クロガネ回姫譚

 

−閃夜一夜−

 

一言レビュー

陰謀渦巻く平衡世界譚

 

グラフィック 6点
シナリオ 9点
ボリューム 8点
快適さ 6点
満足度 8点
総プレイ時間 35時間
総合評価 79点

 

 

 

終戦末期、1945年2月4日。

俗にリヴァの悲劇と呼ばれる惨劇が起こった。

マンハッタンをはじめとする主要都市が

相次いで巨大なクレーターを刻まれ、消滅した。

膨大な死者を出した惨劇は戦勝国となるはずだった国々に

凄まじい混乱を来たし、敗戦間近だった日本の件は有耶無耶となり、

そのままどの国にも平等な平和条約締結に至る。

そんな、日本の敗戦、原子爆弾投下がなかったことになった世界。

世界ではテロが蔓延していた。

 

私立鏡ヶ原特殊高等警察養成第一学園。

岐阜県南部、鏡ヶ原市にある、特警庁管轄の学園であり、

将来的には特警や警察省に入る者達の育成機関であるその学校には、

黒金育成班という特殊な少人数がテロの制圧に試験的に携わっていた。

彼らの持つ黒金という特殊な物質で生成されたそれは、

石毎に特殊な形状、能力を持っていた。

その黒金を操る才能を持っている人間はごく一部であり、

かつ、その黒金使いとなってテロ制圧に駆り出されることに承諾した者達のみ、

黒金育成班、略して黒金班に入ることができた。

白銀正宗はその中の一人。

実働で動くことのできない班長、天照一期に代わって

現場での指揮を任されていた。

 

テロが世界中にはびこる中で、テロの阻止にかかわっていくうちに

日本の暗部を覗き込み、70年前に起きたリヴァの悲劇、

黒金の元となった現晶、

そしてこの世界の謎に深く踏み込んでいくことになります。

 

 

物語自体は4人のヒロインを上手に生かし、

4人のヒロインでそれぞれ伏線を展開、回収し、

その開示された伏線を一気に最後のルートで回収して行く手腕は見事です。

ヒロイン毎に丁寧に伏線を回収することで最終ルートをコンパクトにし、

全伏線を最終ルートでうまく生かして

エンディングへ至っているのはいいですね。

中には伏線を回収するためだけのヒロインも存在していますが、

どのルートも終盤の展開や疾走感は素晴らしく、

エンディングに向けて爆走しているスピード感は素晴らしいです。

終盤はどのルートも熱いバトルと展開で、

食らいつくようにプレイしてしまいました。

戦闘やバトルものが好きならうまくはまれるでしょう。

 

 

 

システムは一見快適に見えます。

細部まで気を配ったシステムで、

アドベンチャーにあったらいいと思うシステムが

ほぼすべて盛り込まれていると思います。

ただし、欠点が二つあり、それが評価を著しく落としています。

 

まず一点がオートモード中、殆どのボタンを押すと

オートモードが強制解除される点です。

そしてこのシステムが、オートモード中に何も操作しなければ

光度が落ちるというVITAの欠点が制御されておらず、

オートモード中は絶えずボタンか画面に触って光度が落ちないように

プレイヤーがしてやらないといけないというシステムの障害になっています。

つまり、光度を落とさないようにプレイしようと思えば

ボタンか画面を触らねばならず、触るとオートモードが解除される、

というイベントが一分ごとにあるということです。

何か触るたびにオートが解除され、またオートを設定し、

というのが非常に面倒でした。

 

私がなんとか解決したのが、タッチ操作を無効にする、ということ。

タッチを無効にしてあるので、画面に触れても

オートモードが解除されずに光度を復帰させることが可能になりましたが、

その代わりに一切のタッチ操作が無効になってしまい、

無効にする前はタッチ操作もそれなりに使用していたので

できなくなったというのがとても煩わしかったですね。

ボタンでも操作できるのでそれでやればいいことなのですが、

もともとできていたことが出来なくなったというのはとても面倒なことです。

最低限、光度制御はアドベンチャー必須のシステムにしてほしいかと思います。

どのシステムがないより辛かった。

後気になる点は、システムやセーブ時がちょっと長め

といった事ぐらいでしょうか。

 

 

 

グラフィックはきりっとしたややあっさり目のタイプの絵柄。

ちょっと女の子の体の描き方に癖がありますが、

比較的万人向けです。

渋い人物や綺麗、可愛いも上手に描き分けています。

 

CGの枚数は差分抜きで74枚。

普通のアドベンチャーとしてはかなり少ないぐらいですが、

このシナリオから見るに全く枚数が足りていません。

戦闘がメインのシナリオなのに、

戦闘時のCGが圧倒的に足らないのです。

4枚のCG(差分除く)を随所で使いまわしており、

同じCGが頻繁に出てくるのはいささか興ざめですね。

今枚数を確認してあまりの少なさに愕然としてしまいました。

少ないとは思っていたものの、たったの4枚で戦闘が終始していたとは。

普通のCGが少ないのはともかく、

バトルメインでバトル時のCGの枚数が

全くもって足りていないのは厳しかった。

迫力がなく、殆どがテキストと立ち絵で

進行してしまうのは非常に残念でした。

 

差分枚数は問題なく、色の塗りもごく普通、

人物の塗は綺麗目なのですが、背景の塗がちょっと雑ですね。

人物の顔がCGと立ち絵で違うのが結構あります。

特にミカサと国綱が違いすぎる気がします。

国綱は一瞬誰? と思ってしまうほどです。

 

 

 

プレイ時間は約37時間程度。

時間が表示されないタイプで正確な時間が分かりませんので約の時間です。

特殊な平衡世界を上手に描き、見事に伏線を回収しています。

伏線の回収の仕方、終盤での手に汗を握る展開、

そして最終シナリオに至る過程は見事でしたね。

 

その分、システムの一部不備、

戦闘CGのあまりの少なさが非常に残念でした。

Win用に作られたものをコンシューマー移植、という形を取らず、

コンシューマー版でいきなり発売という形でしたので、

色々と足りず、逆移植した時に追加するのだろうなとは思っていたのですが、

余りにも足らなさ過ぎましたね。

逆移植が必ずあり、その時にヒロインが2〜3人ほど追加、

CGが追加になると思いますので、

こちらを買わず今後恐らく発売されるであろう

逆移植版のご購入をお勧めします。

Win版は18禁シーン、コンシューマーはシナリオ・CG・ヒロイン追加が

魅力だと思いますので、シナリオやCGの足りなさは残念です。




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