吸血奇譚ムーンタイズ

 

一言レビュー

どこまで行ってもプチハーレム

 

グラフィック 8点
シナリオ 6点
ボリューム 6点
快適さ 9点
満足度 6点
総プレイ時間 40時間
総合評価 67点

 

 

主人公、荻島潤は一人暮らし。

父は生まれる前に死んでおり、母も亡くして数年。

母の残してくれた家に一人きりで住む潤は、

満月を向かえるごとに激しくなる頭痛と熱を持て余しつつあった。

そんな頃、父の実家のメイドだという少女エルシェラントが

一通の手紙を携えてやってくる。

彼女が告げた衝撃の事実は、

荻島潤の父親は真祖の吸血鬼の直系であり、

潤も並外れた力を持つ吸血鬼であるということだった。

未だ覚醒していないが、満月ごとに具合が悪くなるはその前兆だという。

 

覚醒を迎える時、運命の輪は回り出す。

吸血鬼を狩る組織、ダイラス・リーンと、押し掛けてきた婚約者。

身の回りで次々と起こり出す変異。

作為的に吸血鬼にされた者達があちらこちらで動き出す。

様々な者達の思惑が入り乱れ、陰で暗躍する。

そこに隠された真実、亡くなったと言われる父に秘められた謎とは。

 

 

吸血鬼とは何か、という、設定は実に巧みに組み立てられています。

ここまで吸血鬼というものに踏み込んで設定を形作り、

独特の解釈を加えている吸血鬼物は珍しいでしょう。

吸血鬼という設定は使い古されているところがあるのですが、ある意味斬新。

そういう意味ではきっちりとした土台に

築き上げられた世界観ではありますね。

 

ただし、ルートごとにシナリオのレベルが歴然としているのは大問題です。

本編は奇想天外で力技で纏め上げていても、

勢いで有無を言わさず薙ぎ倒していくタイプで、爽快感があり、

ほとんどの真実が綺麗に明らかになりますが、

それ以外のルートがまるでもう、おまけで付けました、

専用ルート、PS2版でのオリジナルヒロインはやっぱりいるから、

無理矢理作りましたというのがあまりにもあからさまです。

ストーリーが適当でいい加減。

本編の縮小版かつダイジェスト版のような感じです。

本編であれほど苦労して倒した敵たちが、

あまりにも簡単に始末されているストーリーは正直幻滅でした。

 

また、純愛物が好みな人にはちょっと向きません。

どのルートでもとにかくハーレム。

あっちもこっちも手を出して、

周りにいる女性はほぼ主人公の恋人のようなものだと思っていいでしょう。

独り占めしたい雰囲気満々の女性が2人いる中で、

複数の女性を全部並列に扱い、それでもなお

他の女性をしぶしぶでも認めさせているところは流石と思います。

口が恐ろしく上手く、また頭が実に良い。

夢のハーレムストーリーを味わいたい!というのなら

良い話だとは思うのですが、

一人の女性に誠実であって欲しいと思う人はまず回避した方が無難です。

 

 

システムはなかなか良いと思います。

が、ゲーム性はほぼ皆無。

序章が終わった最初の選択肢とその次の選択肢で一気にルートが確定し、

本編ルートも最後の選択肢でどのルートか決まってしまうという、

実に簡単なルート確定条件です。

そのためゲーム性はほぼゼロ。

その辺は覚悟して挑んだ方がいいと思います。

 

他のシステムはまず高レベルですね。

アドベンチャーに必須のシステムは全て揃っており、

設定項目もかなり細かいです。

インターフェイスも作風を意識してゴシック調で良く合っていると思います。

エンディング後はおまけがオープンし、

シーン回想モードがあるのもいいポイントだと思います。

エンディングリストはありませんが、

BADエンドもシーン回想リストに表示されますので、

シーン回想がすべて埋まれば全エンディングを

制覇したということですので、特に問題はないと思います。

 

 

グラフィックですが、萌とはちょっと違うのですが、

比較的万人受けするタイプ。

綺麗系の絵柄です。

また、塗りが丁寧でとても綺麗です。

アップにしてもにじまず、綺麗に表示されるのは、

そもそもアップパージョンで絵が描かれており、

それを縮小表示にして見せているからだと思います。

ですので、本来の大きなサイズにしても発色が良く、実に綺麗ですね。

CGの絵柄もまず安定しており、全体的に上手にまとめ上げられています。

CGの見せ方も上手く、

絵を分割してスライドさせたり、2枚の絵を組み合わせたり等、

なかなかセンスの光る演出です。

 

ただし立ち絵に一部違和感のある人物があるのがちょっと残念です。

特に男性キャラの立ち絵の絵崩れが激しく、

ヒロインでも一部の立ち絵にかなり違和感のある人物もおり、

その辺の統一感がないのは惜しいですね。

 

CGの枚数は差分抜きで約120枚。

差分もたっぷりと用意されており、プレイ時間のわりには多い枚数です。

まず問題ありません。

十分な枚数がありますね。

 

 

プレイ時間は正確な時間はわかりませんが、約40時間。

全ヒロインルート、全回想、全CGをコンプリートしての時間です。

声を全部聞いておりますので、私のプレイ時間はやや長めですが、

声を飛ばしても30時間ぐらいはあると思います。

ボリュームはまあまあですが、

実は本編以外は攻略しなくてもOKな作りになっています。

ですので、新ヒロインとリアンにこだわりがないのならば、

もっと短くなります。

 

ストーリーは無理やり組み上げた感がありますが、

本編ルートは燃える展開でなかなか楽しめました。

ですが他ルートではそのレベルを求めてはいけません。

同じものを考えていると肩透かしを食らうと思います。

本編での良い部分を他ルートが帳消しにしてしまっていますね。

 

また、どのルートでも常に女性に囲まれる

ハーレムルートですので、そういうのが嫌いな方には向きません。

システム、絵柄はなかなか高レベル。

ですがバランスの悪いストーリーはもうちょっと頑張って欲しかったです。

吸血鬼物と、ハーレムルートが好きならば、という感じでしょうか。

絵とシステムのおかげでCクラスの点数になっていますが、

あまりお勧めできません。

好き嫌いが人によってはっきりと出てしまう、

全体的にバランスの悪い作品だったと思います。



HOME    BACK

inserted by FC2 system