マブラヴ

 

オルタネイティブ

 

一言レビュー

ループ世界の前作あっての完成度

 

グラフィック 10点
シナリオ 10点
ボリューム 8点
快適さ 6点
満足度 10点
総プレイ時間 44時間
総合評価 97点

 

 

 

さて、今作をレビューするにあたって、

前作への重大なネタバレが存在します。

それでも良い方はこれより後にお進みください。

 

 

 

 

 

2001年12月24日。

オルタネイティブ4計画は破棄され、オルタネイティブ5が発動した。

十数億の中から選ばれた数万人を宇宙船に乗せ、

地球を放棄してバーナード星系へ移住、

残された人間はG弾を大量に使い、

BETAの世界中に散らばるハイヴを攻撃、

背水の陣で最終決戦に挑んだのだった。

 

それから三年後。

目覚めた白銀武は、元の世界の家の自室にいることに気付く。

カレンダーの日付は2001年10月22日。

元の世界に帰れたのかと外に出て見回せば、広がる一面の荒野。

再び、BETAに侵略された並行世界のあの日に、

記憶を持って戻ってきていたのだった。

最後の辺りは定かではなかったが、

地球に残った人間は滅亡し、自分は死んだような記憶が朧げにある。

 

十数億の人間と仲間を救うために、

鋼の様な覚悟をもって、再び白銀武は国連軍横浜基地へと訪れた。

滅びの未来を変えるため、香月夕呼へ協力を仰ぎ、

BETAとの戦いに、武は再度その身を投じていくことになります。

 

 

とにかく描写が容赦ないですね。

次々と死んでいく仲間たち。

惨殺される人間。

後続に続く者達のために自らが礎になり、

その命を笑って差し出していく覚悟たるものや、

身に迫るものがあります。

我が身を擲ち、残された者達を守る。

数多もの死を経験するうちに、白銀武はどんどん成長していく…

というか、己の甘さを痛感し、幾度もの挫折を味わいながらも

歯を食いしばって成長して行かざるを得なくなっていきます。

泣きながら、見苦しく足掻きながらも仲間の死を背負い、

自分の優しさ、自らの手を汚すおぞましさをかなぐり捨て、

汚泥の中でもがきながらも、皆を守るために立ち向かいます。

 

とにかくその深い世界観が巧み。

国連軍や米軍、帝国(日本)の駆け引きや政治的思惑、

思想や白銀武がなぜ時間をループし続けるのかなど

随所に細かな設定が綿密に練り込まれているのは唸らされます。

そしてその絶望に侵された世界に生きる人たちの、

きらきらと輝く思いに素直に感動します。

皆その世界に生きて、必死に何かを守って立ち向かっている。

世界の終わりの如く、死と隣り合わせの様な場所でも、

人の想いは煌めくものがあるのだと、そう痛感しました。

一つしかない自分の命を、最も効果的な時に使うという、

その凄まじい覚悟には思わず息を飲まざるを得ません。

端役まできっちりと生きているストーリーは大変珍しいでしょう。

 

そして物語後半の起爆力たるものや、凄まじいものがあります。

立て続けに起こるBETAとの戦闘、

目まぐるしく動いていく戦況、

どんどん変化していく世界情勢と、

途中から目が離せなくなり、

食らいつくようにプレイしてしまいました。

ここまで時間を犠牲にしてプレイしたゲームは久しぶりです。

素晴らしいシナリオでした。

 

 

 

システムは前作からほぼ流用されているので、

お世辞にも良いとは言えません。

また、システム画面が青で、文字が淡いブルーなので、

文字が何を書いてあるのが見にくく

改悪されてしまっているのは非常に残念です。

 

今回にあたって唯一良かったと思われるのは、

CHAPITERのシステムです。

章のイベントごとにタイトルが設けられ、

好きな場面をいくらでも途中から読み直すことが可能になっています。

褒められるのはこのぐらいでしょうか。

 

 

 

グラフィックは非常に癖のあるタイプ。

髪形や目元にくっきりとした特徴があり、

かなり好き嫌いが分かれると思います。

こちらをプレイした方は前作をプレイしたと思われますので、

そちらがいけたのでしたら大丈夫でしょう。

 

CGの線に汚いものがあったり、

立ち絵のシャギー感が凄かったり、

塗がいささか雑だったりするのはあまり直っていませんが、

この作品の凄いところはそれを凌駕して有り余る演出です。

とにかく戦術機のインターフェイスの凝りようが半端ないです。

会話をしながらもちょこちょことモニターが動いている小技や、

画面端に写るモニタリングの変化の細かさなどのこだわり様は正直脱帽です。

また、ここまで戦闘パートをがんばっているアドベンチャーは初めて見ました。

一枚絵ながらも素早く戦術機を動かしたり、BETAを動かしたり、

目まぐるしくCGを切り替えたり、

所々ムービーを使用するなどの演出が凄いですね。

ものすごくこだわって作っているのが感じられます。

 

 

CGの枚数は差分抜きで169枚。

差分はそれなりですね。

前作での差分に近いCGもあります。

また、これは別表示されているが差分ではないかと

思われるものが10枚弱あり、実際は160枚ぐらいでしょう。

ただ、前作で使用したCGでALBUMには収録されない物も

使用されているので、枚数は普通〜やや多めですが、

実際より多く感じます。

感覚的にはかなり多目でしょう。

主人公の顔立ちが2タイプあるアンバランスさも相変わらずですね。

 

 

 

プレイ時間は約44時間。

一週で35時間、サブヒロインの差分回収がそれぞれ2〜3時間ほど。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

前作の幸せな世界、そしてBETAに侵略された世界での

各ヒロイン達と滅亡の未来、

それを踏まえて未来を変えようと必死になって駆けずり回る主人公の思い。

今作になってようやくBETAとの

絶望的な戦闘が描かれるのですが、

その戦闘での人々の覚悟と生き様が凄まじかった。

練り込まれた世界観に感嘆し、次代へとバトンへ繋げようとする

決死の思いが胸に迫るものがあり、

終盤以降立て続けに起こるバトルの

疾走感たるものや、素晴らしかったですね。

 

良いシナリオのゲームを読ませてもらったとは思うものの、

人の生き死には相当シビアで容赦なく描かれており、

それはヒロイン達も決して免れていないので、その辺りは覚悟が必要です。

さすがにWin版よりはマイルドになっているので、

大多数の方は大丈夫だとは思うのですが。




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