極限脱出 9時間9人9の扉

 

一言レビュー

9に拘ったストーリーが面白い初心者向け脱出ゲーム

 

グラフィック 7点
シナリオ 9点
ボリューム 8点
快適さ 6点
満足度 9点
総プレイ時間 20時間
総合評価 85点

 

 

爆発音とともに飛び起きた淳平は、

思いの外低い位置にあった天井に頭をぶつけ、

その拍子に三段ベッドの一番上から転げ落ちてしまった。

痛みをこらえながら周りを見回してみると、

そこはまったく見覚えのない場所。

赤い塗料で5の数字が乱暴に書きなぐられた、

出口らしき鉄の扉は全く開かない。

狭苦しい場所に閉じ込められ、腕には決して外れない、

液晶に5の数字が表示された腕輪が嵌められていた。

 

ふと気づいた小さな丸い窓は船に良く見る形だった。

その窓に吸い寄せられるように近づいた途端、

窓ガラスが砕け散り、大量の水が一気に室内へなだれ込む。

室内に散らばるアイテムとヒントを元に、

這う這うの体でなんとかそこから脱出した淳平は、

同じように、閉じ込められていた場所から脱出してきたという8人に出会った。

1〜9の、それぞれ違う数字の腕輪を嵌められていた彼ら、彼女たち。

困惑する9人に、船内のスピーカーからゼロと名乗る人物から、

命を懸けたノナリーゲームの開催を告げられた。

 

数字の書かれた扉の中に入って、

脱出するためのアイテムを手に入れなければならない。

一つの扉に入れるのは3〜5人まで。

そしてそれぞれの腕輪の番号を足し、

数字根が扉と同じ数字になる者たちしか扉の中には入れない。

数字根とは、扉に入る人物の腕輪の番号を足していき、

合計が二桁以上の場合は一桁目と二桁目の数字を足し、

最終的に一桁になった数字のこと。

扉に入ると内側の認証パネルに各人物の腕輪を

81秒以内に認証させなければ、

腹の中に仕込まれている爆弾が爆発して死に至る。

また、9時間以内に出口につながる9の扉の謎を解き、

脱出しなければ船もろとも海に沈む。

 

9時間という限られた時間を与えられ、

死のゲームを強制された9人の男女が、

時に相反しながらも船内の謎を解くという脱出ゲームです。

 

何故ゼロは9人の男女を誘拐し、

一つの客船を贅沢に使ったノナリーゲームを開催させたのか?

という謎を焦点に、命を無理矢理賭けさせられて行われる死のゲーム。

船内に散りばめられた謎を解いて脱出口を探ってゆくうちに、

一人、二人と死んでゆく。

彼らはだんだんと心理的に追い詰められていきます。

 

話の展開やあっと驚くトリック、

9という数字に細部までこだわった仕掛け、

DSの二つの画面を上手に使っている所等、

シナリオライターの才が随所に光ります。

ちょっとファンタジックな設定は

シナリオライター氏の代表作であるEver17を思わせます。

ノンストップで動いていくストーリーはとても躍動的であり、

怒涛のごとく走り抜けていく様は続きが気になり、

止め時が中々見つけられません。

各ストーリーをクリアすると粗や矛盾、明かされない謎が気になるものの、

大筋は見事に描いています。

もう少し細部を詰めて欲しかったかな、

と思うところもあるのですが、

命を懸けた脱出サスペンスという緊迫感を見事に描き切っており、

ややファンタジックな設定が大丈夫という方ならば、

お勧めしたいストーリーです。

 

 

ジャンルは脱出サスペンスアドベンチャー。

脱出ゲームなのですが、トリックよりも、

アドベンチャー部分に比重を置いたタイプです。

その為、初心者でもさほど悩まず解いていけるので、楽しいのですが、

脱出ゲームに重点を置いている方には簡単すぎるでしょう。

ただ、このゲームは気軽に解ける、

テンポ良くストーリーを進めていけるという点を大事にし、

引き込まれるストーリーを魅せるということに拘っているのだと思うので、

これはこれで良かったと思います。

あまり難しくしすぎて初心者が途中で挫折しない配慮なのだと

好意的に解釈しています。

 

画面にタッチすると、調べられるところは黄色の枠線で表示されます。

部屋の中のアイテムを物色しつつ、謎を解き、出口を探します。

部屋の中にヒントが散りばめてあり、

調べられるところは全部調べ、

メモを取ってきちんと考えれば

大抵の謎は解けるようになっています。

何度も間違えるとそばにいる人物がヒントを出してくれたりするので、

イライラさせられるところはあまりなく、

この辺も初心者向けですね。

 

 

システムはやや悪め。

このゲームは最低2週しないと真エンドにはたどり着けないという、

繰り返しプレイするタイプなのですが、

文章のスキップは十字キーの右を

押しっぱなしにしなければならず、手がだるいです。

一度解いた脱出パートでもスキップできず、

また一から解き直しになるのも辛かったですね。

脱出パート中に会話と選択肢があるため、

簡単にスキップをつけられなかったのでしょうが、

一度プレイした脱出パートはスキップするか否か

プレイヤーに選ばせ、スキップの場合は

場面を変えて会話をさせるアドベンチャーパートに

変化させたらよかったのではないかと思います。

また、周回するためには必ず最初から始めなければならないのが面倒です。

フローチャートなどを作り、好きなポイントから

やり直しさせてくれると良かったのですが。

アドベンチャーに必須の基本的なシステムはついているのですが、

上記の2点がとても大変だったため、

どうしてもシステムの悪さが目立ってしまっています。

 

 

 

グラフィックですが、かなり癖のあるタイプ。

癖というよりアクでしょうか。

ゲーム中でもソフト前面のタイプのイラストが使用されているため、

ちょっと人を選ぶものの、緊迫感あふれるストーリーに

マッチしていると思います。

立ち絵はアニメ調、時折表示される一枚絵は

比較的絵師に近い塗にされています。

 

ムービーはやや粗いところが見られるものの、

DSとしてはこのぐらいでしょうか。

人が惨たらしく死ぬシーンがあるのですが、

血は赤いものの、グロイところは表示されませんので、

血が苦手な方でも大丈夫だと思います。

特に指摘事項はないのですが、せっかくの豪華客船なのですし、

船内をもうちょっときらびやかに描いてほしかったのと、

立ち絵がもう少し多く欲しかった、ぐらいでしょうか。

 

 

プレイ時間が表示されないので、正確なところはわかりませんが、約20時間。

全エンディングを制覇しています。

謎解き部分はできるだけ自分で考え、どうしてもわからない部分や、

ルート選択は攻略サイトを頼りました。

面白くて一気に数日でクリアしてしまいましたね。

引き込まれる展開、新エンディング終盤のパタパタと折り畳まれて行く真相と、

9という数字に随所にまで拘ったストーリーは見事でした。

 

脱出ゲーなものの、初心者にも安心な難易度です。

脱出ゲーに比重を置いた方は簡単すぎて肩透かしを食らうと思います。

そのため、脱出の謎解きを期待する方はやめておいたほうが良いでしょう。

これはちょっとした謎解きと、何よりもその謎解きを利用した

スリリングなストーリーを楽しむゲームです。

打越氏のストーリーが好きな人ならば

是非ともお勧めしたいゲームです。




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