Routes PE

(ルーツ PE)

 

一言レビュー

気分は007…と思いきや意外とファンタジック

 

グラフィック 6点
シナリオ 6点
ボリューム 8点
快適さ 8点
満足度 7点
総プレイ時間 60時間
総合評価 69点

 

 

一見ごく普通の高校生那須宗一は、

友人達が知らないもうひとつの顔を持っていた。

−エージョント−

情報収集、ミッションを請け負うその筋のエキスパート。

しかも彼のランクは世界ランクトップ。

 

春のある日、彼が請け負った謎のタンカー消失事件。

熊野灘で巨大な船が一瞬にして消失するという事件を調べていくうちに、

世界を巻き込む事件の真っ只中に立つことになる。

何故巨大な船が一瞬にして消えるのか?

船が消えることにより得る利益、目的は?

彼はこの事件の謎を解き明かし、

真実を得ることは出来るのか?

 

と言うお話です。

 

とにかく、主人公が二面性を持つという設定が素晴らしい。

普段は高校へ通って馬鹿をやり、授業中というと寝てばかり。

しかし事件を請け負うや否や、

世界ランクトップの実力を実に華麗に見せ付ける。

現れる金髪の美女。

狂犬と呼ばれる傭兵隊長、

AIを搭載したスポーツカー、

もうこれでもかといわんばかりに007気分に浸れます。

 

ただ、あくまでも起こっているのは日本国内であり、

スケールの大きさというのが全く感じられないのが残念ですね。

 

会話のテンポが非常に良く、下ネタ・際どい会話が多いですが、

下品にならないぎりぎりのラインで止めているのは

素直に感心しました。

とにかく、会話が非常に楽しいゲームですね。

吹き出してしまうのもしばしば。

ただし、会話部分は楽しいものの、テキスト自体は冗長で、

ストーリーがなかなか進まず、かなりまどろっこしい部分があります。

例えば、

「○○が辞めたので、会議の結果××が役職を務めることになった」

というような内容を告げるのに30分かかったりしました。

会話は楽しくても、ストーリーを進めるという意味での

テンポは殺してしまっているのが惜しいところです。

戦闘シーンもほぼテキストオンリーで表示されているため、

演出不足でもありました。

 

ストーリーの構成は三段階になっており、

ヒロインシナリオ、トゥルールートシナリオ、過去シナリオに

大きく分かれています。

 

まずヒロインシナリオですが、

設定を生かして上手に纏め上げられているシナリオと

事件が中途半端なままで強引にENDマークを

付けられているシナリオがあります。

また、正直このルートは要らないのでは?と思う

蛇足的なルート、世界観・主人公の設定に関係のないルートがあり、

ヒロインを増やすためにルートを設けたものが見受けられるのが残念。

PS2版で新たに追加されたヒロインたるや、その最たるもので、

こういう全員を攻略して初めてトゥルールートに進めるものは

時間延ばしに近いルートも攻略しなければならない為、

まどろっこしいものがあります。

また、個性のきつすぎるルートが存在するため、

人を選ぶストーリーもあるのがちょっと辛いところです。

 

さて、肝心のストーリーの総まとめになる

トゥルールートシナリオですが、これがぜんぜんダメ。

はっきり言えば、おまけシナリオのほうが面白かったぐらいですね。

総括となるシナリオがあっと言わせるほどの、

ずば抜けた展開であってこそ、

こういうタイプ(全員攻略必須)のゲームは生きてくるものがあるのですが、

結局はヒロインシナリオで見たような展開に

色をつけた程度に終始してしまいます。

また、トゥルールートシナリオから過去シナリオにかけて、

いきなり現実的な話からファンタジックな展開に突入してしまうため、

突飛な感は否めません。

007やスパイ物としてこの作品を捉えていた方は

目が点な展開に嫌になる人も出てきたのではないでしょうか。

私自身はファンタジックな設定は嫌いではありませんが、

それでもこのゲームは現実的なお話を突っ走って欲しかったな、と思います。

 

そして何よりも、トゥルールートで主人公が

ある言葉をはっきりと言ってしまったため、

冷水を浴びせられたようにさっと冷めてしまったのも

面白くなくなった要因のひとつですね。

口にしてしまえば、どうしようもなく

陳腐になってしまう言葉というものがこの世にはあります。

例えば、「正義は勝つ」

冗談まじりに言えばなかなか味のある台詞ですが、

これを大真面目に、シリアスな場面で真剣に論じられると、

覚めた目で馬鹿馬鹿しく見てしまう人が多いかと思います。

主人公がこの手の台詞を口にした途端、

一気に興醒めしてしまいました。

もう少しこの辺に気を使って欲しかったですね。

 

