ミッシングパーツ(MISSING PARTS)

SideA & SideB

 

一言レビュー

立ち絵の演出・伏線の回収の仕方が驚異的

 

グラフィック 10点
シナリオ 10点
ボリューム 8点
快適さ 5点
満足度 9点
総プレイ時間 61時間
総合評価 89点

 

 

所長が一年前に失踪した、鳴海探偵事務所。

そこの唯一の所員である真神恭介は、

所長代理の鳴海京香に頼まれて

アンティークショップ「セクンドゥム」に

一通のエアメイルを届けに行った帰り、

暴漢に襲われている青年と盲目の少女を助ける。

 

お礼にと招待されて泊まった屋敷で、殺人事件が起きた。

最初は財産争いかに見えた事件はある大きな事件の発端に過ぎず、

次々と起こる一見何の関連性もない事件を解決していくうちに、

真実が明らかになっていく。

数珠繋ぎに繋がっていく点と点。

点が一本の線となった時、事件の全貌が暴かれる。

恭介は事件を解決することが出来るのか?

所長の失踪の謎、捜し求める母の形見のペンダント。

全てはひとつに繋がっていた。

 

 

という、実に巧みな手法で描かれた、一本芯が通った探偵物語です。

 

一話完結式の形態をとっているものの、

実は全話が巧みに繋がっています。

このゲームは1話から6話までで一本のストーリーとなっており、

やるとなったら全話をやらなければ

事件の全体像は見えてこないというタイプになっています。

 

ただ、その手法が実に見事です。

一見何の関連性もなく起こった事件が、

5話目から全ての事件が繋がっていた事実が発覚します。

5話目以降からの加速の仕方、事件の収束の仕方が素晴らしい。

圧倒的な力量でもって、全話にちりばめられた伏線を一気に回収し、

目の覚めるような全貌を鮮やかに展開していく様は、見事の一言に尽きます。

 

一話一話のストーリーも良いのですが、

中盤あたりで事件が殆ど動かなくなってしまうため、

やや中弛みしてしまうのがちょっと残念ですね。

ただ、事件の証拠が集まりだして、推理が次々と展開し出してからの、

終盤近くからラストにかけては目を見張るものがあります。

 

 

システムは悪いです。

アドベンチャーとして必須のものが

一応一通り揃っているものの、実に使いづらいですね。

 

概読スキップは選択肢が出たり、移動したりするごとに

強制解除されるために、いちいち概読スキップを

設定しなおさなければならないのが非常に煩わしいです。

 

オートモードですが、ページ送りのスピードが

文字の表示スピードと共有なのは問題外。

なおかつ調整できる段階も少なすぎます。

そのため微調整が出来ず、私のペースには合わないので結局は使えませんでした。

また、オートモードの開始の仕方がとても複雑です。

普通、R1を押しながらセレクトボタンを押すなんて分からないと思います。

説明書を見ないとオートモードのやり方が分からないのはダメですね。

 

後は、移動の仕方がとても面倒です。

いちいち中継点を辿っていかなければならないため、

ある場所に行くために何箇所も必要のない場所を

移動していかなければなりませんし、

この場所からどう行けば目的地にたどり着けるのかと、

その場所から移動できる場所をきちんと覚えていなければなりません。

 

また、実際の場所にたどり着いても、

中に入るという移動をしなければならないのが

面倒さに拍車をかけてしまっています。

そのなんでもない場所の移動途中にちょっとしたイベントが起こるため、

フラグ立てにある程度は必要だったとはいえ、

移動の場合は地図を表示する等、

ワンセンテンスで移動できるように工夫すべきだったと思います。

 

 

グラフィックですが、背景、立ち絵、CGともに手塗り風で統一してあります。

昨今の萌を意識した可愛らしい絵とは一線を画した、大人っぽい絵柄。

やや癖はあるものの、万人受けするタイプで、

身体の描き方のバランスも良いですね。

実際の人間の体型に近い描き方をしてあります。

絵も顔立ちにちょっとばらつきがある人物もいるものの、

立ち絵とCGに全体的に統一感があって綺麗にまとまっています。

ずば抜けて綺麗という訳ではありませんが、

このゲームの真骨頂は手塗り風で統一されていることと、

その演出の仕方、立ち絵の種類の豊富さにあります。

 

まず立ち絵ですが、他のアドベンチャーでは

類を見ない立ち絵が豊富に用意されています。

普通は胸から上、膝から上の正面からの立ち絵しかない

アドベンチャーが殆どだと思うのですが、

このゲームには顔の見えない背中からの立ち絵、横顔の立ち絵と、

今までこんな立ち絵を見たことがないというものまであるのです。

しかもその立ち絵も微妙に別角度からのものもあり、

上記に上げた背中からというものも複数ある人物も存在します。

 

