加奈

〜いもうと〜

 

一言レビュー

絵の癖が強く、内容はプレイする人を選ぶ

 

グラフィック 5点
シナリオ 7点
ボリューム 4点
快適さ 8点
満足度 6点
総プレイ時間 13時間
総合評価 58点

 

 

主人公、藤堂隆道には2つ下の病弱な妹がいる。

慢性腎不全で、幼い頃から殆どを病院で過ごしていた。

そんな病弱な妹、加奈に両親はかかりきり。

どんな時でも常に優先されるのは妹の加奈。

子供心にも不快に思っていた隆道は、

ハイキングに来たのにずっと父に背負われている妹に心穏やかではなかった。

 

父母の目が離れた途端、子供の残酷さで加奈に意地悪をする。

ストレスのあまり真っ青な顔をして吐き戻し、うずくまる加奈に焦りを覚え、

ちょっとしたことですぐに具合が悪くなるので意地悪をすることはやめた。

殆ど病院から出ることはなく、何も知らない妹に

ぶっきら棒ながらもかまっているうちに、隆道は疲れていつしか眠っていた。

しばらくして、両親の切迫した声に目を覚ます。

加奈がいなくなったのだ。

両親の目を盗んで加奈を探しに行き、ようやく見つけたと思ったら、

目を離した隙に加奈はスズメバチに襲われていた。

咄嗟に我が身で加奈を抱き込み、

全身で加奈を庇ってスズメバチの攻撃を一身に受けた隆道は、

しばらく生死の境を彷徨った。

 

それからだ。

病弱な妹を気にかけるようになったのは。

すぐに体調を崩して入退院を繰り返し、人生の殆どを病院で過ごす妹。

加奈を守れる者は少なく、自分はその数少ない一人である。

それに気づいた隆道は、常に加奈に気を配り、

両親に呆れられるぐらい過保護になっていた。

守るべき病弱な妹。

その視線はいつしか妹に向けるものではないことに、

隆道は気づき始めていた。

 

 

という、どこか禁断の愛めいた、暗く、死と隣り合わせの、

ドロドロとした愛憎劇です。

死生観を含んだ繊細で美しい純愛ものではなく、

非常に人間らしい醜悪さや精神的な脆さがあり、

とにかく、主人公の思考回路や行動が

ある意味嫌悪をもたらすものがあります。

妹が好きだと思いながらも他の女性と付き合うことにしたり、

その付き合い方がなし崩し的なものでありながらも、

しっかりやることはやっていたりと、

現実味があると言えばそうなのですが、

もっと純粋で雪の結晶の様な繊細な美しさを期待していた分、

なんとも期待はずれなものを感じたのは事実です。

 

ひたすら兄だけを慕い続けている純粋で清廉な妹、加奈と、

性欲に負け、半ば加奈の身代わりとして彼女と肉体関係を持ち、

二人の女性を両天秤にかけながらも

妹に傾倒する兄隆道は、ある意味非常に対照的。

2人は光でありながらも影、影でいながらも光なのだと思います。

人間の美しさと、人間の醜さが入り混じる様は、

醜悪でいながらも美しく、悲壮感を彩りに添えて、

とても好き嫌いのわかれる内容になっています。

どこか息苦しさを感じる内容なのですが、テンポよく進み、

アドベンチャーとしてはかなりボリュームが小さい。

あまり引きずることなく終わると思うか、

短すぎると思うか、判断に悩むところです。

ハッピーエンドが好きという方はあまりお勧めできません。

 

 

 

システムは基本を押さえ、細かに配慮した万能タイプ。

ナルキッソスやシークレットゲームで使われていたシステムと

ほぼ同じものだと思われます。

セーブシステムが非常に優秀なシステムです。

ただ、上記よりも見劣りするのが、

オートモード時、全テキストがボタンで

ページ送りが一切できないようになっている点。

この辺が非常に苦しい。

また、オートとスキップの併用ができず、

未読のテキストになるとスキップが強制解除されてしまいます。

上記ゲームは繰り返しプレイするタイプではなかったので気づきませんでしたが、

今作は同じルートを何週もする必要上、この辺がかなり気になりました。

 

メモリインストールは有りです。

読み込みに関してはとても快適。

オートモードがシングルアクションでできないのも他ゲーム同様、

オートモード時、キャラクターのセリフ(音声ありのみ)が

一括表示されない点も同様ですね。

ですが、PSPのシステムとしては良い方だと思います。

 

 

 

グラフィックは非常に癖が強く、人を顕著に選ぶタイプ。

パッケージに出ているのはクオリティの高いものを厳選しているので、

あれを想像してはいけません。

CGによってもクオリティの差が激しく、

別人が描いたと一目でわかるタイプの違うCGも混在しています。

顔の造作も安定しておらず、CGによって差があります。

絵の塗はずっしりと重く、もったりとしたやや濁りのある色合いで、

雑でお世辞にも美しいとは言い難いです。

その中でも立ち絵は比較的マシであると言えます。

立ち絵は良い方で安定していますね。

 

CGの枚数は差分抜きで75枚。

差分はまずまずの枚数です。

プレイ時間がかなり短いので全体的な枚数は大分多め。

余裕のある枚数だったと思います。

絵に関して褒められるのは枚数ぐらいでしょうか。

 

 

 

プレイ時間は13時間。

ドロドロとした人間臭い愛憎劇です。

醜悪で、悲壮で、美しい。

主人公の二股をかけるような行動を許容できなければ厳しいと思います。

また、ヒロインの加奈自身が常に死と隣り合わせの立ち位置におり、

死を間近に感じる作品ですので、そういうのが嫌いな方は向きません。

絵のクオリティは低く、非常に人を選ぶ絵柄。

ボリュームのなさ、癖のある絵柄、主人公の身勝手な行動という、

三つをクリアできる人でなければ厳しいと思います。




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