過去編はうまく組み立ててあり、

ストーリーも過去の人物を使っている割には

破綻なく綺麗にまとめられていますが、

これを現在のストーリーに絡めるのは正直辛いところ。

下手にファンタジックな設定にしなかったほうが良かったと思います。

 

 

システムは良い目です。

スキップはやや詰まるところがあるものの、早く、

高速スキップという一気に次の選択肢へ飛べるスキップもあります。

ただ、高速スキップはしばらく待たされるのがやや難ありですね。

また、プレイ時間が表示されないのも悪いです。

 

テキストは画面が暗くなり、画面全体に

かぶさるように白文字が表示されるタイプ。

文字フィールドが下に余計に作られていないため、

全体を常に全部絵に使え、ヒロイン達の立ち絵も

膝ぐらいまで大きく表示されているのがなかなかに良いですね。

また、表示される文字も白文字に黒く縁取りがされているため、

見やすく、なかなか良い試みだと思います。

 

そしてこのゲームで特筆すべきは概読メッセージの表示です。

ゲームを再プレイした場合、

普通は再プレイ後のテキストしか表示されないのですが、

このゲームは以前のテキストが表示されており、

音声再生機能も付いています。

プレイ前のテキストも閲覧できるためにどういうシーンだったのかを

おさらいでき、実に使いやすかったです。

これは良い機能ですね。

他のアドベンチャーもこれを標準装備にしてもらえればと思います。

 

 

グラフィックですが、アニメ塗りのシンプルな絵のため、

いささか人を選ぶものがあります。

ぺたっとした単色塗りが基本なので、

グラフィックは、美しいとか繊細な、とは言いがたいです。

しかし、キャラクターデザインをされている方が原画も描かれているため、

実際のイラストとの違和感もなく、

立ち絵とCGのバランスも実に良いです。

やはり原画も同じ方が手がけるほうが格段に良いですね。

ただし、追加された新ヒロインとほんの僅かある追加CGは今現在の絵柄なため、

CGも立ち絵も浮いて見えます。

絵的には現在の絵の方が圧倒的に綺麗ではあるのですが。

 

枚数もプレイ時間に比べると格段に少なく、差分抜きで80枚ありません。

130枚以上は最低限欲しかったところですね。

また、差分のあるCGはほんの僅かです。

Win版のそちらシーンの類のCGは全部省かれており(当たり前ですが)、

新ヒロイン関連以外の追加CGは、

私が気付いた限りでは1枚だけなので、

実際はオリジナルよりCG枚数が減っています。

全然足りないと思います。

 

戦闘シーンにもっとCG枚数を設けて、

演出力をあげて欲しかったと思います。

ただ、背景グラフィックは実に豊富で、人物のCGと同等レベルか

下手するとそれ以上の枚数が用意されています。

背景が多いのはよかったですね。

 

また、オープニングムービーも微妙です。

絵がCGや立ち絵と違いすぎて違和感がかなりありますし、

見た途端首を捻りたくなるファンシーなシーンもちらほら。

ちょっとレベルが低かったですね。

使われているボーカル曲は実にいいのですが。

 

 

プレイ時間は正確な時間はわかりませんが、約60時間。

全ヒロインルート、おまけシナリオ、全CGをフルコンプリートしての時間です。

そもそも全ヒロインを攻略しないとトゥルールートへ進めませんので、

大体は50時間強ぐらいのプレイ時間になるかと思います。

ボリュームは結構ありますね。

 

今回移植されるにおいて、ボイスが追加されているのですが、

皆さんかなり上手いです。

特に上手いのが主人公とリサ。

主人公の二面性のあるところを上手に演技し、

リサもあの色っぽい声、微妙な「……」の表現の仕方が抜群ですね。

主人公がかなり喋るタイプの人なので、

収録は大変だったのではないでしょうか。

アドベンチャーはやはり声がないと、と思わせる作品でした。

 

総まとめとなるトゥルールートのレベルがかなり低いため、

あまりお勧めはできませんが、雰囲気の良い作品で、

特に会話パートの小気味良さ、面白さが秀逸です。

テキストも良く、面白いことは面白い、のですが、

ファンタジックな設定へかっ飛んでもOKな方ならば、というところでしょうか。

 

トゥルールートさえリサルートぐらいのレベルがあれば、

(あくまでもレベル。似たようなストーリーは却下です)

ストーリー、作品全体としての私の評価も

かなり変わったと思うので、残念な作品です。

特にストーリーの点数は最後まで悩みました。

私的には6.5ぐらいかと思います。

設定自体は抜群に良い所を持っているので、

もう少し上手く生かして欲しかったですね。

現代風を貫き通し、しっかりとした地盤の上に

アクションスパイ物として特化すれば、

大化けした可能性のある作品であるだけに、非常に惜しいです。


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