シグマ ハーモニクス

 

一言レビュー

DSにあるまじき長ロード

 

グラフィック 10点
シナリオ 8点
ボリューム 8点
快適さ 1点
システム 4点
満足度 8点
総プレイ時間 20時間
総合評価 65点

 

 

「使い人」という特殊な力を持つ一族の次期党首と目される

黒上シグマと、「札使い」の一族の月弓ネオン。

対逢魔の仕事でパートナーを務める二人は、

一族が運営する学校でいつもと変わらぬ日常を送っていた。

 

それが急遽として変貌する。

真っ赤に染まる空。

人はおらず、逢魔が跋扈する世界。

急ぎ黒上家に戻った二人を出迎えた執事は、

黒上一族は既に死に絶えたと告げ、知っているはずのシグマを誰何する。

この状態を引き起こした原因は過去の黒上家にあると知った二人は時を紡ぎ、

過去へと跳躍し、塗り替えられた歴史を次々と修正していく。

幾度修正しても改変される過去。

誰が何故、この世界をこのように作り変えたのか?

歴史の改変を全て修正し、元の日常を取り戻す為に足掻く二人の前に、

次々と明かされる真実の果てにあるものとは。

 

という、明治〜昭和初期頃を思わせるクラシカルな舞台と、

超常の力を持つ者達が音を紡ぐ事により

歴史の改変を修正していくという、独特の雰囲気を持つ作品です。

珍しいジャンルで、ミステリーRPG。

六章+外伝二章という形式になっており、

ボリュームはDSにしては結構あります。

 

世界観は秀逸。

同じ舞台、同じ人物(少しずつ増えていきますが)を使って

全く違う事件を演出するのはさすがですね。

ただ、連続殺人事件の割には動機のほとんどを逢魔のせいにして、

どうして殺人に至ったのかという理由はほぼ皆無。

ですので、誰が殺人可能だったか、という観点のみだけで

推理が進んで行くのはちょっと物足りないですね。

また、最終章で怒涛の如く明かされていく真実は

首を捻るものがあるのも確かです。

複雑で難解な割に、設定を最後にいきなり

どばっと語ってしまうのは大問題です。

そして伏線を複雑に張り巡らせているのはいいのですが、

全部回収し切れていませんね。

あっちにもこっちにも謎がばら撒かれて終わっています。

そういう意味ではやや尻切れトンボなストーリーです。

 

また、基本的に黒上家の屋敷のみで話が展開されており、

非常に箱庭的で、設定が壮大な割にはとても狭い世界でのみ語られています。

ぐるぐると同じところを何週もさせられるので、

目新しさは全くなく、飽きやすいです。

ですが独特の雰囲気と各キャラクターが実に魅力的な作品で、

いろんなところに制約が見られるのが非常に残念です。

 

 

肝心のシステムなのですが、DSとしては壊滅的。

DSはカートリッジ式の特徴的な良点として

ロードが殆どない機体なのですが、

あっちにもこっちにも数秒のロードが入ります。

セーブ時のロードも10秒近くかかるのはかなり長いですね。

 

また、このゲームの肝である証拠を見つけるのに使用するシステム

「調音査」なのですが、これを発動するのに数秒のローディングがかかります。

シグマがモーションを行い(ここでも数秒)、

その数秒後に証拠をタッチできるようになるのですが、

派手で美麗ではあるものの、

頻繁に使うシステムだけにこのローディングはいただけません。

また、ごく近くに寄らなければ、

青い光で表示されている刻印(証拠)が見つからないのにも関わらず、

調音査発動時には移動できないというのが最大のネックです。

ここかな、と思う場所で調音査を発動するのですが、

そこに刻印がなければキャンセル→また移動して

メニュー(ここでもロード)から調音査を選択→長ロード→移動

とこのエンドレスで非常に不快。

一番使うシステムですので、シングルアクションで調音査を出来るようにし、

ローディングは皆無〜4秒までに縮めるべきでした。

そして、移動中にも刻印の青い光が見えるようにすべきでしたね。

とにかく刻印の青い光を集めるのが大変でした。

 

