マナケミア PORTABLE+

〜学園の錬金術士たち〜

 

 

一言レビュー

処理落ちが酷く、PS2版の方を推奨

 

グラフィック 4点
シナリオ 8点
ボリューム 9点
システム 8点
快適さ 2点
満足度 8点
総プレイ時間 76時間
総合評価 68点

 

 

ガストの代表作、アトリエシリーズの流れを汲む、

戦闘とストーリーに特化したRPGです。

学園で錬金術士を目指す内に、

自分自身の秘められた過去が暴かれるという、ストーリー。

 

その名のとおり、全寮制の学園で

生徒として過ごしていく様が丁寧に描かれています。

突然の出会いから、友人、親友へと変化していく過程が細やかに描写されていて、

学園生活がとても上手に表現されているのは秀逸ですね。

 

学科は単位制で、成績に応じて星が貰え、

その学期中に指定の星を集めることにより単位を取得します。

これが大学の単位制の授業に似ており、

優秀な成績を収めた場合、取る授業が少なくて済み、

後は自由時間となるのが面白いですね。

テンポ良く、コミカルに進み、

受ける授業も様々な物があり、プレイヤーを飽きさせません。

正直、ゲームの中で学園生活を送る、というのが

これほど楽しいとは思いもしませんでした。

 

ただし、箱庭的。

そもそもこのアルレビス学園と

その周囲の土地がマナの力により浮上しており、

外界から一切隔絶されていて、

卒業までは決してこの土地から出られないようになっています。

つまり、浮上島以外のところへは行けないので、

学園と周囲の土地を行ったりきたりするだけになっています。

そういう意味では、自由度は高くありません。

 

ストーリーが進むとダンジョンの更に奥へいけるようになり、

どんどん移動できる範囲は広くなりますが、

ダンジョン自身の数はさほど多くはありません。

ダンジョンも、幾度も同じダンジョンに入って

採取を行うという前提条件があるので、

普通のRPGよりずっと簡単な構造になっています。

ただし、その「少しずつ行ける範囲が広くなっていく」というのがなかなか良く、

あまりダンジョンの少なさが気にならなくなっています。

 

きちんとストーリーがあり、ストーリー自身にも上手く流れがあるのですが、

材料をダンジョンより取ってきて錬金術を行う、

というのが一定のパターンになっており、

どうしても作業感が付きまといます。

基本的にいつも同じようなことを行うので、

こういうお使いタイプが嫌いな方、繰り返しの作業が苦手な方には向きません。

 

 

戦闘はやや独特なスタイルを持っており、

それがこのマナケミアの魅力のひとつでもあります。

結構病みつきになる面白いシステムなのですが、

その真価が発揮されるのはパーティーメンバーが4人以上、

もっと正確に言うと6人以上になってからなのですが、

ある程度メンバーが集まるのがちょっと遅いですね。

そのため、始め頃は普通のRPGと違いがなく、また難易度は高い目になっています。

その辺が少しもったいなかったと思います。

 

実際の戦闘なのですが、まず戦闘メンバー3人、サポートメンバー3人、

後の残りは戦闘に一切参加しない控えメンバーとなります。

さて、この6人で戦闘を行うのですが、

基本的に攻撃を行うのは戦闘メンバー3人になります。

ではサポートメンバーは何をするのかというと、

戦闘メンバーが攻撃を行った直後に出るボタンをタイミング良く押すことで、

敵に特殊な攻撃をしつつ、戦闘メンバーとサポートメンバーを

入れ替えることが出来るのです。

また、戦闘メンバーが敵に攻撃を受けそうになったときも

ボタンを押すことにより、サポートメンバーに特殊防御をさせながら

戦闘メンバーと入れ替えることが可能になっています。

一度サポートに引っ込んでからはしばらくメンバーの入れ替えは出来ませんが、

それも時間が経つごとに回復し、再度入れ替えが行えるようになります。

また、サポートについている時には

戦闘中にSP(マジックポイントのようなもの)が回復できます。

つまり、戦闘メンバーとサポートメンバーをくるくると入れ替えてゆくことにより、

ある意味無限に特殊攻撃・魔法攻撃

(この二つのことをスキルという)が出来るようになっていて、

SPの残量をあまり気にすることなく、

派手に攻撃を行うことが出来るのです。

これが結構面白い。

実質的に6人で多彩な攻撃を繰り出すことになっていて、

戦闘にバリエーションが生まれています。

 

