Monochrome(モノクローム)

 

一言レビュー

全ては最後のヒロインの為に

 

グラフィック 7点
シナリオ 7点
ボリューム 6点
快適さ 8点
満足度 7点
総プレイ時間 34時間
総合評価 71点

 

 

両親が亡くなったショックで小さなころの記憶を失い、

桐丘家に引き取られた主人公大輝は、

高校卒業後何をするでもなく、

桐丘家が理事を務め、義姉が学院長である

桐ヶ丘学院の廃寮に義姉と二人で暮らしていた。

 

過去の記憶を求めてあがく大輝の元に、

大輝の失われた過去を知る者と名乗る少年、中條崇が現れ、

過去を知りたいのならば、今夜時計台の元まで来るようにと告げて去る。

 

言われるがまま、約束の時刻に

時計台を訪れた大輝の前に舞い降りたのは、

遊羽(ゆん)と名乗る見習い天使だった。

 

「あたしはあなたを幸せにしに来たの!」

 

白い羽を持つ天使の少女は、無邪気に宣言する。

見習い天使は正式な天使になるための卒業試験として、

クリスマスの12月25日までに、

対象者といわれる選ばれた人間を幸せにしなければならないのだという。

 

遊羽の対象者だと言われた大輝は仕方なく少女を寮に連れ帰り、

義姉と見習い天使、そして主人公の奇妙な共同生活が始まった…。

 

 

というようなお話です。

実にファンタジックな設定で、宗教色の濃いお話ですが、

遊羽が天使の不思議な力を使って

主人公を幸せにするのかと思えば、そうではありません。

 

遊羽はただ主人公大輝のそばで一緒に生活し、

時折助言とも付かない事を言うぐらいで、

ほとんどが普通の少女と言って差し支えないでしょう。

そういう魔法的な展開を期待していると、拍子抜けすることになります。

もっとも、そういう場面が皆無というわけではありませんが。

 

また、恋愛アドベンチャーと銘打っていますが、

恋愛要素は薄く、どちらかというと恋愛風味をつけた

アドベンチャーというのが相応しいでしょう。

 

全ては最後のヒロインの為にストーリーが展開して行く趣向な為、

他ヒロインとの恋愛要素は薄い目に書かれていると思います。

可愛い女の子とラブラブ〜な生活を思い描いている人は、

ちょっと考え直したほうが良いかもしれません。

 

またストーリーもどちらかというと重く、

淡々と語られていくため、暗く地味な展開が嫌いな人には向きません。

 

 

ヒロインは全部で6人。

攻略できるヒロインの順番はほぼ決まっており、

最初は二人のみで、次は残った一人、

そしてその二人のヒロインを攻略して初めて

次のヒロインのルートがオープンするという趣向になっており

こちらに選択の余地や自由度はほぼありません。

 

ただ、攻略する順番にもちゃんと意味があり、

次のヒロインを攻略する毎に謎が解かれていく、

全員を攻略して初めて物語の全体像が見えてくるタイプのゲームですので、

差し支えはないと言っていいと思います。

 

全体のストーリーは短め。

最初の二人はこの世界観に直接はかかわりのないヒロインですので、

各ヒロインのルートに分かれると独自の展開を見せますが、

三人目のヒロインのルートは短く、

残りのヒロインたちも大半が共通ルートとなっていますので、

ボリュームはないですね。

 

総まとめとなる最終ヒロインルートも急な展開が多く、

いきなり手のひらを返したような態度に出る人物たちに

半ば唖然とさせられました。

設定も、世界観も、キャラクターも丁寧に作られているのですが、

とにかく練りこみとテキストが少ないために

各人物たちの心境の変化が唐突で、完成度はやや低め。

もっと細やかにヒロインや主人公の思い、

脇役たちの心理の変化の過程を描いていけば

かなり魅せるストーリーになっていたはずなのに、それが悔やまれます

 

またサブキャラクターで最も重要な役割を果たす人物の謎が

大半語られず、ぱらぱらと散逸する謎もそのままになっているため、

謎を残すストーリーになっています。

続編を作るつもりで謎を残したとの好意的な見方もありますが、

それは別として、このゲーム中で広げられた謎は

きちんと紐解かれなければいけなかったと思います。

もっとも、これだけでもお話自体は終わってはいるので、

Remember11ほど酷くはないのですが。

 

 

システムはさすがにKID。かなり優秀なものが揃っています。

特に並々ならぬ情熱を注いでいるとしか思えない

スキップ機能は優秀で、かなり細かな設定が行えます。

共通ルートはかなりあるのですが、このために

かなり快適にゲームがプレイできました。

 

またシーンタイトル毎にどれほどテキストを読んでいるか、

どれだけエンディングをコンプリートしているかが

一目でわかるクリアリストもあり、

セーブも軽く、どの日でセーブしたのか、どのシーンなのかも表示され、

サムネイルも表示されるので、

たくさん作ったセーブデータから必要なセーブデータを

拾い上げる作業も簡単に出来ました。

アドベンチャーのシステムとしてはかなり秀逸な出来栄えでしょう。

 

ただ難点があり、表示される文字がかなり小さいです。

私は21型でゲームをプレイしましたが、

画数の多い文字は潰れてしまい、判読するのに苦労しました。

バックログの文字は表示されるテキストより大きくなっており、

あのサイズがちょうど良かったと思います。

 

システムに文句があるのはそのぐらいですが、

普段表示されるテキストはアドベンチャーゲームのシステムの中では

かなり重要な位置を占めるので、システムを−2してあります。

これさえなければ10にしても良いだけに、これも残念ですね。

 

 

グラフィックですが、目にやや特徴があるものの、

全体的に可愛らしく、

好き嫌いのあまり分かれないタイプになっています。

原画家氏のイラストを出来るだけ忠実に再現しており、

立ち絵とCGにもあまり違和感がありません。

 

塗りも美しいのですが、枚数がかなり少ないですね。

ゲーム中に使われている人物のCGは

差分抜きで70枚ありません。

ストーリーは短い目ですが、最低限90枚ぐらいは欲しいところ。

 

 

プレイ時間は、全エンディング、全ヒロイン全CG、

概読メッセージをフルコンプリートしての時間です。

GOODエンドのみを見るだけだと、

20時間前後ぐらいだと思います。

 

結構良い設定を持っているゲームなのに、

それを全て展開するだけのボリュームがないため、

とても損をしていると思います。

謎が残るストーリーのため、ぎりぎり普通クラスになるでしょうか。

どちらかというと未完の作品になりますね。

ですが光るものがある作品です。



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