マブラヴ オルタネイティブ

 

トータル・イクリプス

 

一言レビュー

不知火二型開発譚…の筈が後半どうしてこうなった

 

グラフィック 10点
シナリオ 6点
ボリューム 7点
快適さ 6点
満足度 6点
総プレイ時間 28時間
総合評価 67点

 

 

 

西暦2001年秋。

日本帝国では次世代戦術機不知火二型の開発が難航していた。

そんなある日、その開発プロジェクト「XFJ計画」の

責任者に任命された日本帝国斯衛軍の篁唯依は、

各国の戦術機開発が行われている国連所属基地、

アメリカ合衆国アラスカ州ユーコン基地へと派遣された。

 

時を同じくして、アメリカ陸軍戦術機開発部隊の

エースパイロットであるにもかかわらず、

対人関係が壊滅的に拙いユウヤ・ブリッジスは、

とある事故の後に部署をたらい回しにされたあげく、

まるで追いやられるようにユーコン基地へ

国連軍として出向を命じられていた。

 

父親が日本人であり、母親を捨てて逃げたらしいということで

幼少期に散々苛められ、

祖父母、伯父たちにきつく当たられてきたユウヤは、

高圧的な物言いをし、日本人であることを誇りとする唯依と衝突し、

ソ連軍のテストパイロットでどこか不思議な雰囲気を持つ、

クリスカとイーニァと出会い、

多国籍なアルゴス試験小隊の気の良いパイロットに仲間と認められ、

友好を深めていくごとに、人間的に成長して行くことになります。

 

世界観と時間軸はマブラヴ オルタネイティブの

9月頃からスタートということになります。

オルタネイティブ時間軸上、

白銀武達が乗ることになる戦術機不知火の開発には

このようなドラマがあったといった裏側で展開されたストーリーです。

 

容赦のない描写や、主人公であるユウヤが

段階を踏んで成長して行く様子はとても丁寧に描かれ、

各国の謀略や暗躍などが綿密に描かれているものの、

伏線は投げっぱなしで放置、終盤においては

なぜ彼らがそこにおり、どうしてそのようなことが起こり、

その後どうなったのかといった

エピソードや解説はバッサリ切られていて、

プレイヤー置いてけぼりでエンディングを迎えるのは

最大のマイナスポイントですね。

 

それまでは丁寧に描かれていた分、

スカスカな終盤にあっけにとられてしまいます。

手に汗握る戦闘や、各自の思惑、思想、世界が終りかけているのに

この期に及んでまで争いを続ける各国間の暗躍など、

細部に至るまで設定が練り上げられている分、

とてもアンバランスに感じます。

そこはもうちょっと、プレイヤーに納得させる形で

終わらせてほしかったと思います。

 

 

 

システムは前作からほぼ流用されているので、

お世辞にも良いとは言えません。

また、システム画面の文字が非常に小さく

文字が何を書いてあるのが見にくいのは非常に残念です。

 

前回で良かったCHAPITERのシステムは続投。

章のイベントごとにタイトルが設けられ、

好きな場面をいくらでも途中から読み直すことが可能になっているのですが、

それがどのシーンなのかわかりづらいのが難点ですね。

 

そしてプレイ中に非常に気になったのが

音声のプツッと切れた音がたびたび聞こえる点です。

ヘッドフォンにするとそれが顕著で、非常に聞き苦しかった。

テキストの誤字脱字もパッチを当てても多かったです。

 

 

 

グラフィックは繊細で美しいタイプ。

万人向けで、やわらかな風合いの主線が美しいです。

その優美な主線に合わせて、

ふんわりとしたやわらかで優しいながらも

はっと目を引く華がある塗です。

 

そして特筆すべきなのが、立絵の使い方が凄く上手い点です。

アドベンチャーでこの立絵の使い方は屈指と言っても過言ではなく、

拡大の仕方や動かし方、背景へのなじませ方が上手く、

ぱっと見CGにも見えてしまいます。

後ろの二人をお腹だけ表示させて前の人物を肩から上のみ表示させ、

段差のある椅子に人が座っているというのを表現する立ち絵の組み合わせは

他にちょっと類を見ないと思います。

立ち絵と背景の塗を統一しているからこその妙技でしょう。

戦術機に乗っているときの立絵の配置も絶妙で、

背景に立ち絵をはめ込んでいるのに、本当にCGのように見えます。

 

ただ、女性陣の立ち絵はCGとほぼ大差ない感じであったのに対し、

男性陣、特に主人公のユウヤの立ち絵が

CGとかなり差があったのが気になりました。

もうちょっとCGに似せる努力をしていただきたかったですね。

 

さて、age作品の凄いところは戦術機や戦闘パートでの演出です。

今回もその素晴らしさはきちんと発揮されています。

ここまで戦闘パートを頑張っている

アドベンチャーはなかなかないでしょう。

一枚絵ながらも戦術機を上手に動かしたり、

CGを次々と切り替えたりするなどの演出が凄いですね。

 

 

CGの枚数は差分抜きで191枚。

差分はそれなりですが、30時間弱というプレイタイムに対して

非常に多い枚数だと思います。

戦術機のCGも数多く用意されています。

ヒロイン達の顔立ちは繊細で美しく、

はっと目を引く麗しさなのですが、

唯一主人公の顔立ちにバラつきが多いのが気になります。

 

 

 

プレイ時間は約28時間。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

マブラヴ オルタネイティブの時間上の裏側で、

戦術機の開発に命を懸けた衛士たちの物語です。

途中まではのめり込むものがあったものの、

伏線は投げっぱなし、終盤でのエピソードは

開発費が足らなかったのか、大幅にリストラされて

何が何だかわからないまま

エンディングを迎えるのが最大の難ポイントです。

ここが丁寧に描かれてさえいれば、

もっと評価を上げられただけに非常にもったいないと思います。

 

途中でのテロリスト達は、最後はこうなった、

彼らはこういう理由があって行ったといった

ちょっとしたエピソードでも良かったのです。

でも、そういうことをバサッと切ってしまい、

終盤においては圧倒的な説明不足で、

プレイヤー置いてけぼりの

打ち切りエンドのようになってしまったのが残念です。

 

エピソードを追加するだけで

化けることも可能なポテンシャルを備えているのに、

非常にもったいない作品でした。




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