シークレットゲーム

KILLER QUEEN− PORTABLE

 

一言レビュー

密閉空間のバトル・ロワイアル

 

グラフィック 5点
シナリオ 9点
ボリューム 7点
快適さ 10点
満足度 9点
総プレイ時間 29時間
総合評価 86点

 

 

その日目が覚めた部屋は、まったく見覚えのない場所だった。

埃だらけの廃屋の様な部屋で起きた御剣総一は、

誘拐されてとある巨大な廃墟に閉じ込められていた者の一人だった。

そこに閉じ込められていたのは12人。

それぞれ、首には銀色の首輪が嵌められ、

傍にトランプを模したPDAが置かれていた。

 

訳も分からず集まった数人の人物は、

とんでもないゲームのルールを知らされる。

首輪を外す条件は、それぞれ配布されたPDAによって違っており、

ある特定の時間まで生き抜くといった温和なものから、

人を複数殺害しなければならないという物騒なものまで12種存在していた。

 

そして、ルールに違反するか、

ゲームが始まって72時間以内に首輪を外せなかった者には、

完膚なきまでの死が待っている。

 

冗談か何かのいたずらかと思いたかったが、

実際にルール違反を犯した者が目の前で無残な死を遂げる。

絶句するほど惨たらしい死を前にして、参加者は散り散りに去って行った。

誰が敵で、誰が味方なのかもわからない。

巨大な施設に散らばる危険な罠や、

惜しげもなく配置された殺傷能力の高い武器たち。

疑心暗鬼に囚われた者たちはバラバラとなり、

それぞれの者たちの心を狂気に染め上げる。

「 殺さなければ、殺される 」

命を懸けたバトル・ロワイアルが今、幕を上げる。

 

 

といった、密閉空間に閉じ込められ、

命を懸けたバトル・ロワイアルに強制参加させられる

12人の老若男女を描いたストーリーです。

とにかくストーリーの進行が巧み。

緩急をつけた目まぐるしいストーリーで、

プレイヤーをその世界にぐいぐいと引っ張り込んでいきます。

階を上がるごとにどんどん殺傷能力が高くなる武器、

敵に追い立てられて逃げ惑う心理、

生きて帰るには、身を守るには人を殺すしかない、

といったところまで追いつめられた者の狂気に蝕まれた心が

とても丁寧に描かれています。

 

エピソードは4本仕立てで、順に攻略していくタイプ。

それぞれのエピソードでヒロインが決まっているのですが、

一つ目のエピソードでまさかの人物の正体が明らかになり、

次いでヒロインの生い立ちが各エピソードで丁寧に語られていき、

伏線が少しずつ回収されて行きます。

結局はどのエピソードも同じ建物内、

同じPDA(JOKERのみ変動)を与えられて

逃げ惑うことになるのは同じなものの、

少しずつ明らかになっていく真実がテンポよく開示されるために

どのエピソードも飽きずに楽しめるようになっています。

エピソードによってがらりと敵味方がひっくり返るのは、

同じ設定を使いつつも、

出来るだけ同じことを繰り返さないように、

といった工夫が見られますね。

 

そしてそれらの設定を綺麗に昇華し、

3つのエピソードで現れなかった最後の人物の登場により、

最後に明かされた謎をひっくるめて伏線を回収し、

ラストエピソードで大団円といった、流れるような動きも綺麗です。

ただし、ストーリーや設定上、とにかく大量に流血沙汰があり、

無残な死を遂げる人物が多数出ます。

そのため、こういうタイプが嫌いな方は全く向きません。

 

 

 

システムは基本をきっちりと押さえ、

ありとあらゆるところに配慮した万能タイプ。

ほぼ完璧と言って差し支えないかと思います。

とにかくいいのがセーブシステムとログ。

セーブデータはセーブ日時、その時のCGや立ち絵・背景が表示され、

進行シナリオ、シーンタイトル、階層、テキスト表示と

全方向に隙のないセーブシステムです。

ここまで完璧なのはPSPでは珍しいですね。

 

そしてセーブデータをロードしたポイント以前の

テキストログが表示されるのも非常に良く、

テキストログを遡ると、右上にそのテキストの時の

CGや立ち絵が遡って表示されるのも素晴らしく、

なんとこのテキストログからのロードも可能で、

このシステムも非常に優秀です。

New Gameから始めると今までに読んだエピソードを

繰り返しプレイすることも可能と、

アドベンチャーを進めるうえで快適な要素が

ありとあらゆるところまで配慮されているのは流石です。

 

メモリインストールはありませんが、

長いローディングは特にありません。

ちょっと気になったのが、オートモードが

シングルアクションでできないのと、

オートモード時、キャラクターのセリフ(音声ありのみ)が

一括表示されない点ぐらいですが、

特に欠点らしい欠点はなく、

ここまで完璧なシステムも早々ないと思います。

 

 

 

グラフィックは非常に可愛らしく、

女性陣の目が大きくて少し人を選ぶタイプ。

そして、絵のクオリティはあまり高くはありません。

立ち絵とCGの面立ちに差がありすぎる人物や、

CGによっては別人になっている人物がおり、

特に男性陣についてそれが顕著です。

男性陣のデッサン狂いはもちろんのこと、

若者に皺を無理矢理描いて年上にしましたといった

首を傾げるような素人くさいデザインの人物もおり、

男性を描くのが非常に苦手なようですね。

女性陣は比較的綺麗に描かれているものの、

年齢による書き分けがあまりされていないのが残念です。

 

CGの枚数はおまけと差分抜きで109枚。

差分はまずますの枚数です。

プレイ時間がやや短めですので全体的な枚数は多め。

特に問題のない枚数だったと思います。

 

 

 

プレイ時間は29時間。

息もつかせぬバトル・ロワイアル。

1エピソードが7〜8間程度と

どのエピソードも冗長にならないボリュームで、

テンポ良くプレイでき、続きがとにかく気になってどんどん進めてしまいました。

各エピソードで少しずつ伏線が回収され、

ラストエピソードで一気にたたみかける大団円も爽快感があります。

一応ハッピーエンドとなっているものの、

どのエピソードも必ず人死にや流血沙汰が大量に出てきますので、

その辺が苦手な方は要注意でしょうか。

 

サスペンスやこういう心理戦が盛り込まれた

ストーリーが好きな方にはお勧めの作品です。

システムも大変よく、他のアドベンチャーも

これぐらいあればとため息が出るほど素晴らしい。

ただ、絵の出来はあまり良くないのは覚悟してください。



HOME    BACK

inserted by FC2 system