そして、この立ち絵とCGと背景の演出の仕方がずば抜けています。

背景、立ち絵ともに色の塗り方がほぼ同じであるために、

背景と人物を組み合わせただけなのに、

一見一枚のCGに見えたりするのがすごいですね。

また、人物の立ち位置を考慮して、

立ち絵の縮尺を一人ずつ実に細かく微調整してあり、

どの人物が主人公からどのくらい離れているか一目で分かるのもすばらしい。

縮尺の仕方もごく自然で、一人一人サイズが違っても全く違和感がありません。

人物の縮尺の仕方、重ねての表示の仕方、

身体の一部のみ表示させる手法等、演出も絶妙です。

 

CGに立ち絵を組み合わせるという、

ある意味アクロバティック風な演出の仕方もしているのですが、

上記で説明したように塗りが統一されているために、

違和感なく綺麗にまとめてきているのもいいですね。

演出の幅が物凄く広いゲームです。

この演出の妙には非常に感心しました。

ムービーや1枚絵の他に、人物の動きや位置を

これだけ演出できるとは、思いもしませんでした。

この一点だけは紙芝居風のアドベンチャーを作成している他会社に

追随を許さないレベルだと思います。

 

CGの枚数は全部コンプリートしていませんので、

正確なところはわかりませんが、特有のCGが一話20〜30枚。

六話全部で150枚前後。

立ち絵と背景を組み合わせたものもパッと見た目

一枚絵のCGに見えるものもあるため、

枚数的にはもっとボリュームがあるように感じられますね。

十分すぎる枚数があると思います。

 

 

プレイ時間は61時間。

攻略サイトさんのチャートを活用させていただき、

ほぼ全話ストレートにAランクルート直通してのプレイ時間です。

まっすぐ進むと、一話約8〜10時間ぐらいですね。

CGルームはコンプリートしていません。

自力でAランクを狙うとすると、80〜100時間ぐらいでしょうか。

ただ、そもそもこれは2ソフト分の攻略時間ですので、

時間的には普通〜やや多いぐらいになりますね。

 

演出の妙、立ち絵の豊富さ、ストーリーと、基本システムを横に置けば、

推理物のアドベンチャーとしてはずば抜けています。

また総当りコマンドではなく、考えて進めないと

真実が全て明らかにならないというのも他アドベンチャーには少ないシステム。

ですが、2ソフトに分けてしまったのは大失敗ですね。

そもそもAとB二つをプレイしないと繋がらない、

ストレートにいうと前半と後半という出来に近いために、

これはセットでプレイしなければ作品的な評価が出来ません。

片方だけプレイすると、正しい評価は得られないでしょう。

 

どれほど良いと評判のゲームでも、

普通のソフトの倍もするとなると二の足を踏む方が多いです。

これと同レベルのゲームは少ないとはいえ、

皆無というわけではありませんから、

通常の値段のする良いゲームに

プレイヤーが流れてしまうのは当たり前だと思います。

 

また、プレイヤー側から一言言わせていただくと、

値段を他ソフトの倍かけているのだから、

他のソフトの倍は良いものであって当たり前というのもあると思います。

しかもこれは移植です。

バリバリ追加箇所があるかと思うとそうではなく、

微調整、CG・音楽モード追加、セーブの数を増やしたという

ある意味機能的な追加ぐらいです。

 

これでは、一つのソフトとして発売するべきだったと思います。

3作として発売されたDC版を購入された方は、

よく普通の値段の3倍のお金をかけられたことだと感心してしまいます。

両版ともに中古でもあまり数が出回らず、

新品と大差ない値段で売られておりましたので、

沢山の人にプレイしてもらえないというのがとても辛いところですね。

 

また、声が全く入っていないというのも昨今のアドベンチャーでは珍しいです。

この辺はプレイする方で賛否がかなり分かれるのではないかと。

私は、アドベンチャーは絶対声が入っている方が良い派ですので、

ないのはちょっと寂しかったですね。

声が入っていると、演出ももっと厚みを増したと思うので、

そのあたりも非常に残念です。

 

この度廉価版が発売されることになったのですが、

一ソフト3000円ほど、A・Bで6000円弱ぐらいになりますので、

やっと普通の新作ソフトぐらいの値段になります。

廉価版でようやく普通のソフトと同じぐらいの値段というのは、

やはり問題ありですね。

 

いい所はいっぱい持っているのに、

とにかく高いというがために沢山の人に

プレイしてもらえないというのが惜しいゲームです。

「どんなに良いゲームでも、通常の倍以上の値段だとなかなか売れないという事」

今後、このあたりはメーカー側に勉強していただきたいと思います。

色々と苦言も呈しましたが、

個人的には素晴らしいゲームだと評価しています。

これで通常のソフトと同じ値段ならばSランクの評価なのですが…。

もうちょっと何とかならなかったのでしょうか。


HOME    BACK

inserted by FC2 system