レイジングループ

 

 

 

一言レビュー

横溝風人狼ゲーム

 

グラフィック 6点
シナリオ 10点
ボリューム 9点
快適さ 6点
満足度 9点
総プレイ時間 50時間
総合評価 91点

 

 

 

房石陽明は、バイクで失恋旅行を決行していたある夜、山中で迷っていた。

辺りは真っ暗で、人影もない。

ようやく見つけたコンビニで店員の案内を乞い、

それに従って進んだところ崖から落ちた。

なんとか立て直そうとするも、

奮闘空しくバイクから投げ出され強か背中を打ったが、

深い草むらに投げ出されたおかげか大きな負傷はなく、

彷徨っているうちに川辺で芹沢千枝実に合った。

困っていることを告げると、彼女は快く自宅へ陽明を手招いた。

 

そこは休水。

山中の集落の中でも、都合の悪い人物達を隔離するような、

そんな閉ざされた村で住んでいる者は12人しかいない。

そんな深い因習に縛られた村では、ある伝説があった。

 

夕霧がたてば、宴が始まる。

 

穢れを避けるには、体を清め、独り鍵のある家で物忌みし、

眠りに落ちること。

夜が明ければ「 黄泉忌みの宴 」と称される宴の中で

人に化けて紛れ込んだおおかみ様を見つけ、処刑しなければならない。

それは、休水の者の責務。

処刑しなければ、おおかみ様は一晩につき一人、ヒトを殺していく。

ヒト達が、黄泉忌みの宴で一日に処刑できる人物は一人だけ。

嘘のような因習に巻き込まれ、死に彩られた村に閉じ込められた陽明は、

幾度ものループを経て、この事件の解決に懸命に取り組むことになります。

 

 

 

という、舞台背景は横溝正史が書く小説のような、

祟りや掟に彩られた陸の孤島の村です。

そこに閉じ込められ、黄泉忌みの宴での殺人を強要される。

何故そのような宴が開かれているのか?

その宴を開くことの意味は?

陽明はどうしてそこに閉じ込められ、記憶を持ちながらループしているのか

という謎を追っていくことになります。

 

とにかくその舞台設定が非常に巧みです。

おどろおどろしい因習に塗り固められ、

誰がおおかみ様なのか疑心暗鬼に囚われる村人達。

宴で少しでも怪しまれれば、投票の結果皆に殺される。

そして、殺されるかもしれないと思いつつも、

夜は眠らなければならないという掟。

掟を破れば穢れを受け、死に至る。

 

そんな死に塗れたシナリオがこれでもかというぐらい展開されていくのですが、

事態は二転三転し、この後どうなるかというのが気になって

ゲームをやめられなくなってしまいます。

プレイヤーをお話の中にぐいぐいと引きずり込んでいき、

その底なし沼のようなストーリーにどっぷりとはまらせる技法が

これでもかと迫ってくるのには舌を巻きました。

熱中度は素晴らしく、睡眠時間を削ってプレイするほど面白かった。

 

ただし、最高潮だったのは最終シナリオの直前までであり、

最後の総まとめになるシナリオが、少々都合の良すぎる展開なのが気になるところ。

え?これでいいの? といったあまりに安直な解決法に、

プレイしていて画面の前でぽかんとしてしまいます。

ここをもうちょっと良く仕上げられれば伝説クラスの

シナリオになれただけに、少々残念です。

ただ、あまりにもそこまでに至るシナリオが素晴らしすぎたため、

減点はせず、シナリオは満点としました。

また、最終シナリオ後に解禁される暴露モードという、

その時の各人物が、陽明の見ていないところでどのような事をし、

どのような考えをしていたのか、

黒幕が何を思っていたのかというのが赤裸々に書かれているのはかなり良かったですね。

 

 

 

システムはやや悪い目です。

大雑把にアドベンチャーで必要なシステムは搭載されています。

何度も同じルートをやり直すことになるのですが、

一気に行きたい場所にジャンプできるシナリオチャートが非常に便利です。

ルート分岐する箇所が一目でわかるのは良いですね。

 

それ以外は操作性に少々難があります。

まず、テキストフィールドがシングルアクションで消せない。

メニューを表示させてから消す必要があります。

スキップもシングルアクションで設定できず、

オートとスキップは併用できません。

選択肢でスキップやオートが強制解除されてしまうので、

再設定するのが面倒でした。

また、キーレスポンスも少々甘目で、ボタンを押しても

なかなか認識しないことが多々ありました。

 

 

 

グラフィックは非常に濃く、こってりとした絵柄。

かなり好き嫌いが分かれると思いますが、作風には合っていると思います。

塗も絵柄や作風に合わせて暗く、深く、やや濁った感じで

おどろおどろしいシナリオにはマッチしていますが、

ややくどめの塗です。

 

CGの枚数は差分抜きで54枚。

そのうち表現がぼかされた遺体のCGが11枚ですので、

実質的な枚数は43枚だと思います。

枚数ボリュームはこうしてみるとかなり少ないですね。

 

また、立ち絵なのですが、ポーズバリエーションが

一人につき一つだけというのはさびしい限り。

衣装バリエーションがある人物もいますが、ごく少数で、

殆どの人物は着たきりスズメとなります。

この辺が低価格の所以でしょうか。

 

 

 

プレイ時間は約50時間。

時間が表示されないタイプですので、約の時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

低価格アドベンチャーということで、

随所に経費削減の影が見受けられます。

特に声優に関しては主人公もフルボイスながら

ほぼ素人同然の聞き苦しい人物がいたのは確かです。

立ち絵もややさびしいところがありましたが、

アドベンチャーが良作になるかどうかは

そこだけではないと再認識した作品でした。

 

シナリオが良ければ、いくらでも

素晴らしくできるというのには正直脱帽です。

やっぱりアドベンチャーはシナリオが

かなりのウエイトを占めると思います。

おどろおどろしいシナリオにぐいぐいと

のめり込ませる手法は素晴らしかった。

絵に躊躇わず、ぜひともプレイされることをお勧めします。




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