この大空に、翼をひろげて

CRUISE　SIGN

一言レビュー

眩しいほどの青空と青春

自転車競技部に所属していた水無瀬碧は、

事故で膝を痛めてしまい、選手生命を絶たれてしまった。

そのままその学校に居続けることが辛く、故郷の風ヶ浦へ逃げるように戻り、

恵風学園に途中編入すると同時に、

不動産業界に務める母に求められて、

恵風学園の学生寮トビウオ荘で寮母をすることになった。

トビウオ荘に行くには少し早く、何とはなしに

風車が多数設置されている丘を散歩していたところ、

空から紙飛行機が落ちてきた。

紙飛行機を飛ばした主を探して丘を上がったところ、

そこにいたのは車いすに乗った少女、羽々音小鳥だった。

車椅子の車輪がパンクしてしまい、身動きが取れなくて困って、

藁にも縋る思いで誰かが来てくれないかと紙飛行機を飛ばしたのだという。

以前入っていたクラブの影響で修理道具を持っていた碧は、

小鳥を車椅子から降ろしてパンクの修理をした。

そんな二人の頭上を、優雅に飛ぶ白いグライダーが現れた。

青と白の見事なコントラストに見惚れる二人。

それは、恵風学園のソアリング部の唯一の部員であり、

恵風学園きっての天才兼伝説の先輩、

望月天音がテストフライトをしていた姿だった。

部員が一人ということもあり、

廃部の危機に立たされているソアリング部での、

青春と恋愛の日々を、青空を交えて、色鮮やかに描いています。

空を飛ぶという以外は特に目立った派手さはないのですが、

眩しいぐらいの青春をこれでもかと言わんばかりに見事に詰め込んでいます。

楽しそうに部活に勤しむ部員たちの中で、

気になるあの子と仲良くなっていくといった、

さほど変哲のないストーリーなのですが、

ヒロイン達の魅力も相まって、

目の醒めるような鮮やかさで繰り広げられています。

こんな青春を送りたかった彼らの眩い学生時代は、

憧れと共に見てしまいますね。

このゲームならではのシナリオや、

感動要素といったものはあまりないのですが、

主人公たちが物凄く楽しんで充実した生活を送っているのが感じられ、

大変うらやましく感じます。

ギュッと青春を凝縮して青い玉に閉じ込めたかのような作品で、

これぞといった目だったものはないのですが、

非常にバランスの取れたシナリオです。

ファンディスクのFLIGHT DIARYも入っており、

アフターストーリーも完備。

サブキャラクターもファンディスクパートでヒロインに昇格しており、

とてもボリュームのある作品です。

システムはアドベンチャーのシステムとしては標準で、

大体のシステムは搭載されています。

履歴からのジャンプも可能で自動クイックセーブも２７あり、

それなりに快適なのですが、

オートモード中に何も操作しなければ

光度が落ちるというＶＩＴＡの欠点が制御されておらず、

オートモード中は絶えずボタンか画面に触って光度が落ちないように

プレイヤーがしてやらないといけません。

なぜがスキップ中は光度が落ちなくなってはいるのですが。

タッチは全くの否対応で選択肢を選ぶのにも、

トップ画面にも、何一つとして使えません。

もうちょっとタッチも使えるようにしてくれても

良かったのではないかと思います。

グラフィックは、作風に合った色鮮やかな絵柄。

特に癖もなく、万人受けする絵柄だと思います。

塗の美しさや繊細さもストーリーに非常にマッチしており、

背景もとても美しく、風車の丘などの

自然の美しさにも拘って描いていると思います。

やや違和感を覚える構図や、

顔がちょっと不安定になっているＣＧもありますが、

大部分は安定していると思います。

ＣＧの枚数は差分抜きで本編７１枚、

ファンディスクパート６６枚、前１３７です。

その内デフォルメ絵がそれぞれ１９枚、１５枚ですが、

本来のＣＧの枚数もそれなりで、特に問題ない枚数だと思います。

差分はとても多めで、差分を含めた全枚数は７０８枚。

殆どのＣＧに差分があり、

とても丁寧に差分が描かれています。

プレイ時間は約６０時間。

時間が表示されるタイプですので正確です。

全エンディング、ＣＧ、音楽をコンプリートしており、

プラチナトロフィーを取得しています。

非常に雰囲気の良い作品であり、

眩いばかりの青春と青空をぎゅっと閉じ込めたような作品です。

こんな学生時代あったらよかったなというストーリーで、

正直この世界で生きて、恋と部活に輝いている

キャラクター達がうらやましく感じます。

特に目立った特徴や抜きんでた部分はあまりない作品ですが、

全体的なバランスやクオリティは高く、安定していると思います。

これぞ青春といったストーリーを探しているのならば是非お勧めです。