planetarian(プラネタリアン)

〜ちいさなほしのゆめ〜

 

一言レビュー

それは――儚くも切ない、きらめきの物語

 

グラフィック 4点
シナリオ 8点
ボリューム 4点
快適さ 9点
満足度 6点
総プレイ時間 7時間
総合評価 63点

 

 

それは少し未来のお話。

人口超過と宇宙開拓計画の破綻、資源枯渇により、

血を血で洗う戦争が起きた。

衛星軌道より細菌弾頭を撃ち込み、

その復讐として熱核弾頭で報復攻撃を返し…。

戦争は次第にエスカレートし、人口は激減。

 

そして―――そんな人間に、

怒りの鉄槌を落とすが如く…「雨」が降り始めた。

昼夜問わず、降りしきる雨。

慈愛となるべき雨はしかし――世界から太陽を、季節を、

全ての命を奪い、汚染した。

空は厚く雲で覆われ、星空は失われて久しい。

 

そんな時代。

 

細菌兵器により放棄された封印都市に眠る、

贅沢品や食料、薬品の類を求め、

屑屋である主人公は都市を守る殺戮ロボットの手を掻い潜り、

同業者を出し抜き、都市の奥に辿り着く。

視線の先に見えたのは、ドーム状の建物。

軍事施設かシェルターかと思い、扉を開いた途端。

目を光に射抜かれた。

 

「おめでとうございますっ!あなたはちょうど、

250万人目のお客さまです!」

 

出し抜けに明るい少女の声が出迎える。

彼女の名前は「ほしのゆめみ」

プラネタリウムの解説員で、戦争が始まる前の遺物、

少女型のロボットだった。

 

放棄された都市でプラネタリウムに取り残された、

人に奉仕することを至上の喜びとし、

プラネタリウムで働くことを誇りに思う、

少し壊れたお喋りなロボットの少女と、

無口な屑屋の男の、プラネタリウムを巡る、

ちょっと切ないストーリーです。

 

 

ストーリー自体は暗く、派手な展開は皆無に等しいですが、

とても丁寧に描かれています。

動きが少ない分、僅かな心の変化が水際立って、

固いつぼみがゆっくりとほころぶ様を思わせる、

そんな繊細なストーリーです。

 

 

淡々と進んでゆくので、動きのある展開が好きな方や、

暗いお話が嫌いな方は向きませんが、

人間の醜さと美しさ、

ロボットの少女の、人への想いをからめ、

物語の語り口は鮮やかで、美しく、

地味ながらもプレイヤーを飽きさせません。

 

 

全体のストーリーはアドベンチャーとしては屈指の短さ。

そもそも分岐はおろか、選択肢がひとつもないという

いわゆるキネティックノベルですので、

ゲーム性は皆無です。

こちらはただボタンを押すだけ。

絵や音楽、声が入っている豪華な小説になりますね。

アドベンチャーにゲーム性を求める方はかなり苦しいかと思います。

 

 

システムはかなり良いです。

小説に近いのを意識して、

セーブの仕方、続きの始め方の画面が、少し特殊になっています。

章毎にタイトルが表示され、

一つの章に5つまでしおり(途中から始める事)を挟むことができます。

章のタイトルごとに自動的にセーブされるので、

章の始めからプレイすることも可能になっており、

本にかなり近くなっていますね。

キネティックノベルだからこそできるシステムで、

かなり雰囲気が良いと思います。

 

スキップは高速ですが、ボタンを押しっぱなしに

しなければならないのがやや難点。

ただ分岐そのものがないので、一応いらない機能になりますので、

あまり問題ありません。

バックログが数行ずつしか表示されないのがちょっと悪いですが、

フォントを変えることも可能で、アンチフリッカーも装備、

アドベンチャーとしては高水準だと思います。

 

 

グラフィックですが、やや可愛らしすぎるきらいはありますが、

比較的万人受けするタイプですね。

背景の塗りはグレーを基本としているものの、儚く美しい。

ですが、枚数が極端に少ないですね。

ゲーム中に使われている人物のCGは差分抜きで4枚。

私が今までプレイした中で最小枚数です。

正直ちょっと驚きましたね。

いくらプレイ時間が短く、登場人物は少なく(実質二人)、

場面の切り替えも少ないとはいえ、

差分抜きで人物のCGは、最低限20枚は欲しかったです。

これはちょっと、塗りがどうこう以前の問題外な枚数でした。

 

ヒロインの立ち絵は数が多く、ころころと表情が変わったり、

手に持っているものが変わったりとバリエーションは多いですが、

そもそも立ち絵はヒロインしかありませんので…。

まあ、物語の特殊上、そうせざるを得ないというのもあるのですが、

もうちょっと何とかして欲しかったですね。

 

 

プレイ時間は正確な時間はわかりませんが、7時間。

声を全て聞いていますので、

声を飛ばされる方は4〜5時間ぐらいになるでしょうか。

確かにソフト自体の価格も安いのですが、

正規のアドベンチャーの半値の値段に見合うかと問われれば、

ちょっと微妙かもしれません。

とにかく色々な物が極端に少ないですね。

 

手放しでお勧めはできないのですが、

ストーリー自体は大変良く、システムも優秀ですので、

息抜きに、手軽にプレイしたい場合は良いのではないでしょうか。

また、声にこだわらない方ならば、

ダウンロード版をプレイされるほうがいいと思います。

ダウンロード版ならば1365円ですので、

その値段ならば十分満足できるレベルです。




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