夢想灯籠

 

 

一言レビュー

皿の絵柄が透けて見えるシチューのような薄すぎるストーリー

 

グラフィック 8点
シナリオ 1点
ボリューム 2点
快適さ 7点
満足度 0点
総プレイ時間 6時間
総合評価 34点

 

 

古い格式を持つ栄重村。

瑠璃玻璃焔天流剣術を継承する剣術道場の跡取り息子の阪守鷲志は

幼馴染である逆枝将一と阪上舞と共に、

村の伝統行事であり、村の若い衆が準備を担う

「灯籠流し祭り」の準備に携わっていた。

 

そんなある夜のこと。

将一と家に帰る途中、全身を切り裂かれた村人と

村人を襲った物と出くわす。

それは正に、「鬼」と言うしかない異形の化け物だった。

剣術を習い、己の技量に絶対の自信を持っていた鷲志は

鬼の前にあえなく敗北する。

だが、命を屠られんとする寸前に父である一徹に辛くも助けられた。

 

事件後、この栄重村は代々異形の化け物「鬼」を退治する事を

生業とする村だと教えられる。

瑠璃玻璃焔天流剣術はその為の実践に基づいた剣術だと。

その仕事を継ぐことに同意した鷲志は、

村に近年になって大量に出没し始めた鬼を退治する戦いに身を投じるのだった。

 

 

という、ちょっと伝奇テイストを含んだ和風のストーリーです。

ですが、ふたを開けてみればあまりの薄さに愕然とします。

一応ヒロインは4人いるわけですが、

どのヒロインルートでもヒロインの首を挿げ替えた金太郎飴のストーリーです。

最後に及ぶまでストーリーはほぼ一緒であり、

ほんの少しだけアレンジが加わっているぐらいで、

全員がだいたい同じ結末を辿るため、ヒロインを全員クリアする意味はありません。

ストーリーの8〜9割以上はどのヒロインでも共通で、

一つのヒロインルートにしても、限りなく薄くなっており

果汁100パーセントジュースを飲んだと思ったら、

オレンジ色に色づけされた水を飲まされたような気分になります。

 

これならヒロインは一人だけにして、メインヒロインのストーリーを

きちんと肉厚に描いた方がマシでした。

また、出てくるだけ無駄な空気に等しい人も数名います。

意味ありげに出てきて半分のヒロインに華麗にスルーされる隼人など、

いったいどう意図して登場させたのか非常に謎です。

 

そして、最後のボス戦がまったく面白くないです。

毎回ほぼ同じパターンで、ありがち・どこかで見た展開で

あんまりにも簡単に片付くボスに興醒め。

ですが一応他ヒロインルートになるので、まったく同じテキストなのに

スキップできないのは本当に腹立たしいです。

 

しかも、ヒロインごとの単独イベントが

無きに等しいのは開いた口がふさがりません。

一応ヒロインに会いに行く選択肢はあるのですが、

数行〜多くて二十行ぐらいで終わるイベントなどは

もはやイベントとは言えないレベル。

確かに「 恋愛 」とはうたってないわけですが、

心理描写も無きに等しいので

誰が誰のことをどう思っているのかさっぱりわかりませんし、

今回のストーリーで初めて会った真琴などは、

何をどうして主人公のことを好きになったのか全くわからない始末です。

○×は鷲志のことを好きだよ、といわれても、

何故、どうして好きなのか、どこが好きなのか、

どうして好きになったのかというエピソードがごっそりと削られているために、

ほとんど会った事のない他人の、

好きな人を聞いたぐらいの感想しか持てません。

 

なんといっても、主人公自身が最後の最後まで

誰が好きかわからないと言っているあたりで終わっていると思います。

一応ヒロインが4人いるのですから、それはないでしょう。

圧倒的にテキストと心理描写が足りません。

普通のアドベンチャーの十分の一以下のテキスト量ではないでしょうか。

もう人気がなくなって連載を無理やり終了させる

某週刊誌の打ち切り漫画よりひどい展開ですね。

CGがこれ以上描けないので○○○○字以内に収めて、

と言われたのではないかと勘ぐってしまうほどです。

 

