほど深い闇。

現代の闇を浮き彫りにするかのようなストーリーは、

はっきり言えば大人向けでしょう。

ただその分事件の主軸はしっかりとしていて、

潜む闇にゆっくりと浸ってゆくかのような

滑らかな口調のテンポは、

プレイヤーをストーリーに上手く引きずり込んでいきます。

熱中度はかなり高いですね。

 

事件自体もメリハリがきいていて、

プレイヤーを飽きさせない趣向は素晴らしいですね。

二転、三転する事実、

そして最後に全ての推理をひっくり返され、

暴かれる真実。

複雑に絡み合った糸がゆっくりと解き放たれ、

そしてその奥に更に隠されたものを広げていく展開は、見事でした。

近年稀に見る推理ゲームのストーリーでしょう。

携帯ゲームでこれほど高度なストーリーを

楽しめるとは思っても見ませんでした。

 

ただこの最後に明かされる真相には、賛否両論あるみたいですね。

プレイヤーが考えて解いた真相を、

次々と塗り替えていく様を圧巻と言うか、

勝手に他人がバーッと意外な真実を

べらべら喋って解いたのは面白くないと言うか、

プレイヤーでかなり差が出るようです。

私としては次々と翻っていく意外な真実に

圧倒され、感心したほうなのですが。

 

このゲームのキャラクターですが、

非常に濃い人たちが揃いも揃っています。

普通、ここは個性的とか魅力的とかいうべきなのですが、

とにかくキャラクターが強烈です。

現実にいないタイプが多いのですが、ゲームの中ですので、

このぐらいでもいいかなと私は思ったのですが、

このキャラクターたちを魅力的ととるか奇妙なものととるかは

人によってバサッと分かれるような気がしますね。

とにかく異常にキャラクターが立っていて、濃いゲームです。

 

 

システムは良い目です。

さすがDS。やはり推理物には圧倒的に相性が良いですね。

いちいちコマンドを選ぶ必要もなく

(もちろんコマンドを選ぶことも出来ます)

タッチパネルで操作していくのは圧倒的に操作性がいいですね。

 

両面パネルの使い方もさほど問題はないと思います。

ネットにもぐりこんでいる時は上にはネットの中、

下は現実の絵が表示され、

そうでない時はメモ帳が表示されます。

ただこのメモ帳の表示の仕方がちょっと問題で、

Lを押しながら十字キーを操作しなければいけないというのが

ちょっと難しかったですね。

Lボタンを押し損ねると、ページがめくれなかったり、

メモ帳が閲覧できなかったりします。

 

推理物で、自分で推理をしていくタイプですが、

大概はヒントがあるためストーリーを進めるのはさほど難しくありませんが、

極稀に殆どノーヒントのものがあるのがちょっと意地悪ですね。

ひとつだけどうしても分からない暗号があり、

ネットで探してしまいました。

プレイヤーがどうしても解けない場合、

ちょっとずつヒントを与えていくか、

自動的に進行するようにした方が良かったかな、と思います。

 

後もうひとつ。

クリアランクがあるのですが、これがどうにも分かりません。

良くても悪くてもメッセージが変わるだけみたいで、

いい成績をとったとしても何もないというのがちょっと。

何かストーリーや後日談が追加されるとかの

ご褒美があっても良かったと思いますね。

 

 

グラフィックですが、DSとしてはこんなものかと。

レベルとしては可もなく不可もなく、ですね。

このゲームに関してはあまり言う事はありません。

ただ、シンプルを通り越してお人形めいた絵は、人を選ぶと思います。

ストーリー自身が人の心にすっと突き刺さるような

現代社会の闇を表現しているので、

もうちょっとリアルテイストのほうが良いと思いますね。

 

あと人物がアップになる場面があるのですが、

無理やり小さいものを引き伸ばしているみたいで、

絵がかなりにじんで汚くなるのがちょっと。

アップ用に調整して欲しかったところです。

 

 

プレイ時間は正確な時間はわかりませんが、約14時間。

基本的に一本道です。

選択肢によりちょっと枝分かれするものもありますが

携帯機としてはこんなものでしょう。

 

とにかくストーリーがハイレベル。

見事なまでに組み上げたストーリーは素晴らしいですね。

ソフトケースの裏面を見て、もうちょっとほのぼの系かと思った私を

殴り倒すぐらいのインパクトがありました。

DSでいいアドベンチャーをプレイしてみたいと言う方にはオススメです。

絵がちょっと、と言わずに遊んでみてください。


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