戦闘自身にも勢いがあって、プレイヤーを飽きさせません。

敵に攻撃を当てるごとにバーストゲージが溜まり、

目一杯まで溜まるとあらゆるポイントにボーナスが付く

バーストモードに突入します。

このときにある特定の条件が示され、

その特定の条件を指定回数満たすと、フィニッシュバーストという、

複数のキャラクターで攻撃する必殺技があるのも面白いですね。

ただし、「ある特定の条件」を満たすのに、難しい条件も結構あり、

フィニッシュバーストに至らないことも多々あるのにはストレスが溜まります。

ここをもう少し、やりやすい条件に変更してほしかったです。

 

エンカウントはシンボルエンカウントで、

エンカウントをしないように避けながら進むことも可能になっています。

また、パラメータがUPすると、敵シンボルが青い色に変化し、

青い敵シンボルを攻撃すると戦闘を回避することが出来るようになっています。

何度も同じダンジョンに採取に行かなければいけないので、

このシステムは良いですね。

いちいちエンカウントしていると欝陶しいので。

ただし、夜になると青いシンボルでもエンカウントしてしまいます。

夜でも青いシンボルはエンカウントしない、で良かったのではないでしょうか。

 

後このゲームはレベルの概念がありません。

つまり、いくら戦闘をこなしたとしても、強化はされません。

ではどうやってパラメータのUPをするのかというと。

ある特定のアイテムを錬金術で調合すると、

キャラクターごとのグロウブックにアイテムカードが追加されます。

そのカードには1〜3個のパラメータUP等の石が付いており、

そこに戦闘で得たAPを所定のポイント振り込んで、

初めてパラメータがUPしたり、新たなスキルを覚えたりするのです。

これがある意味斬新です。

こんなところにも錬金術が使われるのかと、素直に感心しました。

このシリーズだからこそ出来る、風変わりなシステムですね。

ただ、不満点もあり、終盤ではAPが余る、ということ。

いくら戦闘をこなしても、それ以上パラメータがUPしないのに、

シンボルエンカウントでも最低限のエンカウントはしなければいけないので、

無駄な戦闘が苦痛になってきます。

 

また、このグロウブックの構造がいささか問題であり、

かなり複雑で入り組み、迷路のようになっています。

アイテムが追加されたのに、そのアイテムの位置を探すのが大変です。

しかも画面移動がアイテムとアイテムを結ぶ、

ライン上にしか移動できないため、

自由に画面を移動できず、行き止まりまで行って

こちらじゃないと引き返したりして、とても煩雑でした。

新たに追加されたアイテムも、どこの位置にあるのか探しづらく、

APを振り込む作業時間が膨大になってしまっています。

これは、何かのボタンでまだ習得していない石のついているカードに移動する等の、

配慮がほしかったと思います。

 

 

次に調合です。

これは結構シンプルです。

レシピを入手し、そのレシピ通りにアイテムを入れて、作成します。

使用アイテム、素材の作成時は一つ一つのアイテムを入れるごとに、錬金円環が回転し、

その円環の属性とアイテムの相性によってエーテル値がUP、DOWNします。

エーテル値により、アイテムの性能や付加効果が決まりますので、

エーテル値は結構重要なのですが、錬金円環のスピードが速すぎて、

目押しがなかなかできないのが嫌でした。

動体視力がいい人ならば上手に止められるのでしょうが、

もうちょっと速度を落としてほしかったですね。

また協力調合という、仲間と一緒に調合が出来るシステムがあるのですが、

どの仲間が初期に出るのかと、

どの効能のあるサポートが付くのかがランダムなのが辛いところ。

ある特定のエーテル値にするには仲間のとある種類のサポートが必要なのに、

その仲間がサポートに出てこないとか、

一人の仲間につき、複数のサポートの効能があるのですが、

どの効能になるのかもランダムで、そのサポートカードが出てくるまで

幾度も調合をやり直さなければいけないのが非常に面倒でした。

あと、未調合のものを探すのが大変です。

一個一個表示させて未調合のものを探さなければならないので、

未調合のアイテムの欄を作ってほしかったと思います。

 

また、武器、防具、アクセサリーを調合するには、

別室に行って調合しなければならないのがとても面倒です。

素材アイテムはアトリエで作らなければならないのに、

素材アイテムを使って作成する武器の類は

アタノール室に一々移動しなければいけないので、

二つの部屋を幾度も往復する必要が出来たりと、

時間がかかって仕方がありません。

 

アイテム作成の楽しさ、という点では優れているのに、

この辺のシステムの悪さはもったいないですね。

やっぱりこのゲームは調合がポイントの一つですので、

その辺の快適さには十分気を配ってほしかったと思います。

 