実際の過去を見、そこに残った人の意思や歴史(証拠)を刻印として刻み、

全ての刻印が揃った時に超推理を行います。

ですがこの超推理もまだまだ未完成なところが見えるシステムで、

刻印を置く場所如何でその後の推理の展開に影響を与えるにもかかわらず、

その辺りがノーヒントなのがいただけません。

証拠は合っているのに、ある特定の場所に置かなかったために

正解の推理には至らず、Aランク以下に格下げされるのは納得できません。

そして不正解でもボスのパラメーターが変化するのみで

ストーリーが進んでしまうのも問題です。

事件の真相が良くわからないままにボスと対戦し、

次の章に進んでしまうのはどうかと思いますね。

 

戦闘システムはいわゆるリアルタイムでのカードバトル。

ヒロインのネオンのみが戦い、シグマが指示を出します。

神降ろしに使用する札でネオンのスタイル・言動が変化し、

攻撃の種類が選別されます。

曲の選択でも攻撃の札の使用可、使用不可が決められ、

札を再度使用可能になる速度にこの曲調が関係しており、

曲の選択によっては三つの札山のそれぞれが再使用可能な速度が違ってきます。

三つの山に複数の札が置かれ、タッチペンでめくって札の前後を入れ替え、

上の札置き場に選んだ札を置くことにより攻撃・回復をするのですが、

一見複雑で忙しいのですが、慣れれば結構シンプルなつくりになっています。

ただこの辺も初めての試みというだけあってこなれておらず、

システム的に改良する余地がありますね。

 

まず、山札の一番上に置く札や、札の順番をこちらで決められないので、

使いたい札が下のほうにある場合、

何度もタッチして札をめくらなければいけないのが非常に面倒です。

敵は前後左右四方向に展開しているのですが、

攻撃するには位置を変える札を使ってネオンの正面の位置を

攻撃したい敵の方向へ変えてやらなければならないのですが、

スタイルごとにこの位置を変える札の変化があり、

思い通りになかなか攻撃できなかったりします。

また、札の出し方により敵に一切の攻撃をさせず、

こちらの攻撃のみではめることも可能で、

その辺はちょっとバランスが悪いですね。

 

 

グラフィックですが、非常に美麗。

おそらく現段階ではDSでの最高峰だと思います。

これを超えるビジュアルのDSゲームはそうそう作られないでしょう。

大きな一枚絵の多用、とても微細で複雑なグラデーション、

美しく、繊細な色使いと、文句の付け所がありません。

ムービーも大変美しく、原画の魅力を損ねない綺麗な絵柄ですね。

良くこれだけビジュアル面で詰め込めたと感心しましたが、

これのために違う方面が削られたような気がするので、

その辺はちょっと複雑ですね。

 

絵はやや特徴のある絵柄で、

人によって好き嫌いが出るとは思われますが、

独特の魅力が異彩を放っています。

目の描き方がちょっと風変わりで、少し万人向けではありませんが、

パッと見目を引く華やかな絵で非常に魅力的ですね。

世界観にもマッチしており、どちらかというと好感触。

最初は違和感を覚えるとは思いますが、プレイしている内に慣れます。

 

 

プレイ時間は約20時間。

DSの中では、結構多いですね。

ボリューム的にはこれぐらい欲しいところですが、

外伝2つが本編(1〜6)と同じぐらいあり、

外伝10時間、本編10時間ぐらいなので、

ちょっと水増しされている感はあります。

 

とても雰囲気の良い作品で、キャラクター達、世界観は実に良いのに、

全部語りきっておらず、謎があちこちに一杯残っているのが気にかかります。

また、箱庭的で非常に世界が狭く、

ある意味ループ物であるというのを留意した方がよいでしょう。

そしてDS最高峰ともいえる美しいグラフィック、

多用されたボイスは素晴らしいのですが、

システム関連は壊滅的と、とてもバランスの悪い作品です。

ですがこの悪い点を見事に昇華できれば、大化けできる作品だと思います。

システムが悪いので胸を張って進められませんが、

世界観を良いなと思ったのならば、といったところでしょうか。

次回作に期待したいですね。




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