黄昏のシンセミア

Portable

 

 

一言レビュー

システムが劣悪な禁断の実妹ヒロインアドベンチャー

 

グラフィック 7点
シナリオ 8点
ボリューム 8点
快適さ 1点
満足度 7点
総プレイ時間 40時間
総合評価 62点

 

 

その昔天女が舞い降りて、村を発展させたという

羽衣伝説の残る御奈神村。

母親が事故死して以来東京へ引っ越しており、

疎遠になっていた故郷へ行くことになったのは、

叔母からの一本の電話だった。

 

「夏休みに、アルバイトに来ない?」

特に他に用事があるわけでもなく、

夏休みの予定を考えあぐねていた皆神孝介は、

里帰りとアルバイトが一度にできる

美味しい提案に、乗ることにした。

 

良く言えば風光明媚、悪く言えば田舎の御奈神村。

大学で民俗学のサークルに入っている孝介は、

とある伝奇的な事件をきっかけに村に残る伝説を、

紐解いていくことになります。

 

 

基本的に、伝奇が色濃く関わってきているヒロインと、

全く関係のないヒロインという真っ二つに分かれています。

最終シナリオになる「シンセミア」に入るには、

伝奇色の濃いヒロイン全員を攻略している必要があります。

それというものの、物語の根幹をなす事柄や、

伏線がそのヒロインたちのシナリオ中にばら撒かれているからです。

 

反対に、それに関係のないヒロインはそのヒロインルートに入ってしまうと

本当にただの恋愛アドベンチャーになっており、

正にサブヒロインといった位置づけ。

本来はストーリーに関係ないものの、

あの娘を攻略したかったというプレイヤーの要望に応えて

お付けしたファンディスクが一緒になったといった感じでしょうか。

ただし、恋愛感情に発展する展開が非常に急ぎ足であり、

何時好きになったのかさっぱりわからないことが多々あります。

又、シナリオがストーリーの根幹にかかわってくるヒロインたちに比べて短く、

あっさりとしているのでちょっと拍子抜けしてしまいます。

いわゆる箸休め的な物語になってしまいますので、

全ヒロイン同じクオリティを期待してはいけません。

 

さて、羽衣伝説に密接にかかわるヒロインたちのシナリオですが、

それぞれあまり被ることなく、新たな事実や伏線をばらまきつつ、

最終シナリオ「シンセミア」で上手に収束させている手法はとても良いですね。

悲しく、切なく、憎しみに彩られた伝奇的なストーリーは、

なぜこのようなことになっているのかというのは

最終シナリオへと進むために見る必要のあるフラグメントまでは秘められており、

プレイヤーの興味を掻き立てます。

そして、何故そのようなことになっているのかという過去編を見せて、

プレイヤーに情報を与えた後に一気にまとめにかかる

最終シナリオといった造りはかなり良い骨組みをしています。

 

ただ、ヒロインによっては背徳感がどうしても付きまとう内容になっています。

メインヒロインが血のつながった実妹ですし、

明記はされていないものの、ヒロインの内2人は小学生ですので…。

もうちょっと上、せめて中学生ぐらいにしてほしかった。

 

メインのシナリオ中で描き切れなかったサブのお話や、

「シンセミア」にかかわる、天女が舞い降りた頃の話を

フラグメントという、シナリオ終了や他フラグメントを見れば

解放されるショートストーリー集という形で

見せているのも良かったと思います。

過去のお話などはシナリオ中に入れ込むと、

無理矢理感や強引さが目立ってしまいますので。

ただし、いつフラグメントが解放されていたのかわからず、

初見ではフラグメントを見ることが重要だということは、

攻略サイトなどを見ないとちょっとわからないと思います。

Extraの中にCGや音楽と共に収納されているため、

サブ短編エピソード集だと誤解しかねません。

この辺はもうちょっとアナウンスをさせるなり、

フラグメントの項目にカーソルを合わせると

簡単な内容を表示させるなりの工夫が欲しかったです。

 

 

 

システムは今時のアドベンチャーで

これほど酷いものが未だに存在しているのかと

目を覆わんばかりの最低のシステムが搭載されています。

ここまで悪いシステムを見たのは初めてでした。

こんなシステムでOKを出した会社側に驚きを禁じ得ません。

 

まずテキストのシステムですが、文字表示速度と、

未読文章をスキップするかという二項目しかありません。

この二つしかないシステムは初め目が点でした。

テキストのシステム項目が画面の上部三分の一部分だけ、

要するに三分の二が、がっつり空いたシステム画面に

あっけに取られたのは言うまでもありません。

非常識なまでのシステム設定項目の無さに

何度も説明書を確認してしまったぐらいです。

オートモードのページ送り速度設定など、もちろんありません。

 

音声はBGMSEVOICEがそれぞれ音量調節できるのと、

キャラクターによってボイスのオンオフができるという、

一応最低限の項目はそろっています。

 

