神曲奏界ポリフォニカ

1&2話 BOXエディション

 

一言レビュー

神曲楽士と精霊という独特の世界観が強烈に魅力的

 

グラフィック 9点
シナリオ 9点
ボリューム 6点
快適さ 9点
満足度 10点
総プレイ時間 12時間
総合評価 91点

 

 

少年は孤児院の屋根の上で、

泣きべそをかきながら歌を歌っていた。

細く、かすかに広がる歌声は、ある一人の精霊を魅了する。

それは――真紅。

艶麗で、姫君を思わせるほど優美な。

「これからも私のために歌を歌ってくれないか?」

少年は、戸惑いながらも「うん」と答える。

紅の髪と瞳を持つ美女は、契約の印に少年の額に口付けた。

 

それは精霊と人が共存する世界。

彼らは音楽を糧とし、人の良き隣人として、助力していた。

精霊と契約し、音楽を紡ぐ神曲楽士を目指す少年達が織り成す、

音楽をモチーフにした物語です。

 

 

若干5歳(推定)で精霊と契約を結んだものの、

本来の秘めたる力を発揮できない

おちこぼれの主人公フォロンの、成長の物語になっています。

ストーリー自体は主人公の成長段階や精神を細やかに綴っているものの、

派手で華やかな展開が多く、続きがとにかく気になります。

時間を忘れてプレイしてしまったのは本当に久々でした。

 

物語上の設定の骨組みもしっかりしていて、

世界観がとにかく魅力的。

登場するキャラクターたちもきっちりとキャラが立っていて、

目まぐるしく動くストーリーはプレイヤーを飽きさせません。

ただ、プロローグは第一話の後に書かれた物なのか、

第一話とプロローグに明らかな矛盾点があるのはちょっと問題ですね。

 

やや冗長で、パターン化されていると思わなくもない文章もありますが、

文章のレベル、ストーリー、ともにハイレベルです。

ここまで人を魅了するストーリーは珍しく、

この値段でここまでのものを作り上げたのは感心しました。

 

 

全体のストーリーはアドベンチャーとしてはかなり短いめ。

ただ、3000円弱という値段でサントラも付いていますので、

かなりのお得感がありますね。

 

ジャンルはいわゆるキネティックノベルですので

分岐も選択肢もひとつもないという形式になります。

このため、どうしてもボリューム不足になってしまうのは

仕方がないかとも思います。

ただ、このゲーム、これだけではストーリーが終わっていません。

いわゆる前後編のうちの前編だけで、

値段も正規のゲームの半値以下ですので、

後編も付け加えるとボリュームは短いめぐらいにはなりますね。

 

 

システムは完璧に近いと言っていいと思います。

アドベンチャーに必要なものは全て揃っており、スキップも高速。

音楽も音声もSEもかなり微調整が出来ます。

 

そして何よりもすごいのがテキストの表示です。

マシンのスペックにも依存しますが、

PCに入っているフォントならば、自由に変更可能で、

文字が表示される速度、オートモード時の文字送り速度まで、

執念を感じるほど数十段階に微調整できるのがすごいです。

これでオート時のページ送りのスピードが合わないという人はいないでしょう。

キネティックノベルをいかに快適に読み進められるか、

という事に細心の注意が払われており、

ここまで細かい設定が出来るアドベンチャーは始めてお目にかかりました。

 

セーブがプレイ日時と第何話目かしか

表示されないのが唯一の欠点ですが、

何度も読み返すタイプのゲームではありませんので、

何とか妥協できるレベルかと思います。

 

 

グラフィックですが、とにかく美麗。

ちょっと癖がある絵もあるものの、綺麗な透明感のある絵ですね。

PCのグラフィック力も関係あるかとも思いますが、

繊細かつ華のある塗りでとにかく美しい。

光の表現の仕方、エフェクト、背景グラフィック、ともに高水準ですね。

 

CGの枚数は差分抜きで22枚。

CGの枚数がちょっと少ないのが気になりますね。

プレイ時間は短いものの、差分抜きで30〜40枚は欲しかったところ。

 

立ち絵の種類もやや少ないめ。

ただし主要登場人物は全員用意されており、

種類の少ない人物でも2〜3パターンあります。

CGとの違和感も少なく、こちらのレベルも安定していますね。

ですが、第2話で追加されている立ち絵には、

かなり違和感のあるものがあったのが残念でした。

別人かと思うほど違いすぎるのは、ちょっとまずかったかと思います。

 

 

後気になったのはこの作品のモチーフとなっている音楽です。

決して悪くはありませんが、

そもそも神曲楽士(ダンティスト)が弾く神曲というものは、

単身楽団(ワンマンオーケストラ)といわれる機器が自動演奏する音と

主要楽器と歌声で構成されているという設定になっているにもかかわらず、

神曲のボーカル曲が1曲しかないのがちょっと寂しいですね。

神曲にはもう何曲か歌声を入れて欲しい思うのですが、

この作品での音楽の重要度からすると、ボーカリストのレベルは

アルトネリコレベルのものを求めたくなります。

とすると物凄くそちら方面に金銭が必要になってくるわけで、

そこまでこの値段で求めるのは酷のような気がしますので、

この辺も妥協すべき点なのかもしれません。

 

 

プレイ時間は正確な時間はわかりませんが、12時間。

声を全て聞いていますので、

声を飛ばされる方は10時間前後ぐらいになるでしょうか。

ちょっと少ないですね。

ボイスありで20時間弱ぐらいは欲しいのですが、

ゲームのジャンル的にこれ以上はちょっと難しいかもしれません。

 

同じジャンルのプラネタリアンが色々な所が極端に不足していたため、

あまり期待していませんでしたが、

ストーリー、システム、絵と、とにかくハイレベル。

おまけにほぼフルボイス。

この値段でここまでのものを出してくるとは思っても見ませんでした。

アドベンチャー好きなら強くオススメしたい一品ですが、

これ単体で終わっていないのがちょっと惜しいところ。

後編に当たるものも発売予定ですので、

ストーリーはきっちり終わっていないと、という方は

後編をそろえてプレイされるとよいかと思います。




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