悠久のティアブレイド

−Ｌｏｓｔ　Ｃｈｒｏｎｉｃｌｅ−

一言レビュー

恋愛はおまけ、世界観の構築が素晴らしい

三千年前の戦争によって大気が汚染され、

空は厚い雲に覆われて久しく、人々の寿命は半分になっていた。

スラムでなんでも屋の社長をしているお人好しのシュドの前に、

ある日亡くなった養父を訪ねて、高価な衣装を纏った

いかにも訳有り顔のアタルヴァが訪ねてきた。

アタルヴァは、地理に詳しくない自分を連れて、

とある場所に案内してほしいという。

どう考えてもヤバそうな依頼を断りかけたシュドに、

アタルヴァは、その場所には大気汚染をどうにかする方法があると囁く。

義理の弟が肺を患い、その病を治す方法は

大気汚染を直す事以外にないと医者に聞かされていたシュドは、

アタルヴァと共に、その地点へと軍から追われるように旅立った。

そこは三千年前に古代人が作った巨大シェルター「ネオスフィア」

空から降ってきたシュドとアタルヴァを出迎えたのは、

無垢な少女イヴと、ネオスフィアを管理するＡＩクレイドル。

初めて自分以外の人間に会って大喜びするイヴの前に現れたのは、

軍の操るロボット「ゴーレム」だった。

イヴの危機に反応するかのように、純白の人型兵器「ティアブレイド」が姿を現す。

かくして、三千年前の謎が解き明かされようとしていた。

という、ロボットファンタジーです。

一応ジャンルは乙女ゲーになるのですが、

恋愛はあくまでのスパイスであり、

三千年前の過去に何があったのか、古代人が何故姿を消したのか、

不老不死のイヴとは何者なのか、

そして謎を持つ各人物の過去とは、といった事に主眼が置かれており、

どのルートもあくまでもルートキャラを掘り下げる上で

その人物との恋愛がほんの少し含まれているといった具合で、

恋愛を期待していた人は肩透かしを食らうと思うので、その点は要注意です。

このゲームの世界観を丁寧に語っているのに対して、

攻略対象キャラとの恋愛は踏みつけにしている部分はありますが、

どのルートも終盤ストーリーからエンディングにかけては非常にクオリティが高い。

最後の決着のつけ方もルートごとに工夫が凝らしてあり、

決して金太郎飴的なエンディングにならないところは唸らされました。

過去に起こったことは同じですし、

過去が明らかになる部分まではほぼ同じ共通ルートになるので

途中で飽きるかと思ったら大間違いで、

攻略キャラの見事な掘り下げ方に

ぐいぐいとストーリーにのめり込ませる手腕が非常に素晴らしい。

コンパクトながらどのストーリーも見事に纏まっており、

どのルートも楽しくプレイできました。

やや伏線が回収しきれていないところもあるのですが、

ここまで設定を鮮やかにアレンジして使うことができるのは脱帽です。

システムは普通〜良い目です。

アドベンチャーに必須のシステムは一通り揃っています。

キャラ別に音声ボリュームが調整できるのは良いですね。

オートセーブ、クイックセーブは一つしかできないのが残念ですが、

履歴からのジャンプも完備しています。

セーブデータがルートキャラのアイコンと、何話か、

詳細表示を選択した時のみ、２行文章表示というのが使い辛いです。

オートモードと既読スキップは併用できません。

また、オートモードがマップ選択時に強制解除されてしまうのが難点。

オートモード中に何も操作しなければ

光度が落ちるというＶＩＴＡの欠点の制御は一応されているのですが、

完全ではなく、時折光度が落ちるのが非常に残念です。

どうも立ち絵の切り替わりが光度制御に関係しているらしく、

立ち絵のないシーンが続くと光度が落ちてしまいます。

グラフィックは繊細で華やかな絵柄。

少女漫画タイプですが比較的好き嫌いの無い万人向けです。

非常に華があり、優雅で構図もとても凝っていて完成度が素晴らしい。

どのＣＧも構図・彩色共にずば抜けています。

塗もとても細やかで華麗かつ優艶です。

私が男性向けのアドベンチャーばかりをプレイしているせいもあるとは思うのですが、

ここまで丁寧に塗っているゲームは珍しく感じました。

これが女性向けの塗なのかと非常に感心することしきりです。

はっと目を引く優美なＣＧで、どれも丁寧に塗られており、

背景の彩色においても透き通るように美しい。

ＣＧの枚数は差分抜きで８９枚。

おまけのイラストが１１枚、

差分はやや少なめなものの、

ＣＧ自身がボリュームに対して多いので、

少なさは全く感じません。

立ち絵、ＣＧ共に非常に安定しており、

とにかく絵に関しての完成度は抜群です。

プレイ時間は約２０時間程度。

時間が表示されないタイプで正確な時間が分かりませんので約の時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

イヴの謎が分かってからが勝負で、

どのルートもぐいぐいと惹きつけられました。

女性向けアドベンチャーなものの、恋愛要素は非常に薄い目であり、

男女ともにプレイ可能で比較的性別を選ばないタイプだと思います。

各キャラクターと世界観の掘り下げ方、

そしてＣＧのレベルが大変素晴らしかった。

コンパクトながら見事なストーリーでした。

恋愛を主眼に置かないというのであればお勧めです。