カタハネ

 

−An‘call Belle−

 

一言レビュー

人形の織り成す群像劇

 

グラフィック 8点
シナリオ 8点
ボリューム 7点
快適さ 9点
満足度  7点
総プレイ時間 25時間
総合評価 78点

 

 

 

貴石を得て感情を持ち、人と会話し、食事をする人形「シスター」

一目で人形とわかるものから、人と見分けがつかないものまで、

様々なサイズや姿かたちを持つ人形が、人と共に生きる世界。

しかし、古い昔から脈々と受け継がれる技術は、徐々に衰退へと向かっていた。

 

そんな一体、古い人形であるココと生きるセロ・サーデは、

父母を失った自分の後見人をしてくれている、

国宝級の人形技師レイン・ヘルマーに、

ココのメンテナンスのためにジルベルグへ来るようにと誘われた。

もちろん、親しい友達を伴ってきても良いと沢山の旅費を送金され、

モスグルンに引っ越してから親しくなったパン屋の姉弟

ワカバ・フォーレとライト・フォーレと共に、

ジルベルグへと向かっていた。

 

折しも脚本家を志望していたワカバは、

演劇祭での劇の内容を「天使の導き」と決めていた。

「天使の導き」とは、白の国最後の女王であり、

歴代の当主の中でも屈指の人形調律師と謳われた

クリスティナ・ドルンを題材にした、白の国末期の物語。

後見人だったアイン・ロンベルグに裏切られて殺された

クリスティナの悲劇のストーリーなのだが、

その劇を行おうとすると、不思議と役者が事故にあったり、

怪我をしたりと不運が降りかかるという曰く付きのシナリオだった。

 

丁度人形技師にインタビューをしたかったのと、

好意を抱いているセロと旅行できるということで、

ワカバはこの旅行を密かに喜んでいた。

レインに劇の支援を取り付けたワカバは、

その条件として提案された青と赤と白の国の都市を回りながら、

劇の役者を集めることになります。

 

物語は現代のシロハネ編から、悲劇の終わりを迎えた

白の国末期のクロハネ編へと進んでいきます。

何故アインは姫君殺しをしたのか、

両編に登場するココとエファ(ベル)を元に、

白の国の終わりの真相に迫っていくストーリー。

とにかく過去編の完成度が高く、

青と赤の共国から板挟みになり、国を何とか守っていくための

苦難が切々と語られていきます。

 

その点、現代のシロハネ編は文章を読み飛ばしたのかと思うほど、

シーンがいきなり飛ぶことがたびたびあります。

このルートではここが一番重要だろうと思われるシナリオが

語られることなく飛ばされたりしており、

また伏線が未回収なままふっと終わったりしていて、

なんとも消化不良を覚えます。

どこかしら未完成感を覚えるシナリオですね。

 

視点は登場する各キャラクターから

様々に移り変わっていく群像劇となっており、

誰が主人公というわけではありません。

同性の恋愛や人間と人形の恋愛に禁忌感はなく、

なんとも自由な世界観ですね。

また、18禁要素はかなりギリギリまで攻めており、

携帯機とはいえ、コンシューマーのゲームで

ここまで表現できたと感心しました。

 

 

システムは流石のプロトタイプ、高レベルです。

スキップする時、選択肢かチャプターへ一気にジャンプすることが可能なのですが、

チャプターが実に細々と設定されており、

次の選択肢へなかなか辿り着けないのが難点でした。

スキップとオートが併用できるのですが、

選択肢でスキップがキャンセルされるのがいささか問題ですね。

それ以外は問題ありません。

文字数待機時間も設定できるので、オートが実に快適です。

履歴からのジャンプもあり、各人物毎にボイスボリューム調整可能と、

実にかゆいところに手の届く良いシステムです。

 

 

 

グラフィックはふんわりとした素朴な絵柄。

やや簡素なところもあるのですが、

比較的万人向けだと思います。

立ち絵と顔立ちに違和感を覚えることもありますが、

比較的安定していると思います。

非常に残念なのが立ち絵です。

ほとんどの人物のポーズバリエーションが一つしかなく、

シナリオ中でかなり違和感があります。

せめて一人あたり数パターンのバリエーションが欲しかった。

 

CGの枚数は差分抜きでシロハネ編95枚、

クロハネ編37枚で合計132枚。

シナリオボリュームがやや少なめ〜普通なので、かなり豪華な枚数です。

差分もたっぷりとあり、殆どのCGに差分があり、

二桁の枚数はもちろんの事、47枚もの差分を誇る枚数のCGまであります。

差分があるのはいいことなのですが、その分の情熱を

是非とも立ち絵の方へ注いでほしかったとやや残念に思います。

塗はふんわりとやわらかで穏やかな塗であり、

元のイラストに上手くマッチしています。

 

 

 

プレイ時間は約25時間。

時間が表示されないタイプですので、約の時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

様々な視点から語られる三国の歴史を感じる群像劇です。

過去編のクオリティは素晴らしいのですが、

現代編のシロハネ編はいきなりシーンが飛ぶところがあり、

伏線も微妙に放り投げられていて、

やや未完成を感じるシナリオです。

 

アンジェリナと人形の少女ベルが

メインの様なパッケージデザインに感じますが、

実際は複数のパートナーが存在しており、

殆どが男女の組み合わせですので、

純粋な百合ストーリーを思い浮かべると

肩透かしを感じるかもしれません。




HOME    BACK

inserted by FC2 system