 

次に色々なシステムです。

基本的なシステムですが、これが壊滅的。

特に処理落ちが酷いですね。

戦闘時の処理落ちが激しく、

戦闘開始時、メンバー入れ替え時、スキル使用時、戦闘終了時と

ありとあらゆるところで処理落ちします。

しかもただ処理落ちするだけにおさまらず、

フリーズしてしまってゲームが続けられなくなることがあります。

ここまでローディングに問題のあるゲームには久々にお目にかかりました。

フリーズが結構あるのはどうかと思います。

私もゲームプレイ中10回ぐらいフリーズしました。

携帯機ですが、どこでもセーブ機能はなく、

ダンジョンに入ってしまうとセーブポイントまで遠いので、

せめてフリーズはなんとかしてほしかったですね。

また、マップ移動時のローディングも7〜10秒ほどかかり、

戦闘時においては10〜13秒ほどかかると、

基本的なローディングも長く、その辺も苦痛です。

 

あと細かいところを上げると、

購買部というものあるに関わらず、マップ中にお店が5箇所もある。

ローディングの長さも相まって、行ったり来たりするのは非常に面倒であり、

このうちのひとつはなんとダンジョンの中にある、

というのが面倒さに拍車をかけています。

 

昼夜の区別があるのですが、

夜になると敵シンボルの強さが急激に跳ね上がるため、

朝になるまでぼ〜っとある一定のところで

立ち尽くしていなければならないのが時間の無駄。

こういうシステムを作るのなら、夜間は昼間と違う敵が出るとか、

落とすアイテムがレアアイテムになるなどの特典がほしかったですね。

装備もシステム画面に装備というコマンドがなく、

ステータスから装備を選ばなければならないのが煩わしい。

あとマルチエンディングで

キャライベントをせっせとこなさなければならないのですが、

エンディングが台詞数フレーズは短すぎる、

と枚挙に暇がありません。

移植なのですから、この辺の

PS2版の時に言われていたことぐらいの改善はして欲しかったです。

基本的なシステムがこの作品の良いところを

ありとあらゆる点で足を引っ張っていると思います。

 

 

グラフィックですが、これも大変汚い。

マップ時やミニキャラクターは綺麗なのですが、特に酷いのが立ち絵です。

物凄く滲んでいます。

PSPでこれほど汚いグラフィックは初めて見ました。

DS以下で、滲んでいるのが見難く、

立ち絵が表示されるごとにイライラさせられます。

また、文字も滲んでおり、フォントサイズが小さいのも相まってとても見辛いです。

なかには文字が潰れてしまっているものもあります。

PSPで画面が小さくなるのは分かっていたでしょうから、

見やすいようにフォントを変えるなり、

フォントサイズを変更するなり、最低限するべきだったと思うのですが、

この辺の気遣いが全く感じられないのは非常に残念です。

 

ムービーも荒く、とても劣化しています。

これもDSのムービー並で、とてもPSPとは思えない汚さです。

またアニメーション時の人物の造作もいま一つですね。

グラフィックはマップ、ミニキャラ以外は見るべきものはなく、

PSPでこのレベルとは、酷いものです。

どのキャラクターも本来のイラストは魅力的なのに、

この出来は正直幻滅しました。

 

 

プレイ時間は、一通りクリアし、一エンドして76時間。

作業ゲーですので、幾度もダンジョンに採取に行っています。

また、サブイベントであるアルバイトは8割方クリア。

キャラストーリーも全員4つ目まで進めています。

それをあまりしなかった方は40時間ぐらいでしょうが、

これはそもそもダンジョンに採取に行くのが前提になっていますので、

大部分の方が50〜60時間ぐらいはあるかと思います。

ボリュームとしてはかなり多いですね。

 

魅力は随所に見受けられます。

特に戦闘システムの独特さ、調合の楽しさは秀逸です。

楽しくプレイできたのも確かなのですが、グラフィックの出来は悪く、

基本的なシステム、特にローディング関係は最低で、

中にはフリーズして1時間ぐらいプレイしたことが

ふいになってしまうこともあり、

システムの悪さが良い所を台無しにしている作品です。

移植としては大失敗ですね。

改良どころか改悪されてしまっているのはとても痛い。

面白くはあるので、とてももったいない作品です。

興味を持った、あるいはほんの少しある追加(サルファに声があるのが最大の追加か)

にこだわらないのならば、ローディングがPSP版よりも短く、

フリーズがなく、グラフィックは通常レベルのPS2版をお勧めします。

魅力は一杯秘めているのに、非常に残念な作品でした。




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