雷子

−紺碧の章−

 

一言感想

ストーリーと会話が絶妙

 

グラフィック 8点
シナリオ 8点
ボリューム 6点
システム 6点
快適さ 7点
満足度 8点
総プレイ時間 24時間
総合評価 75点

 

 

 

楚の平王と費無忌に家族を殺され、

今まさに自分も殺されようとしている伍子胥は、

楚の敵国である呉へと亡命してきた。

楚への復讐を誓う伍子胥は、

そのためにはどのような非情な手段も厭わないと心に決めていた。

 

同時期、戦場に少女を連れて渡り歩く者がいた。

彼の名前は孫武。

後に孫子を書いた者だった。

少女風杏は妹と周りに公言しているが、実際は戦災孤児で、

見るに見かねて引き取ったものの、今では妹同然に可愛がっていた。

 

二人が呉に集い、楚・呉・越それぞれの国で復讐の物語が始まった。

 

 

三国志より約600年前の春秋時代の呉越、楚を舞台にしたSRPGです。

大分オリジナルが入っているそうなのですが、

私自身はそもそも春秋時代の大まかなストーリーも知りませんので、

それを踏まえてこちらのレビューをご覧ください。

 

 

キャラクター性が非常に立っており、

 各人物達がぐいぐいとストーリーを引っ張っていくタイプです。

奇抜なキャラクターが多数おり、

それぞれ強烈な個性を放っています。

伍子胥は楚への復讐のためには全く手段を択ばず、

人の命を犠牲にするのはもちろんの事、

最も効果的な手段を躊躇いなく採るという人物であり、

また、孫武はにこやかで物腰柔らかなものの、

容赦のない恐ろしい思考をする人物で、

二人が宰相と軍師となって呉を勝利へと導いていく様は、

鮮烈なまでの苛烈さに彩られています。

 

それでいて、キャラクター同士の掛け合いや会話は軽妙であり、

ドラマチックで嵐のような怒涛の展開、

運命に呑みこまれて翻弄される人間劇が混ざり合って、

絶妙なストーリーに組み立てられています。

4部作中2作目というものもあり、

最後は完結しているとはちょっと言い難いものの、

一応区切りよく終わっています。

前作必須というわけではありませんが、

出来れば前作からプレイしたほうがいいでしょう。

 

 

 

シミュレーションパートなのですが、基本的には前作と一緒です。

個別のレベルというものは存在せず、

全体の軍レベルということになります。

負けても勝っても1レベルずつ上がり、

何度も同じシナリオをクリアすると、

クリアするたびにレベルが上がっていきます。

今作で新たに付け加えられたシステムが、必殺技というものですが、

名のある武将全員が持っているものではなく、

ごく一部の者だけが使用可能というのがちょっと残念でした。

 

あとは、前作よりモブキャラが大量に増えたのがいささか不満ですね。

敵もモブキャラが大量で、あまりのモブの物量に圧倒されるマップもあります。

あくまでもストーリーや戦場を表現するための物なのでしょうが、

モブキャラが大量に集まると敵、味方がほとんど分からなくなります。

モブキャラの色は違うことが多いものの、敵味方共に共通ユニットだからです。

ステータスバーの色が唯一見分けるポイントですが、

残りわずかなHPになるとそれも区別しづらく、

もうちょっと何とかならなかったのかと思います。

 

クリアできなくてもレベルを上げて殴ればいい

というのが究極の攻略法であり、そこにほぼ戦略性はありません。

一部難しいマップもありますが、基本的にレベルを上げればどうとでもなります。

面倒ならばオートで勝手に動かしてもらうという手もあり、

シミュレーションパートは全く期待せずプレイしなければなりませんが、

あくまでもストーリーを表現するための手段だと見なしたほうが無難です。

 

 

 

システムですが、基本は抑えていますね。

ただ、一画面でシステム画面が全部収まるほどしかありません。

出来ればオートモードの速度調整も欲しかったものの、

殆どがボイスのみで進行していくので問題ありません。

ボイスは今回、有名・無名混合ですが、

実力のあるタイプを揃えてきたのは好印象です。

これはちょっと…、と思う者はおらず、雰囲気を壊さずにプレイできたので、

次回も是非ともこういうタイプでお願いしたいと思います。

 

オートセーブタイプであり、こちらでセーブはできませんが、

どのシナリオも何度でもプレイ可能になっています。

シミュレーションパートを何度もクリアするために、

アドベンチャーパートが一気にスキップできる機能は便利でした。

 

 

 

グラフィックは立ち絵、カットイン、CG共に非常に魅力的。

各キャラクター様々な衣装や顔立ちの人物がいて、被る人物がいません。

大胆な衣装デザインは今回も健在であり、中華風の枠に囚われず、

洋風の人物もいるのはいいですね。

華のあるデザインで秀麗であり、非常に見栄えがいいです。

今回は3DS、Vita同時開発ということで、

線画が前作より綺麗になっているのは良かったです。

 

前作はCGと立ち絵の絵の違いが悪目立ちしていたのですが、

今作は大分統一してきましたね。

一部う〜ん、と思う絵もあるものの、

概ね立ち絵と遜色ないCGになっています。

ストーリー上仕方がないのですが、

今作ももちろん陰惨なCGが多数存在するので、

そういうのが嫌いな方は要注意です。

塗は水彩画風ですが、淡いながらも丁寧に塗られており、特に問題ありません。

作風に合っていると思います。

 

シミュレーションパートのグラフィックは全作通り

スーパーファミコン〜PSレベルです。

マップの造作、塗はもちろんのこと、

ユニットのドット絵がとても簡素な出来。

立ち絵のキャラクタービジュアルと違い過ぎるのですが、

前作をプレイした者は、割り切ってしまうところがあります。

 

 

 

 

プレイ時間は、最初頃にレベル上げをして、

とんとんとストーリーを進めて24時間程度。

プレイ時間が出ないタイプですので、正確な時間はわかりません。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

今作は簡素と言われたシミュレーションパートに

製作者側が何か考えるものがあったのか、

追加のおまけのマップは非常に難易度が高く作られていました。

そこを何時間も試行錯誤したので、クリア時間は多目です。

 

基本的なタイプは全作と同じですね。

製作者側の遊び心が随所に顔を出す作品です。

シミュレーションパートはあくまでも

アドベンチャーパートを補完するおまけなのですが、

ストーリーと会話が抜群に良く、

作品全体に強烈なオーラを放つ、独特な魅力があります。

 

エンディングテロップの

「プロデューサー みんなに『プロデューサーって誰?』て聞いたら

『さあ…』って返されました」

には今作も楽しませていただけました。

こういう遊び心が覗くところは大好きです。

 

ぐいぐいと飲み込まれ、どんどんのめり込んで進めていくゲームです。

是非とも頑張って欲しい会社ですね。

前作が気に入ったのならば、間違いはないと思います。



HOME    BACK

inserted by FC2 system