メモリインストール機能はあるものの、時折シャーク音がし、

スキップが非常に遅くて立ち絵や背景、

CGが変わるごとに引っかかりまくり、

今現在どのような会話がされているのか

というのもだいたいわかるほど遅いです。

それなのに、スキップをキャンセルするのに

×ボタンを一度押したぐらいでは反応してくれません。

何度も押してやっと止まってくれるという体たらく。

 

オートモードはこれほど酷いシステムを

載せてくるかとため息が漏れたほどで、

1ページ送るのにテキスト表示後に15秒かかります。

要するに、1分で4ページしか

ページ送りしてくれないという史上最凶の遅さです。

前述のとおり、ページ送りスピードを

調節する設定などはもちろんありません。

余りにも使えないオートモードのせいで、

ストーリーをプレイヤーのペースで進めるには

こちらでひたすらボタンを押し続けるしかありません。

余りに使えないオートモードに目眩がしました。

キーレスポンスも遅く、特にボイスありのセリフは

音声再生中にボタンを押しても

なかなかページ送りをしてくれず、

何度も押すということが頻繁に起こるので無駄にイラつきます。

 

セーブはその時に表示されていたCGや背景、立ち絵、

プレイしていた日時が表示されるものの、

テキストやストーリー中の日時表示がなく、

どのセーブがどこのポイントでセーブした物なのかわかりにくく、

また、どれを選択しているのかも見にくくなっています。

 

フローチャートという分岐が一面に表示され、

好きな分岐から始められるという、アドベンチャーにあると

普通は大変便利なシステムもあるのですが、

それがアルファベットと数字の羅列となっておりまして、

注釈や日時表示などの情報が一切ないために、

これでどのシーンからなのかわかれという方が

無理のあるものにも唖然とさせられました。

使用するには適当に選んで出たとこ勝負です。

何度でも選ぶことはできますので、

プレイヤーに実地でもって試せということでしょうか。

 

あっちもこっちも全方位ことごとく駄目で、

褒める所が見つけられないぐらい最低のシステムでした。

 

 

 

グラフィックはちょっと体や顔のバランスに不安を覚える物も

散見しておりますが、可愛らしく、綺麗な絵柄です。

絵の塗は美しく、微妙なグラデーションや、

空や夕暮れ、月光の表現が美しい。

服の皺の影にちょっと首を傾げるものがあり、

若干デッサン崩れしているものが混じっているものの、

概ねクオリティは高いです。

差分抜きの枚数は90枚。

長めのシナリオに反してちょっと少なめですね。

また、ここで表情差分が欲しかった、

あるいは無いとおかしいといった場面もちらほらありました。

 

 

ただし、全画面表示にすると立絵が明らかに滲んで汚いです。

PSPの全画面にしなくても、かなりUPの立絵は滲んで汚い。

その為、全画面表示はほぼ使わず、4:3表示にすることになってしまいました。

CGは大きいサイズで入れているらしく、全画面表示にしても綺麗です。

 

立絵の表現の仕方はとても良く、

座ると座ったかのように立絵が上手にスライドしたり、

首を振ると、微妙に立絵を揺らしたりして小技が光ります。

 

他には背景や立絵の表示がおかしいところが気になりました。

月光がと書いてあるのに昼間の背景が表示されたり、

居間で会話をしているのに延々と空が映し出されていたり、

幾度が出てくるお風呂の背景がなく、

ずっとブラックアウトでテキスト表示のみだったり。

 

そしてプレイ後にEXTRACGを表示させると、

強制的にPSP全画面表示になってしまうため、

CGの全体を一度に見渡すことができません。

要するにEXTRAで4:3表示が不可になっているのです。

4:3表示も見ることができるようにシステム側で切り替えてほしかった。

十字キーなどで見切れている上下を

ずらして表示させることはできるのですが、

上を表示させれば下が見切れてしまうので、

全体絵が見られないのが残念でした。

また、画面全体ではなく、一部分の小さなサイズのCGがあるのですが、

これを表示した後にフルサイズのCGを表示させると、

フルサイズのCGが切れて表示されてしまいます。

この辺の最低限のバグチェックぐらいはしてほしかった。

 

 

 

プレイ時間は40時間程度。

プレイ時間が表示されないために実際のプレイ時間はわかりません。

全エンディング、全フラグメント、全CGを制覇しており、

テキストは大体コンプリートしていると思われます。

 

伝奇色が色濃く、ミステリアスなストーリーと、

メインのヒロインたち全員をクリアして初めて

全体が明らかになるといった手法は好みでした。

シナリオは切なく、悲しく、

正に日本の田舎といった感じでとても良かった。

その良い部分を、システムのあまりの酷さが

ありとあらゆるところで台無しにしています。

よくこのシステムで最後までプレイしたと思います。

それもひとえに、ストーリーと会話が良かったから。

 

PSPの全画面表示にすると立ち絵も滲んで汚いのも耐え難かった。

立ち絵なんか気にしない・劣悪なゲーム環境でも我慢できる

という方しかPSP版は勧められません。

ここまで苦痛なシステムだと、満足度まで下がってしまう

ということを改めて実感した作品でした。

18禁が駄目でなかったら、オリジナルのWin版をお勧めします。

システムの酷さが非常に残念なゲームでした。




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