神曲奏界ポリフォニカ

メモリーズホワイト

First Emotion & Endres Aria

 

一言レビュー

ボリュームがあればAクラス

 

グラフィック 8点
シナリオ 8点
ボリューム 4点
快適さ 9点
満足度 8点
総プレイ時間 14時間
総合評価 75点

 

 

それは他愛ない日々。

押し掛け契約精霊のブランカがしつこく迫ってくるスキンシップを邪険にあしらい、

主人公スノウドロップの歌に惹かれて生まれたツクヨミ、

本来ならばメイドであったスノウの主家のお嬢様プリムローズ達と、

神曲学士の卵達が集う、中央精霊師学園が建つ精霊島で学ぶ日々。

 

学園祭で音楽カフェを開くため、場所を探して辿り着いたのは、

200年前に使われなくなり、遺跡化して久しい大聖堂だった。

皆で場所を物色するために大聖堂に入った途端、

奥に安置されていた、壊れた巨大なパイプオルガンが突如として音楽を奏で出す。

真っ白い光に包まれて運ばれたそこは、200年前の精霊島だった。

 

戦争真っ只中のその世界で、200年前のブランカと出会うが、

スノウに固執していたブランカには既に別の契約楽師がおり、

スノウのことなど知らないブランカはスノウを冷たく拒絶する。

 

あれほどの執着を見せたブランカのあまりの変貌と

嫉妬を抱いていた、ブランカの先の契約楽師の存在に揺らぐスノウの心と、

200年前に起こった戦争の謎を描いた、

音に彩られた繊細なファンタジーです。

 

 

スノウとブランカの心の絆の変貌、

精霊と神曲楽師の神曲の繋がりを綺麗に描いた、

絆を結ぶちょっと悲しいストーリーです。

 

世界観は各シリーズで展開してあるだけあって

骨組みはしっかりとしており、音をモチーフにした作風は繊細かつ魅力的です。

戦争期の動乱と揺らぐスノウの心、

そしてその揺らぎの中から徐々に成長してゆく、

ブランカを思う心の変貌はさなぎから蝶へ羽化していく様を思わせます。

繊細かつ、綺麗。

美しく見事に描ききったストーリーだと思います。

 

ただ、文体にいささか問題があり、

助詞の使い方がちょっと下手ですね。

絶対ダメ、というわけではないのですが、「ん?」と首を捻るところが

ちょこちょこと顔を出します。

その他は難しい文体もなく、読みやすい文章だと思います。

ストーリーはかなりハイレベルですね。

戦争の悲惨さや酷さがなく、綺麗過ぎるのがちょっと気にはなりましたが。

 

ただし、複数ある巻の中の一冊を抜き出したようなストーリーです。

人間関係などはきちんと説明されるためすんなりとストーリーに入れますが、

小説を読んでいることが前提条件なところが

ちらほらと見受けられます。

そして、どちらかというとこれだけでは完結していません。

続編あるいは他メディアで展開していく事を

睨んでいるため、その辺はちょっと消化不足になっていますね。

 

また、全体のボリュームはアドベンチャーとしては最低レベル。

ただ、3000円弱×2という値段で、

初回版はサントラも付いていますので、やや損ぐらいでしょうか。

 

ジャンルはいわゆるキネティックノベルですので

分岐も選択肢もひとつもないという形式になります。

このため、どうしてもボリューム不足になってしまうのは

仕方がないかとも思いますが、それにしても短すぎます。

また、このゲーム、ファーストエモーションとエンドレスアリア、

二つ揃ってこそ一つのストーリーになります。

クリムゾンシリーズの1&2で一応決着が付けられていたのとは違い、

物語の半分のあたりでバサッと切られていますので、

二つを分けて考えるのは難しいですね。

システム等も共通ですので、二つを一緒にレビューしています。

 

 

システムは完璧に近いと私が明言したクリムゾンシリーズの

1&2をそのまま使っています。

セーブシステムがどのシーンでセーブしたのか全く分からない

というのをそのまま引き継いでいるのはいささか問題ですが、

その他は実にハイレベル。

贅沢を言えば、シーン回想のあった

クリムゾン3&4を採用して欲しかったですね。

 

 

グラフィックですが、綺麗です。

ふわっとした塗りはやわらかで、美しく繊細です。

絵の癖は少ないのですが、どちらかと言うと女性向けの絵柄。

ただ、絵によっては人物の顔にややばらつきがあるのがちょっと気になりました。

それを除けば光の表現の仕方、エフェクト、

背景グラフィック、ともに高水準ですね。

精霊の羽が特に美しい。

 

CGの枚数は差分抜きでFE、EA合わせて約44枚前後。

プレイ時間が短いのですが、これでもいささか少ないかと思います。

もうちょっと欲しかったところですね。

 

立ち絵の種類はかなり少ないです。

ポーズは一人一つしかなく、実にさびしい限り。

FE、EA共に立ち絵は共通で、

また表情もかなり少ないため、このシーンでこの表情は

違和感がある、と思うことがしばしば。

このシリーズにおいて、立ち絵の種類の追加は最低限考えて欲しいところですね。

ポーズが一つなのはアドベンチャーとしてどうかと思います。

 

 

プレイ時間は正確な時間はわかりませんが、FE、EA合わせて14時間。

声を全て聞いていますので、

声を飛ばされる方は9時間前後ぐらいになるでしょうか。

かなり少ないですね。

ボリュームはアドベンチャーとしては最低レベルです。

最低限20時間は欲しいところですね。

欲を言えば30時間ぐらい欲しいです。

 

ストーリーが短い点を置けばその他は通常以上。

プレイ時間は短いものの、ストーリーに丈の短さは感じず、

コンパクトながらも見事に描ききっていると思います。

読みやすい文体で、世界観も上手に表現しています。

アドベンチャーはまずボリュームが無いと、

と言う方以外にはお勧めの作品です。

 

ただ、複数のシリーズで展開しているために、このストーリーだけでは

解き明かされていない謎がぽつぽつ散在していますので、

それでよければという注釈がつきますね。

シリーズごとに密接な関わりがあり、シリーズ全体で関わって欲しい作品です。

この作品で良い、と思ったのならば、

他シリーズにも手を伸ばすことをお勧めします。



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