Steins;Gate

 

一言レビュー

厨二病全開のタイムループ

 

グラフィック 7点
シナリオ 9点
ボリューム 7点
快適さ 8点
満足度 9点
総プレイ時間 40時間
総合評価 82点

 

 

秋葉原のビルの一室で、おかしな発明品を作っているサークル

未来ガジェット研究所。

そこのラボメンナンバー001であり、主催者である岡部倫太郎は、

自分の真名は鳳凰院凶真であり、マッドサイエンティストであり、

とある機関から命を狙われていると言って憚らない重度の痛い厨二病者。

 

ラボメン兼幼馴染の椎名まゆりを伴って、

ラジ館で開かれるドクター中鉢の公演を聞きに行った折に、

18歳にしてサイエンスに論文が掲載された天才少女、

牧瀬紅莉栖が血だまりの中で横たわって死んでいるのを発見した。

動揺しながらラジ館を抜け出し、

ラボメンであり友人である橋田至こと通称ダルに、

牧瀬紅莉栖が死んでいる内容をメールで送った瞬間、

視界が歪むような感覚を覚えた。

その時、一瞬で周りにいた大勢の人間が消え失せ、

引き寄せられるように振り返ったラジ館には、

降ってわいたように人工衛星が突き刺さっていた。

 

それから不思議な現象が次々と起こりだす。

周りの者と、自分の主観が食い違う。

確かに参加したはずの、ドクター中鉢のタイムマシンの公演は

人工衛星がラジ館に降ってきたことにより中止になっていた。

そして何より驚きだったのが、死んでいるはずの牧瀬紅莉栖が

怪我ひとつなく生きて存在しており、

ダルとともに向かった大学の単位取得の講義場で、

大学の特別講師として目の前にいることだった。

 

ダルに送ったメールにより、自分達が過去にメールを送れる装置、

電話レンジ(仮)を偶然作ってしまったことに気づいてしまってから、

非日常的な出来事が立て続けに起こっていきます。

そして避けようのない悲劇をなんとしてでも回避するために、

主人公は自分たちが発明してしまった装置を

紅莉栖に改良してもらってタイムリープを繰り返し、

どうしようもない現実からもがき、苦悩し、足掻く様を描いていきます。

 

 

とにかく癖が強烈な作品です。

その最たるものが主人公であり、前述のとおり痛い厨二病を患っており、

いきなり繋がっていない携帯を取り出し、

自分の妄想を独り言でしゃべりだしたり、

自分はとある機関に追われており、

命を狙われているという妄言を始終吐いたりと、

とにかくこの手のことに免疫のないタイプの方は

受け付けないといってもよいぐらいのレベルの熾烈さです。

あふれる2チャンネル用語、萌、オタクと、とにかく癖が強い。

こういうタイプが大嫌い、どうしても無理という方は

手を出すのを避けたほうが良いでしょう。

この手のことにあまり免疫のない私は中盤までドン引き状態でした。

実をいうと、岡部の痛い厨二病設定はいまだに苦手です。

 

ストーリーはややスロースターターです。

事態が急激に動き出した途端、突如として面白く、

先の気になる展開が次々と繰り広げられていくのですが、

中盤まではゆっくりと綴られていくため、中だるみします。

ただ、ここを超えれば途端にジェットコースターのようなストーリーになるため、

この序盤から中盤にかけてはもうちょっとコンパクトにしたほうが良かったと思います。

また、この世界でのみ通じるトンデモ化学、

あるいはもっともらしい科学的設定が大量に散りばめられているのは、

ちょっと人を選ぶと思いますが、上手に使われてはいますね。

 

