千の刃尋、桃花染の皇姫

 

 

一言レビュー

途中下車方式

 

グラフィック 8点
シナリオ 9点
ボリューム 8点
快適さ 9点
満足度 9点
総プレイ時間 35時間
総合評価 88点

 

 

 

豊葦原瑞籬内皇国、通称「皇国」は2173年、

オルブライト共和国の侵攻を受け、

共和国の圧倒的な軍事力により、敗戦した。

それから三年。

先帝である蘇芳帝を裏切った側近の小此木時彦は、

共和国との終戦協定に調印し、共和国の忠実なる飼い犬として、

実質的に皇国を支配していた。

そんな小此木に復讐を遂げるため、

名も知らぬ武人に助けられ落ち延びていた、

皇族唯一の生き残りである皇姫、

宮国朱璃は天京へ舞い戻っていた。

 

小此木を打ち取らんと呪装刀を手に襲い掛かった朱璃を止めたのは、

偶然その現場に行き当たった武人、鴇田宗仁だった。

彼女を殺めようとしたとき、炎のような本能が鮮明に閃いた。

「殺すな。少女を守れ。それがお前の使命だ」

宗仁は反射的に共和国兵から朱璃を守り、

その場から怪我を負った朱璃を連れて逃げていた。

 

 

二人の出会いを起点に、皇国を取り戻す戦いが始まります。

全体的に容赦のないストーリーです。

共和国に虐げられ、圧政を強いられている皇国民。

三年前に皇国を守れず、一般市民に疎んじられている武人が、

共和国の厳しい粛清を耐え忍びながら、

何とか国を取り戻そうともがくという、

時代のうねり、戦争の残虐さが克明に描かれていきます。

 

そんな中、覚悟を決めて国を取り戻すために挑む、

皇国ただ一人の後継者、宮国朱璃に忠誠を誓い、

戦いに身を投じていく宗仁と武人たちの戦乱を見事に綴っていく様は巧みです。

戦前の記憶を失っており、その身の正体が不明な鴇田宗仁の謎をからめ、

二千年以上前の皇国創始にまでも時代を遡って描き、

綺麗な一枚の絵として仕上げて見せる手腕は素晴らしい。

 

ただ、あくまでもメインヒロインである朱璃が本筋であり、

他のサブヒロイン達はおまけという位置づけにあたります。

サブヒロイン達は途中下車方式であり、

サブヒロインのルートへ進んでしまうと、

真相が明かされないままで終了してしまいます。

また、サブヒロインルートへ進むと

あまりにも短時間で呆気なく終了してしまうため、

どうしてもそのルートはボリューム不足を感じます。

もう少しサブヒロインも力を入れて書かれていればよかったのにという、

物足りなさを感じますね。

 

ただ、メインヒロインである朱璃ルートは素晴らしく、

謎をすべて消化して綺麗に纏め、上手に終わっているのは良いですね。

本編だけではボリュームはやや物足りなく感じますが、

エンド後やルート中のお話にあたる、

おまけの「余談」というシナリオもあるため、

全体的なボリュームは普通〜多目になります。

 

 

 

システムは良い目です。

アドベンチャーに必須のシステムは一通り揃っています。

クイックセーブが一つしかないのは残念ですが、

何しろ選択肢が極端に少ないため、これで十分ともいえます。

サウンド設定は、キャラクターごとでボリュームを変えられるのは良いですね。

履歴からのジャンプがないのは残念です。

 

セーブデータはその時表示されていた画面と、

テキストが表示され、とても見やすいのもいい。

オートモード中に何も操作しなければ

光度が落ちるというVITAの欠点の制御もされています。

 

唯一気になったのがゲーム中のCGを見られる「画廊」です。

バグなのか、背景美術がムービー以外全く見られないのです。

 

 

 

グラフィックは可愛い系の絵柄。

べっかんこう氏の絵の内では比較的万人向けの絵柄だと思います。

どのCGの構図も華があり、彩色も眩く美しいのですが、

惜しむらくは極端に枚数が少ないということ。

一番少ないヒロインは、七枚しかありません。

 

CGの枚数は差分抜きで約62枚。

差分も少なめで、あっても2〜3枚程度です。

ボリュームに対してかなり少なく感じます。

ただ、背景と立ち絵をうまく組み合わせて

CGのように表現するのが非常に上手く、

実際の枚数より多く感じます。

立ち絵のクオリティは素晴らしく、

背景や光度に合わせて微妙に立ち絵の色合いを変えている

表現は良かった。

ただし、気になったのが朱璃の立ち絵です。

首元に違う衣装の欠片が残っているのが非常に目についた。

この辺の調整はもう少しうまくして頂きたかったです。

 

 

 

プレイ時間は約35時間。

時間が表示されるタイプですので、正確な時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

全体的なシナリオのクオリティは素晴らしい。

和風ファンタジーとして、非常に上手くできていると思います。

ただ、戦時中のことをあまり隠さず描いているため、

そういう残虐さが苦手な方はちょっと要注意ですね。

これでもうちょっとサブヒロインルートにも

熱意を注いで頂けるとなお良かったと思います。

サブヒロインルートはあくまでもおまけであると

念頭に置いてプレイすると良いでしょう。




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