家族計画

 

 

一言レビュー

家族の無い者たちとの疑似家族生活

 

グラフィック 6点
シナリオ 7点
ボリューム 8点
快適さ 6点
満足度 7点
総プレイ時間 61時間
総合評価 68点

 

 

 

深夜、バイト先の裏口にごみを捨てに行った沢村司は、

どう見ても訳有りとしか見えない際どいチャイナドレスを着た少女を見つけた。

バイト先の店長代理に無理矢理保護することを命じられた司は、

しぶしぶ意識を失っている少女を一人暮らしの家に連れて帰った。

彼女は中国から密入国してきた少女、王春花で、

中国系マフィアのもとから逃げ出してきていた。

その日から、司の穏やかだが退屈な日常は激変した。

 

春花を取り戻しに来たマフィアと、

訳が分からないうちに家へ押しかけてきていた奇人の広田寛との抗争で、

司の住んでいたアパートは半壊し、

大家から借用書を押し付けられつつ追い出されて、

三人は路上生活を余儀なくされる。

 

橋から落ちかかっていた、

実は自殺しようとしていた元会社秘書の板倉真純を助け、

司と元恋人関係にあった大河原準と再会し、

空き家に無断で生活していた河原末莉に出会い、

空き家の正当なる持ち主である高屋敷青葉が家に戻ってきて。

 

嫌がる青葉を説き伏せて、寛の発案で

全員空き家に相互扶助を掲げて住みこみ、

疑似家族計画を実行することになった。

 

 

という、家族と生き別れ、家族に離縁され、

家族に虐待されたという、家族に縁のない者たちが

一つ屋根の下で疑似親子兄弟姉妹となって暮らす、

どうにも歪な生活が描かれていきます。

全員家族というものから離れざるを得ない事情を抱えており、

心に深い傷跡を残す者たちばかりです。

それでもぎこちなく、一部不協和音を奏でる者を内包しつつも

仲良く過ごすうちに、いつしかそれぞれを疑似家族として

情を移していくことになります。

 

ですがそれも長くは続きません。

歪な家族計画は、いつしか決定的な打撃を受けて、

砕け散るガラスのようにあっという間に崩落していきます。

それぞれのルートでその家族計画崩壊の過程が

違う感じになっているのかというとそうではなく、

どのルートでも概ね同じ未来をたどることになるため、

全ルート本当に終盤近くまで

どこかで見たストーリーで新鮮味がありません。

またこのパターンかと思うと少々うんざりさせられました。

ものすごく都合の良い終わりを迎えているエンディングもあり、

その辺がちょっと目につきますね。

 

ですが一歩ヒロインたちの事情に踏み込むや、

粘り強く、無愛想だが優しく、可能な限り助けようとする司と、

ヒロインたちの好意から愛へと変わる感情が色濃く描かれており、

家族と引き裂かれながらも家族を求める彼らの思いを

それに絡めて丁寧に描いており、暖かい感動要素があって、

ほとんどのルートで見せ場が用意されています。

 

ただし、共通ルートが異常に長い。

全員集まって高屋敷家に同居するまでが約10時間、

共通ルートは私がプレイして23時間ほどでした。

それに相反してヒロインルートは4〜5時間程度と、

とてもアンバランスです。

共通ルートが丁寧に描かれ、家族として互いを認め合う過程上

必要だったのは理解できますが、あまりにも長いルートと膨大な選択肢に

飽きるものがあったのは確かです。

 

 

 

システムはアドベンチャーに必要なものは一通り揃っていますが、

最大の難点はインストールデータがスリープから復帰すると読み込めなくなり、

最悪フリーズするというバグです。

こうなると、インストールデータを利用するには毎回ゲームを終了させ、

ゲームを再開するごとにUMDを起動する必要が生じます。

インストールがないゲームも数多ある中、

あるだけマシのような気もしますが、

あるのならば快適に利用したいものです。

一々ゲームを終了させて、ゲーム中にスリープモードに移行できないのは

地味に煩わしかったです。

 

次に悪いのがセーブ関連。

3回も「はい」を押さなければいけないのは苦痛でした。

「上書きしてよろしいですか?」と表示され、

はいと押すと「データを上書きしますか?」と

先ほどと同じ意味合いの質問をされ、

なおかつその時にあっているカーソルは「いいえ」です。

そして次にシステムデータもセーブさせようとしますが、

その時にあっているカーソルはまたもや「いいえ」

「いいえ」を押そうものなら「セーブを中止しますか?」と

数段構えでメッセージが出てくる仕様で非常につらい。

システムデータをセーブしなければ、

2週目プレイ時に既読ではなくなりますし、

インストールデータを利用するには

毎回セーブして終了させなければいけない仕様上、

このシステムは頻繁に利用するだけあって大変苦痛でした。

その上ロード時には最新データではなく、

必ず一番上のデータにカーソルがある。

セーブ関連にはイライラさせられっぱなしでした。

他が快適なだけに、これらのよく使うシステムの出来が悪いのが足を引っ張っています。

 

 

 

グラフィックは非常に古臭い絵柄で、

今でしたら受け付けない方が結構いるのではないかと思います。

ですが何分古いゲームですので、かなり甘めにつけてあります。

CGによっては顔が崩れているものもあり、

着彩もあまり美しいとか綺麗とか丁寧とかは言えません。

目元が非常に特徴的であり、ここをちょっといじっただけで

大分良くなったであろうと思うだけに非常に残念です。

立ち絵も女性陣はともかくとして、多くの脇役男性は

う〜んと思う見苦しいものばかりであり、

お世辞にも良かったとは言いかねます。

あまり気にしないという方ならばといった感じでしょうか。

 

 

CGの枚数は差分抜きで107枚。

基本的な枚数はプレイ時間から見るとやや少ないのですが、

差分は結構あります。

絵でOKが出せるのはここぐらいでしょうか。

 

 

 

プレイ時間は61時間。

全エンディングを制覇していますが、

シーンタイトル、既読メッセージ等は全部読んでいません。

 

家族との関係、繋がりをモチーフにしたストーリーです。

虐待、離別、離縁という重いモチーフを取り扱っており、

コメディ部分もありますが、

どちらかというと薄氷の上を歩くような、

壊れやすく、歪で、暗いストーリーです。

 

そしてそれに加え、司には小さなころだけで、

多感な幼少期以降は決して与えられることのなかった家族を、

似たように家族に関して傷つけられてきた

ヒロイン達と共に築くというストーリーであり、

感動要素もきちんとあるものの、

異常に長い共通ストーリーと、

どのルートにおいても同じような結末を

終盤近くまで辿るというところは最大の難ポイントですね。

 

また、絵においても古い作品であるということもあり、

お世辞にもクオリティが高いとは言えません。

特に全員をプレイする必要はなく、

青葉、末莉はプレイしておいたほうが良いといった具合です。

気に入ったヒロインをプレイして終了しても構わないと思います。

それを覚悟してそれでもというのならばでしょうか。

同時期に「WHITE ALBUM2」を

並行プレイしてしまったために、

どうしても辛めになってしまいました。




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