さて、ネタバレを避けるとあまり語れないのですが、

避けられない結末をどうしても納得できない主人公は、

友人たちの思いを踏みにじると知りつつ、悲劇を変えるために、

彼女たちの痛烈な傷を己ひとりで抱えながら、

絶望と苦悩にまみれ、煩悶し、足掻いて、足掻いて、追い詰められ、

牧瀬紅莉栖の助言や助けを得つつも、少しずつ未来を切り開いていきます。

主人公の必死に駆けずり回る様、

心が折れそうになりながらも歯を食いしばって前へ進む様は心を打つものがあります。

そして終盤のどん底、それを覆してく展開、

絶望から希望へと変えるどんでん返しと、

ぱたぱたくるくるとカードが翻っていく、

激流に抗うようなストーリーの爆発力は素晴らしいです。

それぞれストーリーの途中にあるヒロインエンドも、

ちょっと物悲しい雰囲気があるもののコンパクトにまとまっており、

どのエンディングも独特の余韻を残す感じで、とても良かったと思います。

ただし非常にプレイする人を選ぶ。

これが大変惜しいと思います。

 

 

アドベンチャー系に必要なシステムはきちんと揃っており、

結構使いやすいシステムだと思います。

ボタンを2種類のタイプとはいえカスタマイズできるのはいいですね。

細かな設定もでき、音声ハイライトという、

音声再生中のBGMを下げるシステムも優秀。

そして履歴からのロードはとても便利です。

クイックセーブ・ロードもあり。

セーブのシステムも大変良く、その時の画面、

どのChapterか、セーブ時のプレイタイム、プレイ日時、

セーブ時の文章表示と、隙のないシステムです。

 

そして最も驚きなのが、フルボイスなこと。

フルボイスを謳うアドベンチャーは多いのですが、

それはあくまでの主人公を除く、であり、

脇役はもちろんのこと、主人公までもフルボイスなのはすごいですね。

収録時間がとんでもなかったでしょうが、

よくこれだけ収録してくれたと思います。

そして実力のある声優陣で固められており、

声の演出が素晴らしかったです。

特に岡部の、苦悩に満ちた場面、

その対極をなす厨二病を惜しげもなく披露する場面と

よくここまで熱演されたことだと思います。

声の魔力とはこのことですね。

 

ただ難点は二つあり。

まず、オート中はどのボタンを押してもオートが解除されてしまい、

再びオートモードにし直さなければならないのが面倒です。

スキップ中ですが、なかなかキャンセルできません。

ボタンを一度押しても反応せず、

キャンセルできずにそのままスキップされてしまいます。

何度も押して、ようやく止まるという感じですね。

ここが大減点ポイントです。

 

 

グラフィックですが、非常に癖があり、特に目が特徴的なタイプ。

瞳がリング状の連なりになっており、

絵や人物によっては全く違う2色のグラデーションになっていて、

他の絵師にはちょっと見ないような形をしています。

ここまで独特な絵も珍しいですね。

そして色の塗もこれまた変わっており、

くすんだやや暗めの色合いに、木漏れ日がちらちらとこぼれる様な

風変わりな塗に統一されています。

ただ、プレイしているうちに慣れると思います。

独特の世界観にあってはいますね。

CGによっては立ち絵とかなり違った絵もあるのが

ちょっと気になったポイントでしょうか。

 

CGの枚数は差分抜きで77枚。

差分を入れての総CG枚数は105枚と、差分枚数もかなり少なめです。

プレイ時間がそこそこある割には結構少ないですが、

プレイ時には枚数の少なさに気づきませんでした。

ですが、あと20〜30枚ぐらい欲しかったですね。

 

 

 

プレイ時間は、全エンディング、全CGをコンプして40時間。

TIPSのみ2つ抜けがあります。

序盤から中盤にかけてがやや長く、

まったりとしていて中だるみするものの、

中盤以降エンジンがかかってからの展開は目覚ましいものがありました。

くるくる翻っていく展開に翻弄されつつも、

タイムリープや過去に送れるメールなどを駆使して、

心が折れそうになりながらも歯を食いしばって奔走する

主人公の頑張りには賞賛を送りたいです。

二転、三転するストーリーは素晴らしかった。

 

ただし、非常に癖のある作品であり、

厨二病や2チャンネル用語に理解がある、

或いはある程度スルーできる方しかお勧めできません。

特に主人公の設定が最たるもので、

普通の方はドン引きだと思います。



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