ゲームのコンセプトのひとつが

「 謎が謎を呼び、自体は混迷を極めていく。 」

となっているのですが、そもそも謎自体がほとんどないので

新たな謎など呼びませんし、混迷などはなく、

極めてシンプル…というか簡単すぎて底が浅いです。

久遠を思わせる転生を題材としたタイトルで評判になっていたのですが、

そもそも転生自体、ほとんど無意味がないので、

何をしたかったのか全くわからないストーリーです。

各務に関するあれこれと、

終盤にある人物が取った行動が少し転生に関係したぐらいでしょうか。

正に時間の無駄としか言いようのないストーリー。

古代編はちょっと面白かったのですが。

また、ボイスがないのにしゃべっている人物の名前の表示がなく、

キャラクター付けも薄い目ですので、

誰がしゃべっているのか時折わからなくなるのも難点の一つです。

 

 

 

システムはPSPのアドベンチャーの中では普通〜良い目ですね。

変更できる項目は少ないのですが、

コンパクトながら使いやすくまとまっていると思います。

ボイスは一切ないので、ボイス関連の項目はありません。

基本的なシステム画面は一つですが、サブとしてもう一画面あります。

基本的な操作方法が表示されるのはいいですね。

ただし、強制スキップがないのが使い辛いです。

データをロード後もセーブ以前のテキスト履歴があり、

次の選択肢までスキップも可能。

文字表示速度、自動送り速度が3パターンしかないのが少し残念ですが、

スキップは高速、面倒ならばカードバトルもスキップ可能です。

 

カードバトルは最初物珍しいものの、

ルールはごく簡単であり、容易に勝つことが出来るのでシステム的にいまひとつ。

また、カードバトルはスキップ可能なので、あまり役立っていません。

もう少し何か考えてほしかったですね。

 

 

 

グラフィックですが、荒い主線ながらなかなか魅力的な絵柄。

雑な下絵、大雑把な塗りが非常に残念ですが、

生き生きとした魅力あふれる絵だと思います。

これほど荒い絵ながらも独特の生命力、魅力が

十分に伝わってくるのは素晴らしいです。

ただし、クオリティはかなり低いです。

これだけ短いストーリーで大量にCGをばら撒く弊害として、

CGのクオリティは低く、ラフスケッチに無理やり色をつけたCGが多い為、

美しいとか、塗りが綺麗だとかはちょっと言えません。

CG枚数は膨大で、背景・差分を入れると600枚と脅威のボリューム。

しかも差分があまりないのはすごいのですが、

その分荒さが目立ってしまっています。

線を描き直すだけでだいぶ印象が変わっていたと思うので、

これで通常の主線でしたら、点は10をつけるだけに大変惜しいです。

 

また、立ち絵がないというのが売りのひとつなのですが、

厳密に言うと立ち絵というか、立ち絵代わりの表情集が存在します。

背景はそのままで、そこにいる人物の顔の表情が

小さな窓に表示されて会話がなされているシーンが結構あり、

これ以上CGが描けなかった、という大人の事情が見え隠れします。

まあ、あれ以上のCGを描くのはちょっと無理だったのでしょう。

ストーリーのボリュームを考えると、群を抜いたCG枚数だと思います。

 

 

 

プレイ時間は5〜6時間程度。

全ヒロインクリア、全CGを回収しています。

動画取得率は88%でバッドエンドの回収漏れがありますが、

集める気も起きません。

ボリュームは極端に少なく、ストーリーは限りなく薄いです。

絵以外はあまり褒めるところがありません。

しかも絵にしても諸手を挙げて褒められるわけでもなく、

これだけレベルが低いストーリーでは評価以前の問題。

ストーリーの好き嫌いではなく、

クオリティの著しく低いストーリーは久々でした。

 

立ち絵のないアドベンチャーは作っている途中で無理がすぐにわかったでしょうから、

下手にそれにこだわらず、さっさとそれを切り捨てて、

CGの枚数がとても多い、立ち絵のあるアドベンチャーとして、

普通のテキスト量のシナリオを書かせていたほうが良かったと思います。

立ち絵がなく、CGのみということにこだわったために

シナリオのありとあらゆるところを犠牲にしまくって大失敗した作品でしょう。

5、6時間程度のプレイでしたが、

はっきり言って時間とお金の無駄な作品だったと断言できます。



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